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シンジがアスカから“どうして相田の家に行ったのか”と詰問されているころ、
レイはバイト先の喫茶店から自宅に帰宅するためリニアに乗っていた。

バイト先の喫茶店ではレイに逢いたいというお客で繁盛していた。
オーナーも“バイトを雇って繁盛するなんてこんなに嬉しいことはない”と
レイのバイト代に少しだけ色をつけてくれていた。

いつものようにカード切符を買って、いつもの自分の定位置の4両目に乗り、
真ん中のシートのはじっこに座って愛読書になっている小説を読んでいた。

少し前から自分はつけられているような気がしてならないレイは
今日に限って別なルートで帰ろうと考えていた。

いつもなら自分が下宿しているマンションが近い駅で降りるのに
今日は1つ先の駅までリニアに乗ってみることにした。
マンションが近いといっても駅と駅の間にあるようなところで
気持ちだけ近いといった差でしかなった。

ただ違う点といえば、1つ先の駅で降りると
住宅街を抜けなくてはいけないことぐらいだった。
住宅街というのが意外とくせ者で、何かあったときは助けてくれると思われがちだが
実際にはそういったトラブルに巻き込まれるのをいやがる傾向にある。

いつもの駅で降りても住宅街を抜けるには抜けるのだが
商店街を通り抜けてわずかな距離だけ住宅街なので、
女の子にはそっちの方が安心して家に帰れるというメリットはある。

レイは安全な方を敢えて使わない方を選択した。



駅の階段を降りて改札を抜けると、思い切って家まで走って帰った。
アスファルトに響く足音はレイのローヒールの音しかしないはずなのに
もう1つ違った音がするのが先を走っているレイの耳にも聞こえた。

レイはとっさに「襲われる」と感じ、住宅地の角を曲がると
近くの公園の滑り台の陰に自分の身を隠した。

やっぱり自分をつけてきていた人間が実際にいた。
暗闇で公園の街頭しかない状態なので詳しくは判らなかったが、
明らかにレイの後をつけていて、見失って近くをさまよっている人影を見たのだ。

レイはしばらくそこで時間をつぶすことにした。



その頃、トウジは妹のサナエとの約束を果たすために花火を持って公園に向かっていた。
時期はずれではあったが、なかなか妹との時間を作ってやることができなくて
その代わりをしていたのは、ヒカリだった。

ヒカリのことを本当のお姉ちゃんみたいに慕っているサナエは
「お兄ちゃんと花火がしたい」といっては駄々を言っていた。

トウジも特待生ということで毎日部活で遅くなって帰ってきて寝てしまう生活が
夏休みの間の生活のリズムとして成り立っていた。

トウジも妹との約束だけは守ってやりたい、
夏休みの思い出として兄貴と遊んだぐらい日記に書かせたいと思っていたので、
夏休みも終盤に近づいた頃、3人で花火をすることを決めていたのだった。

「サナエちゃん、よかったねぇ。鈴原と花火出来る約束守ってもらって」
「お兄ちゃんならきっと約束守ってくれると思っていたから。
 お姉ちゃんも一緒に出来て嬉しいんでしょ?」
「サナエちゃんも一緒だし、嬉しいわよ」
「本当はお兄ちゃんと2人きりでやりたかったりしない?」

サナエは半分からかう感じでヒカリに聞いた。

「な、なに言っているのよ。サナエちゃんと一緒にやりたかったし」
「ふふふ。お姉ちゃん、動揺してない?
 大丈夫よ。あとでちゃんと2人きりの世界を作ってあげるからっ」

サナエはしてやったりという顔をして先を歩いていたトウジに並んで歩いていた。
取り残されたヒカリはというと、あぁーという感じで後ろを歩いていた。

「ほな、花火始めよか。じゃぁサナエ、水入れてきてや」
「うん、分かった」
「そういやさっきサナエと何を話していたんだ?」
「いや大した話はしてないわよ。
 鈴原と一緒に花火出来て良かったわね、言っただけ」
「そうか」

