めぞん / TOP / [jr-sari]の部屋 / NEXT

〜 3:ふれ合い、約束 〜


まるで水の中を漂っているような浮遊感。どこに往くでもなく、ただ浮かんでいる感覚だけに包まれている。辺りは一面闇に覆われていて、何も見えな かった。


《こちらへ・・・》


唐突に声が響く。女の人の声。どこかで聞いたような・・・・


《こちらへ・・・・》


また、声がする。姿は見えない。声に包み込まれたように、体全体にその声の意思のようなものが感じられる。
そして、その声に導かれるように体が一定の方向に流されていくのが分かった。


《こちらへ・・・。あの子を・・・お願いします・・・》


しばらく流された後、突然目の前に光りが現れた。その中へと吸い込まれていく瞬間に聞こえた言葉。これが頭の隅にひっかかっていた記憶を呼び起こ してくれた。
それは学校で見た夢。その忘れていた部分。あの時もこんなふうだったんだ。
そして、あの子。きっと、あの赤い髪の女の子のことだろう。
不思議と自分が何故こんなことになっているのかという疑問は湧かなかった。
ただ、重要な何かを任されたような気がしているのは確かだった。


-----------------------------------------------------------------


光りを抜けた世界。そこは前とはちょっと違っていた。一見同じように見えるのだが、前の時より色あせたように感じられる。空間全体に暗い雰囲気が漂っているように思えた。そして・・・


あの女の子がいた。
辺りの風景と同じようにその子も変わっているように見えた。なんとなく、幼くなったような・・・。
とにかく、今度は話しかけるべく、側に近寄っていく。
その子の目の前までたどり着いた時、その気配に気付いたのだろう、スッと女の子の顔が上がった。色あせた世界の中に浮かび上がる、鮮やかなブルーの輝き。
「・・・誰、・・・お化けさん」
「えっ!」
最初のセリフで絶句してしまう。思わず自分の体を見回してみても、人間の姿のままである。なのに、この子は今・・・。
「どうしたの?」
ちょっと首をかしげながら、不思議そうに聞いてくる。恐がっている様子はない。
「僕の姿が・・見えるの?」
「うん。髪の毛と目が銀色で、おでこから角が生えていて、手に紫色のグローブはめてるの。
・・・でも、髪の毛と目が黒い、やさしそうなお兄ちゃんも重なって見えるよ。」
どうやら、本来の姿と今の姿が両方見えているらしい。
「お兄ちゃんの事、恐くない?」
自分でも本来の姿が奇怪であるのはわかっていた。
でも、その子は小さな頭を横に振りながら答えてくれる。
「ううん。恐くないよ。だって、やさしそうだもん。
ねえねえ、お兄ちゃん、どこにいたの?探したのに誰もいなくって、寂しかったんだ。」
「そうなんだ。ごめんね。お兄ちゃん、ここに今来た所なんだ。」
「ふーん。」
ちょっと顔をうつむかせて、しばらく沈黙が辺りを包み込む。次に女の子が顔を上げた時、その目には涙が浮かんでいた。
「お兄ちゃん、・・・どうやってここに来たの?
・・・・・・・・・・
・・・・ママの所に帰りたいよ。」
今まで一人でいたことの寂しさの反動と母親の事を思い出したことで緊張の糸が切れたのか、初めて見た時のように泣き始めてしまった。
その子の前にしゃがみこんでいた態勢から、横に回り込んで隣に腰を降ろす。
母親を思う事、一人が寂しい事、すべてが小さかった頃の自分を思い起こさせる。
(あの時、側にいてくれる人がいたから、僕は耐えられたんだ。今度は僕がこの子の側にいてあげなくっちゃ。)
スッと手を伸ばしてしゃくりあげている頭を自分の方へ包み込むように引き寄せる。
「寂しくないよ。僕が側にいてあげる。君が寂しくないように、僕が側にいるから・・・」
「・・グスッ・・・ほんと?・・・」
「うん」
「じゃ、約束してくれる?」
覗き込むように上げられた顔には、不安と期待の色があった。
「僕は真治。君は?」
「明日香。惣流・明日香・ラングレー。」
「じゃ、明日香ちゃんと約束。ここにいる間は寂しくないようにそばにいる。 それに、何かあっても絶対守ってあげるよ。」
明日香の瞼に浮かぶ雫をやさしく払いながら、真治は微笑みかける。
けれども、その瞳にはまだ陰りがあった。
「ここにいる間だけ?どっか行っちゃうの?」
「・・・あのね、この世界は僕のずっといられる世界と違うんだ。だから、いつか帰らなくっちゃいけない。」
「・・・・・」
「でも、今は一緒にいるし、きっとまた会えるよ。」
「絶対?その時はまた一緒にいて、守ってくれる?」
「うん。それも約束する。」
しばしの後、どうにか納得したような顔をした明日香は小指を差し出していった。
「じゃぁ、指切りしよ。ね。」
真治は自分の小指を明日香のそれにしっかりからませる。
「指切り拳万、嘘ついたら針千本のーます、指切った。」
ようやくホッとしたようで陰りのなくなった明日香。
それに対して、真治は戸惑ったような表情をその顔に浮かべていた。
指切りの終わったその瞬間、なにかに捕まえられたような、そんな気分に囚われたからであった。