水を汲みにいったサナエは滑り台の階段の部分に人影を感じていた。
「?」という顔をしながらも、トウジに言われたように水を汲んでいた。

「「きゃぁぁぁぁぁ」」

ちょうどそのとき、レイは人影が来たことを驚いて悲鳴をあげていた。
それにつられるかのようにサナエも悲鳴をあげていた。

それを聞いたトウジは「何事が起きたのか?」と妹のために真っ先に駆けつけた。
ヒカリもしっかりとトウジの腕にしがみつきながら一緒に走っていた。

「サナエ、大丈夫か?」
「う、うん」
「そこにいるのはどいつや。さっさと出てこいや!」

レイは“もうワタシの人生は終わりだわ”と観念したように
滑り台の後ろからゆっくりと出てきた。

「もしかしてレイ?」
「ヒカリ?ヒカリなの!良かったぁ、助かったよぉー」

レイはヒカリに抱きついて今までの恐怖を忘れるかのように泣きじゃくっていた。



「なんや、綾波がそこに隠れていたのかぁ。
 どうかしたんか。ここを通るなんて珍しいしなぁ」
「ちょっと後をつけられていてね。恐くなってしばらく隠れていたんだけど。
 見つかったかな?って思って悲鳴あげたら...」
「相手がサナエちゃんだったってことね」
「お姉ちゃん、知り合い?」
「鈴原とお姉ちゃんの同級生よ」
「ほら、ちゃんと挨拶しておき、サナエ」
「こんばんは」
「こんばんは、さっきはごめんね。驚かしちゃって」

何でそんなところにレイが隠れていたのかを聞いた3人は
「どうせ帰っても暇だったら花火でもやっていかないか」
というトウジの言葉に甘えて4人で花火をすることになった。

恐怖から解放されたレイはいつものようにシンジ&アスカをからかうかのように
この2人にも襲いかかった。いうまでもなくサナエも参戦していた。

トウジはというと、女の子からの攻撃だけに反論できないままたじたじになり
ヒカリも反論すればするほど墓穴を掘るかっこになっていた。

その瞬間、トウジとヒカリはシンジとアスカの気持ちが分かるような気がした。


「綾波、このまま帰ってもストーカーにあるかもしれないんだろ。
 だったらうちに泊まっていかんか?夜も遅いし」
「でもヒカリと鈴原君のラヴラヴなところを邪魔しては悪いから」
「ワタシはそんな関係じゃ....」
「そや、いいんちょの言うとおりや。そんな関係にあらへん」
「じゃぁお邪魔させてもらおうかな。
 碇君やアスカと違ったラヴラヴなところも見てみたいし。
 サナエちゃんとも交流深めておきたいしねっ」

レイは屈託のない笑顔でそう言った。
そのとき「シンジも惣流もこういう気持ちを味わっていたんだなぁ」と
トウジはつくづく感じていた。


花火の入ったバケツをトウジが持ち、その横にヒカリが付き添っている。
後ろをレイとサナエがくっついているといった感じでトウジの家についた。
家につくまでの間、レイはいろいろサナエから2人の様子を聞いていた。

「ねぇヒカリ、いつも鈴原君と一緒に寝ているわけ?」
「そ、そ、そんなことないわよ」
「あらぁさっきサナエちゃんに聞いたけど。
 碇君とアスカは毎日同じベットで寝ているみたいよ。
 愛し合っているものは同じベットで寝ないとねぇ」
「な、な、何を言っとるんじゃ、綾波」
「ウソよ、ちょっとカマをかけてみただけよ。
 2人とも引っかかりやすい性格よねぇ。分かりやすいというか」

トウジもヒカリも思いっきり動揺をしていた。
2人で寝ることはないにしても、そういうことを聞かれるとは思ってもいなかった。
それにシンジとアスカを引き合いに出されてなおさら動揺は隠しきれなかった。

「大丈夫よ、2人の夜の邪魔はしないから。サナエちゃんも大変よね」

などと言いながら、レイはサナエの部屋で一緒に寝ることになった。
トウジとヒカリはレイの誘導尋問に負けた感じで2人きりで寝ることになった。

いつもは3人で寝ているか、ヒカリとサナエで寝ることが多く
トウジと一緒に寝るということはそうそうなかった。
だから今の2人はもうドキドキものなのだ。

一方してやったりという顔をしていたのはレイだけではなくサナエもだった。

サナエも
「ワタシと一緒じゃなくてもいいのに。気なんかつかわなくても」
と、常日頃思っていたらしい。

そんな両者が様々な想いをしながら夜は更けていた。



「はぁぁぁ。昨日はよく寝れたわ。何か恐いものから解放されたって感じかなぁ」
「「はぁー」」
「どうしちゃったの、2人一緒にため息つくなんて仲いいわね」

トウジも相手が女の子ということで手出しはできない。
ヒカリの前なのでそういう格好悪いことはもっとできない。

レイも昨日から勢いをそのままで格好の餌食とばかりに攻撃していた。
悪気があって言っているわけではないので、
トウジもヒカリもため息をつくしかできない。

レイは「碇君やアスカと違った反応が楽しめるなんて」と思っていた。

「でも昨日はありがとう。助かったわ」
「でも綾波、昨日はいいけど、今日帰ってもまたつけられるの繰り返しじゃないのか?」
「そうなのよねぇ。そこが問題なのよねぇ」
「ねっ、じゃぁここにしばらく住まない?」
「そんなことしたら悪いからいいわよ。2人の仲を邪魔しちゃ悪いし。
 今日はおとなしく帰るわ。汗でベトベトな服も着替えたいしね」

と言ってレイは1つの計画を実行すべく、自分の家に帰っていった。



取り残されたトウジとヒカリは本当に疲れ切った様子だった。

「何となくセンセと惣流の気持ちが分かったような気がするわ」
「そうね。アスカ、よく耐えているなぁと感心するわ」
「というより、あの2人にとっては綾波が転校してきてから
 そういうような関係だったから、慣れているじゃないのか?」
「そうかもしれないわね」



その頃、噂されていたシンジとアスカといえば、
ケンスケから借りてきた編集セットを居間でセッティングしていた。

「シンジ、何でこんなの借りてきたのよぉ!」
「いやぁ番組作ろうかなぁって思って?」
「ドラマでも作る気なの?」
「ドラマじゃないけど、DJに映像を多用した演出ってのもいいのかなぁって」
「それってワタシやレイが主役になるってこと?」
「そういうことになるよね」
「どんな構成になるのよ。ワタシにも一言言わせなさいよね!」
「まだ細かくは決まってないんだ。そういう風にアスカが言うと思ってさっ」
「そういう風にってどういう意味よぉ!」
「きっと“そーじゃないでしょ”とか“こっちのほうがいいっ”とか
 言い出してきて来るかなぁと思ってさぁ」
「むかーっ!」
「そこで怒らないで手伝う手伝う。アスカの為に番組作るんだから」

端から聞いていると夫婦漫才を聞いているような会話を平然としてる2人だった。
つべこべ言いながらも『アスカの為に』っていう言葉で
俄然やる気の出したアスカだったが、余計なことまでやってはシンジに怒られていた。

シンジもアスカを怒らせないようにと言葉の端々に誉め言葉を入れるようになった。
簡単に言ってしまえば誉め殺しをうまく使い分けるようになったということだ。

アスカは手伝っているんだか迷惑をかけているんだか分からないまま
編集セットは組みあがった。まぁシンジもアスカが手伝ってくれることは嬉しかった。
余計なことをアスカがして怒っていても、心の中では嬉しかった。

編集セットが組みあがった状態でアスカはシンジにどんな番組なのかを聞いた。

「ねぇシンジ、ところでどんな番組なの?」
「湖尻と箱根の街の特集でね、昔から住んでいるわけじゃないけど
 自分たちが住んでいる街を特集してみるのもいいかなぁと」
「小学生の夏休みの自由研究じゃあるまいし」
「それもそうだけど、自分たちが住んでいて細かいところとかを
 番組にすればいいじゃない。穴場スポットとかさぁ」
「で、ワタシは何をやるの?」
「実際にその場所まで行って撮影してくるの」
「ワタシ1人で?」
「そんなことしたらアスカがはきっと怒るだろうからボクがカメラを回して」
「ワタシがレポーターってことね」
「アスカは箱根で、綾波には湖尻を受け持ってもらおうかと」
「レイも一緒なの?」
「綾波も一緒にしないとなにかと外野がうるさいから」
「それもそうね」