〜 4: 打ち砕かれし悪夢 〜


それからしばらくの間、お互いのことについて話していた。といっても、専ら真治は聞き役であったが。自分がどこに住んでいるか、それはどんな所かなど、次から次へと言葉が飛び出してくる。その中でわかったのは、生活の場が日本ではなくドイツであるということ、明日香には他の人には見えていない物が見えるらしいこと、母親も強い力を持っているらしいことであった。


ビクッ!
突然、明日香の体が震えた。そして、真治にもその原因となったものが感じられた。
邪の気配。
前に訪れたときに最後に見たものの記憶が今頃になって脳裏によぎる。
『誰です?あなたは。』
震えの止まらない明日香を後ろにかばって立った真治の前に、黒い霧のようなものを纏ったピエロのような風貌の何かがいた。
『私の食事に何をしているんです?』
「食事?なんのことだ?」
その言葉にピエロはスッと明日香を指差すと、真治が止める間もなく明日香がそちらに引き寄せられてしまっていた。
「真治お兄ちゃん!」
もがく明日香を押え込み、ピエロは答える。
『クックックッ。これですよ。この魂は実にすばらしい。力に満ちています。邪魔しないでもらいたいですね。』
「ふざけるな!明日香を離せ!」
本来の力を発揮すべく、額に力を込める真治。が、なにも起こらない。
「な、なんで?」
『どうやら人間ではないようですが、ここは私の結界内ですよ。肉体を伴わない影のみの存在で何ができるんです?早々に立ち去ってもらいましょう。』
ニヤリと口元を歪めたピエロの突き出した腕から発せられる黒い波に押され、真治は世界から放り出された。


「クッ、明日香!」
ガバッと飛び起きた所は見慣れた自分の部屋、ベットの上だった。本来なら拓也が同じ部屋にいるはずなのだが、今日は香の面倒を看るためにここにはいなかった。
(どうしたらいい?なんとかしないと・・・)
心ばかりが焦ってしまって、考えがまとまらない。と、
《娘を、明日香を助けてください》
唐突に部屋に女性の声が響いた。聞き覚えのある声。明日香の所へ真治を導いた声だった。そして、真治の前に明日香によく似た女性が現れる。おぼろげな、今にも消えてしまいそうな姿だったが、そこには確かな存在感と思いの強さが感じられた。
《お願いします。助けてやってください。》
その女性は真治を見つめ、懇願する。
「僕だって助けたいよ。けど、どうすればいいんだよ。」
《私はあなたを導くことができます。》
「けど、精神だけの存在じゃ、あそこじゃ何もできないんだ。」
「私が手伝いましょうか?真治君。」
ドアの方から新たな声が聞こえた。何時の間にか戸が開かれていて、そこに律子が立っていた。
「ところで、なんだかわからないけど、何があったの?」


部屋の中に入ってきた律子にこれまで遭った出来事について大まかに説明する。
「つまり、その明日香って子の精神世界に取り付いているやつ、おそらくナイトメアだと思うけど、それを倒すのに肉体を伴ったままそこに行きたいわけね。」
律子の言葉に真治は尋ねる。
「ナイトメアって、どういうやつなんですか?」
「悪夢を運ぶ黒馬とか、性的な夢をみせるサキュバス、インキュバスとか、いろいろいるけど、これが一番質が悪いわね。悪夢の世界に閉じ込めて魂をすするヤナ奴よ。」
そこに今まで黙ったままだった女性が口を開く。
《あれは、私が生前に封印したものです。封印の一番近くにいたあの子が標的になってしまったんです。どうか助けてやってください。》
「生前って・・・」
《今の私では、あいつに太刀打ちできるほどの力がないんです。どうか・・・》
「律子さん!どうにかできないんですか。」
しばらく考えた後、律子は真治の目を真っ直ぐに見つめた。
「本当はその子が側にいると確実なんだけど・・・。危険よ。いいの?」
「僕は・・約束したんだ、側にいる、守ってあげるって。だから・・お願いします。律子さん。」
フゥと息をつくと、律子はテキパキと指示を出し始めた。
「肉体を伴っていくからには、通廊がいるわ。私がそれになります。そこのあなたは娘さんの位置を私に投影して。真治君は合図したら飛び込むのよ。ただし、あまり永く持たないし、奴がこちらに来るのもまずいわ。確実に倒すこと。わかったわね。」
「はい!」
それから、律子の姿が二重、三重にとダブるようになり、次第に輪郭がにじむようにぼやけた後、直径1mほどの円形の鏡へと変化していた。そして、明日香の母親である女性が鏡面に手をかざし、娘の居場所へと道を開こうとする。徐々に鏡面の輝きが強くなる。
「今よ、真治君。」
《娘を頼みます、真治さん。》
二人の言葉を背負い、真治は戦いの場へと飛び込んでいった。


再び舞い戻った世界は、前回よりも更に色褪せていた。そして、先ほどとほぼ同じ位置に明日香とナイトメアがいた。
真治は額に力を込める。今度こそ変化が訪れる。
額に鋭い角が生え、瞳が、髪が銀色に染まる。
肉体がひとまわり大きくなり、紫色のプロテクターのようなものが全身を覆う。
瞳に怒りの輝きを閃かせて、初剛鬼となった真治はナイトメアに向かって旋風のごとく駆け出した。
『な、おまえは・・・』
ナイトメアがこちらに気付いて顔を上げたところに、右の拳を叩き込む。同時に空いている方の腕で明日香を抱え取るように引き寄せた。
「明日香ちゃん、大丈夫?」
「・・ん・・・真治お兄ちゃん・・」
ぐったりしていた明日香だったが、真治の顔を見て安心したのだろう。そのまま、眠り込んでしまった。
『貴様、どうやってここに・・。デーモンに属するもののようだが、こんなことができるものがいるとは、聞いたことがないぞ。第一、人間を助けるデーモンなどは・・・ 』
真治は心配そうに明日香を覗き込んでいたが、その声にハッと振り向く。そちらには、殴り飛ばされたナイトメアがさほどダメージを受けた様子もなく起き上がってきていた。
「そんなぁ、全力で叩き込んだのに・・・」
『非物質化するのがもう少し遅かったら、危なかったがな。もう、貴様の攻撃など当たりはしない。その魂を返してもらおう。』
「嫌だ。絶対に渡さない。」
《そうです。お前などに娘は渡しません。》
突然、声と共に真治の隣りに青白い光を放つ女性があらわれる。そう、明日香の母親である。
『く、響子・ツェッペリンか。そうか、貴様がこいつをここへ導いたんだな。』
ナイトメアの顔が憎悪に歪む。
『あの時、封印されて以来だな。貴様の娘だったとは、どおりでうまい魂だったわけだ。ますます見逃すわけにはいかなくなった。鍵の噂もあるしな。』