アスカはシンジの言葉に妙に納得していた。

かくしてシンジが企画した番組はレイの知らないところで着々と進んでいた。
アスカはシンジが企画した構成に目を通しながら、アドバイスをしていた
文句というより建設的にこうした方が良くなるだろうという意見だった。
シンジもその言葉をメモりながら、もう1度客観的に見直していた。



ピンポーン

突然インターフォンが鳴った。特に誰かが来るということはなかった。
急な来訪者っていえばミサトかレイぐらいなものだった。

「毎度、あなたのお荷物を確実に配達する○○急便です。
 碇シンジさんのお宅ですよね?」」
「はいそうですがぁ....」
「じゃぁここに判子お願いできますか」
「はいぃ」

シンジは妙に嫌な感じがしていた。その予感は的中した。

「ありがとうございます。で、段ボールが10箱あるんですがどこに置きましょうか?」
「10箱??とりあえず玄関に積んで置いてくれますか」
「分かりましたぁっ」

運送屋さんはこうして段ボールを山積みに玄関にしていった。
玄関が人が通れるのがやっというぐらいしか隙間がなかった。

「シンジ、誰からなのよ。この荷物は」
「さぁ、誰だろう。今荷札を見てみるね。
 えっーと、筆記体で書いてあるなぁ...。“Rei Ayanami”って書いている」
「それってレイからの荷物じゃないのぉ」

ピンポーン

「あらぁ、荷物の方が早く来ちゃったのねぇ」
「レイ、ちょっと説明しなさいっ!」
「見ての通りよ。ワタシ今日からここで碇君と暮らすのよ」
「シンジ、いつそんなこと決めたのよっ!」
「いつって、ボクだって今初めて聞いたところだよ」
「レイぃぃ...」
「ちょっと訳ありでねぇ。今の家に住んでいられないよぉ。
 で、ちょっとの間でいいから、碇君の家でお世話になろうと思って」
「ワタシが許すと思うの、レイっ」
「あらぁアスカがいなかった高校時代、悪い虫がつかないようにしていたのは
 どこのだれでしたけぇ。アスカはワタシに借りがあるのよぉ」
「アンタっていうのはぁぁ」
「手をグーにして怒らない怒らない。
 あのときあぁでもしていなければこういう生活できなかったものねぇ」

結局レイに言いくるめられるようにアスカはしぶしぶ一緒に暮らすことを認めた。



でもここは碇家の家である。
その主は今は日本にはいないのでシンジが主となるのだが、
主は発言する暇もなく、荷物をどこに運ぶかをアスカとレイは相談していた。

「ここはぁぁ、いちおぉぉう、ボクぅのいえぇなんだけどぉぉ.............」

シンジの叫びが2人の耳に入ることは一切なかった。



「じゃぁワタシの荷物どこに運ぼうかしら。
 やっぱり危険なお姫さまを守ってくれる王子様と一緒の部屋に...」
「レイ、そんなことワタシが許すと思っているのぉ?」
「お約束じゃない、こういうのは。一応やっておかないと気持ち悪いからね」
「アンタはこっちの空いている部屋でも使いなさいっ!」
「いいのそこを使っても」
「シンジと一緒の部屋にされるよりはマシだわ」
「でもそこは碇君のおじさんとおばさんの部屋だったところでしょ。
 そんな部屋はワタシには向かないわ。ここはやっぱりぃぃ....」
「も、もしかしてぇ、レイちゃん....」
「さすがアスカねぇ。ワタシが考えていることが分かるなんて」
「イヤよ、ワタシは」
「じゃぁ碇君と一緒の部屋でもいいのかしらぁぁ」