徐々に近づいて来るナイトメアに響子が前に出ようとする。
「待って、響子さん。」
真治はそんな響子を止めると、明日香を響子に渡していった。
「僕がやります。あいつとは、僕が戦います。響子さんは明日香をお願いします。」
《でも・・・》
「明日香に、守ってあげるって約束したんだ。それに、明日香はお母さんに、響子さんに会いたがってた。響子さんになんかあったら困るもの。」
真治は柔らかく、響子に抱かれた明日香の頭を撫でると少し寂しそうに微笑んでから、ナイトメアに向き直り拳を構える。
そんな真治の後ろ姿に感謝の想いを込めて頭を下げてから、響子は娘をその腕に包み込み、語り掛け始めた。


「ウオォォォォォォォ!!」
真っ直ぐ明日香と響子の方へ進んでいくナイトメアに何度も拳を繰り出すが、非物質化した体には真治の拳は素通りしてしまう。それどころか、ナイトメアの方はその瞬間に腕だけを鋭器や鈍器に物質化して攻撃してくるため、確実にヒットし、ダメージを残していく。どんどん明日香達に近付いていくナイトメアに焦りつつも、どうしてもその歩みを止めることが真治にはできないでいた。
(止められないのか?守るって約束したのに。)
真治の後ろにいる親子は、全く動こうとしない。何かに集中している様子で、こちらに気付いていないようだった。
(嫌だ。明日香にもうあんな想いはさせたくない。させないんだ!)
「ウワァァァァァ!」
明日香に手が届くまで後数歩の所まできていたナイトメアの前に立ちふさがると、真治は無意識に両腕をクロスして押し止めようとする。
『無駄なことを』
ナイトメアはそれを弾き飛ばそうと腕を振り下ろした。
パキイィィィィィィィーン!!
『な、なんだ?結界か?』
真治とナイトメアの接点に輝く壁が存在していた。真治の銀の瞳がより輝きを増していく。
『攻撃できないなら、無視するまでだ。』
ナイトメアは腕の物質化を解くと結界を素通りしようとした。が・・・
『ば、ばかな。通れないだと!』
真治の作り出した結界が、ナイトメアの進入を拒んでいた。真治が両腕を前に突き出すと同時にナイトメアはその壁に弾き飛ばされる。
起き上がる間も与えずに、真治はナイトメアに飛び掛かると拳を繰り出した。今度の攻撃は素通りをせずに当たっている。その拳は先ほどの壁と同じ輝きを放っていた。
初剛鬼のパワーの乗ったパンチの一発一発がナイトメアを滅びへと導いていく。


『ぐ、く、ふざけるなぁぁぁ!』
ぼろぼろになり、すでに非物質状態を保てなくなったナイトメアに最後の一撃を叩き込もうとした瞬間、ナイトメアは真治を弾き飛ばし、惣流親子の方へ走り出す。
『貴様らも道ずれだ!』
そのナイトメアの姿は、彼の司る悪夢そのものであった。真治はその後ろで静かに片手を上に伸ばすと、光り輝くその腕を振り下ろした。