アスカはすでにこういう風に仕組まれているのではないかという様な
トリックに引っかかったような心理になっていた。

レイは完全に「碇君と一緒」という伝家の宝刀をちらつかせながら
アスカと一緒の部屋に寝ることを考えていた。

このときシンジは「ボクの立場はぁ」と1人呆然としていた。


「さぁーてと、荷物運ぶので碇君を借りていいかしら?」
「借りるもなにも、この荷物をアンタとワタシだけで運べるわけないでしょ。
 シンジ、いつまでも荷物の上に乗ってないでさっさと手伝いなさい!」
「ここはボクの家....なんだけどぉ....」
「碇君はワタシが危険な目に遭っているっていうのにぃぃ」
「いやぁそんなぁ...ことできないぃぃ....」

レイはここぞとばかりに迫真の演技でシンジを説得に入った。
アスカは演技とは気がついていたが、指摘をすると高校時代のことを言われるので
レイの言いなりになるしかない。

「ワ、ワ、ワタシが決めたことに異論あるって言うのぉ」
「ない...です」
「ならよろしい。じゃぁこの荷物をワタシの部屋に運びなさい」
「...はい」

アスカはレイを受け入れざる得ない状況まで追い込まれ
結局シンジに当たることになる。
シンジは「綾波が来る前とどうしてこんなに態度が変わるんだ?」と
疑問を感じながらも、完全にアスカの尻に引かれていた。


ここまで来るとシンジはアスカの言うことを聞くしかなく
レイの荷物を全部アスカの部屋に運んでいた。

「レイっ、ちょっと話があるんだけどぉ!」
「ワタシにはないわよ」
「レイにはなくてもワタシにはあるのよ。つきあいなさいっ!」

アスカは荷物運びをしているシンジをほったらかしにして
レイを今のソファまで強引に連れていった。

「何よこれは?」
「引っ越しよ、見ての通り」
「何で引っ越してくるのよぉ!」
「ちょっとねぇ、最近誰だか分からない人につけられていてね。
 ここなら安全かなぁって思ったからさっ。
 碇君もいるしアスカもいるしねっ」

レイはさらっと言ってしまう。
もうアスカには「何を言っても無駄」だという状態に追い込まれ
渋々一緒に暮らすことを見とめた。


その日の夕食はピーンと緊張感が漂う食事となった。

レイを明らかに警戒しているアスカがいて、
シンジにちょっかいを出してるレイがいる。
そしていきなりの来客のレイに戸惑いを感じているシンジがいる。

一触即発といった事態ではなかったが、妙な雰囲気だった。
この雰囲気を壊したのはここの主なはずのシンジだった。

「そういえばさぁ、綾波」
「なぁに、碇君」
「うちに来るときに『危険な目に遭って』って言っていなかったけ?」
「言ったわよ。最近バイトの帰りに誰かにつけられているような感じがしてね」
「それってストーカーじゃないのぉ?」
「それに1人じゃ危険かなぁーって思って....」
「それでボクのうちに来たってわけ?」
「正解っ!」
「はぁ....」
「大丈夫よ、2人のお邪魔はしないから。
 アスカの部屋にいるけど碇君に夜這いなんかしないし、
 アスカも碇君を“ラヴラヴな夜”を過ごしてもワタシはちゃんと耳栓しておくから」

アスカもシンジもため息をつくしかその場をしのげる方法はなかった。
世の中には何においてもムードメーカーやペースメーカーがいるのだが、
レイ>アスカ>シンジといった感じでペースが作られるらしい。



その後、レイはアスカの後にお風呂に入り、ソファーでくつろいでいるシンジに
バスタオル1枚の格好でちょっかいを出していた。
シンジも一応、男だ。目の前で女の子がバスタオル1枚でいたら
どういう態度をとっていいのか分からない。
しかもアスカと人気を二分する綾波が目の前にいるのだ。

シンジには襲うほどの度胸はないので、アスカは安心しているが
これは行き過ぎていると思ってレイに激怒していた。

レイは分かりきったかのように、シンジに向かい
「アスカがイヤになったらワタシのところに来てねっ」と言い残して
アスカの部屋に入っていった。



シンジはアスカをラヴラヴな夜を過ごすことはあっても
毎日同じベットで寝ているわけではない。
男である以上、女の子には興味はあるのだが
アスカという半ば伴侶というべき存在がいるためにそういう感情は捨てている。

しかし目の前でバスタオル1枚という格好は捨てている感情とはいえ
目線はバスタオルで覆われ、湯上がりでほんのり赤くなっている
首筋やふとももの白い肌に奪われている。しかも素直に反応している。

こんなドキドキしているシンジを見ていればアスカも激怒するに決まっている。
シンジは「こんな日々、いつまで続くのだろう」と本気で悩んでいた。

アスカはというと部屋に入ってきたレイと派手にやり合っていた。
そんな格好でシンジを誘惑するなとか。
レイも1枚上手で「あらぁ別にアスカみたいに抱かれたわけじゃないしぃ」と
相変わらず攻撃をしていた。



テレビを見ていたシンジは寝る前に入ろうと思っていたお風呂に入り
上がってくると、アスカの部屋はおとなしくなっていた。

シンジもなんだか今日はセッティングやらレイが来たことで
疲れていたので早めに寝ることした。



その頃アスカの部屋ではちょっと狭いベットでファンの多い二人が寝ていた。

「アスカ、まだ起きている?」
「何よ、レイ」
「ごめんね、いきなり押し掛けて。
 さっきいったことは本当よ。それに昨日ね、鈴原君の家で寝たのよ。
 もちろん2人の邪魔はしてないけど。妹のサナエちゃんと寝たから」

レイは不安でしょうがなかった自分の心中をアスカに告白していた。

バイトの帰りの度に誰かにつけられていて、
家に帰ると、1人になるから妙な不安に襲われる。あまり寝れない。
今まで気がつかなかったけど、下着もどうも盗まれているような気がする。

そんな状態で昨日は鈴原君の家に泊まったら、誰かが一緒にいるという
安心感でぐっすりと寝ることが出来た。
ヒカリに「泊まっていかない?」って言われたけど、どうも雰囲気に入っていけない。

鈴原君がお父さんで、ヒカリはお母さんで、サナエちゃんが子供みたいな
“家族”という雰囲気の中に自分は入っていくことができなかった。

アスカと碇君のところなら、家族というより友人という雰囲気だから
自分が入ってもなじめるかなぁと思って、と。
だからいきなり荷物を送りつけたけど、
アスカや碇君ならきっと許してくれると思ったし、守ってくれると。

自分の中に溜まっていたものを一気に吐き出した。
アスカはレイの意外な一面を見たような気がして、何か許してあげられる気がした。

2人はこの夜は寄り添うようにして眠った。

NEXT
ver.-1.00 1997-10/27公開
ご意見・感想・誤字情報などは lager@melody.netまで。

LAGERですぅ。

今回はなかなか登場しない(であろう)
トウジ&ヒカリのカップルを登場させてみました。

こういう機会がないと登場しないしねぇ。特にここは。
前回はケンスケが登場しましたが、次回も登場します。

まぁ話の展開はこの辺にして、
会社のマシーンがぱわーあっぷしたんですよ。
HDを増設して、個人的に使える領域も確保されて。
(緊急時には会社のファイルを保管することになるのだが)

その際に元々あったHDをふぉーまっとなんてものを
してしまったから、さー大変。

勘の鋭い方ならもう分かったでしょう。
Bookmarkを消してしまったんですね。
その復旧作業やら、Windows NTのインストール、
さらには他のマシーンにMacOS8のインストールなどで
徹夜はするはの大騒ぎ。

今の気持ちは「温泉に入りたーい」(by アスカ)な気持ちです。

誰かいい転職先知りません?(笑)



 LAGERさんの『UN HOMME ET UNE FEMME』第14話、公開です。
 

 レイに迫るストーカー、
 レイに迫られるトウジxヒカリ。
 

 元気いっぱい明るく楽しいレイちゃんに
 危機が・・・
 

 レイの家まで突き止めたストーカーは
 この先碇家にも現れるのでしょうか。

 

 
 気の置けない友人が近くにいる彼女、
 シンジ達のサポートが頼りになりそうですね。
 

 アスカも大変だ(^^;

 
 
 さあ、訪問者の皆さん。
 LAGERさんにいい仕事の紹介メールを送りましょう!
 もちろん感想メールもね


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