次の瞬間、腕より放たれたその光は明日香の目の前で悪夢を打ち砕き、黒き闇を消滅させていた。

〜 5: 日常への帰還 〜


「真治君、真治君、起きなさい。」
心地よい眠りを妨げるように、体がユサユサゆすぶられる。
「ふぁあ、なんれふか?」
何とか仲のよい瞼を引き剥がしてみると、律子の顔が目に入った。手元の時計を見ると短針はまだ3と4の間にあった。
「大丈夫?怪我とかしてない?」
寝ぼけた頭にその言葉が染み込むに連れて、急速に記憶がよみがえる。
「あぁ!!律子さん!明日香は?響子さんはどうなったんです?それにナイトメアは?」
「落ち着きなさい、真治君。あの親子は無事よ。それにナイトメアはあなたが倒したんでしょう?」
すごい勢いで迫る真治の肩を押し止めつつ、律子は真治の言葉に疑問を感じる。
「え、いや、あいつをどうしても止められなくって、でも、明日香ちゃんにそれ以上近寄らせたくなくって、あいつの目の前に立ちはだかったところまでは覚えているんですけど・・」
真治は目線を天井へと向ける。確かに何も覚えていない、が、何かあったよう・・・
「まあ、いいわ。惣流さんから伝言よ。
【助けてくれてありがとう。親子共々感謝します。】
だそうよ。」
律子はそう告げると部屋の入り口まで歩いていく。そして、戸を閉める前に面白そうな表情で真治に声をかけた。
「真治君、約束したって言ってたわよね。真治君のそれは誓いに近いものがあると思うけど、私たちのような存在にとってそういうのは大きな力を持つときがあるのを覚えといた方がいいわよ。・・それじゃ、ゆっくり休みなさい。」
真治は律子が言いたかった事について考えようとしたが、睡魔には耐えられず、何時の間にか眠りについていた。


ドッスン!!
「お兄ちゃん、朝だよ、おっきろー!!」
美穂の元気な声と大きな衝撃が、次に真治の安らかな聖域に踏み込んだのは短針がまだ7を指しているところだった。
「う、もうちょっと、寝かせて・・・」
さすがに睡眠3時間は朝早く起きて雑務をこなしている真治でもつらい。特に今日は休日である。
「ダメ!今日はみんなでピクニックに行くって約束したもん!」
一方、十分睡眠をとったお子様、美穂は今日も元気一杯である。
「うみゅ、で、でも、香の具合も・・・」
なんとか、布団から出なくて済むように、起き抜けボケボケの頭を振り絞る。が・・・
「私、もう平気・・」
香の穏やかな一言で微塵に打ち壊される。


結局、この後真治はベットから引っ張り出され、一日5人の子悪魔達に引きずりまわされたそうである。
ちなみに、その日、律子はまた用事ができたとかで海外へと出かけていったらしい。

〜 6: 再会 〜


それから4ヶ月。
夏休みも終わり、新しい学期の始まりとなる月がやってきていた。
久しぶりに顔を合わせた級友達がそれぞれの休みについてわいわいとやっている中、真治は自分の席で一人ボーッと、夏休みにあった大騒動を思い返していた。
「よう、真治。元気にしとったか?」
「おはよう,真治。」
後ろから頭をたたかれ振り替えると、そこには1ヶ月ぶりに見る友人達の顔があった。
「おはよう、冬至、健介。」
「なんや、朝からボーっとしよって。これからの学校生活が楽しゅうなるかもしれへんのに。」
「真治、ビックニュースだ。今日、このクラスに転校生が来るらしいぞ。しかも、かなりの美少女らしい。くうーぅ、これで少しは懐が潤うかも。」
健介は指折りこれからの計画について何やらブツブツ言い始めてしまっている。
「ふーん。」
「気のない返事やのー。もしかしたらお近付きになれて、バラ色の高校生活ちゅうもんが待ってるかも知れへんのやで。」
何やら想いを馳せている冬至に、真治は後ろを指差してやる。つられて振り向く冬至の後ろには拳を握り締めた委員長こと、洞木光が立っていた。背中に陽炎が立ち昇っているように見えた。
「す・ず・は・らー。」
「うどわぁ、いいんちょ、いつからそこにおったんや?」
焦る冬至、迫る光、浸る健介。結局、新学期の始まりもいつもの光景が展開されるのだった。ちなみに自分がこれからここに加わる運命にあるのを真治はまだ知るよしもなかった。


「えー、今日から皆さんと一緒に勉強する、新しい仲間が加わります。彼女はドイツからこちらに来たばっかりですので、いろいろわからないことは教えてあげるように。では、入ってきなさい。」
朝のホームルームが始まり、先生が今朝健介の言っていた転校生を教室に呼び入れる。入ってきたのは、赤い髪を腰まで伸ばし、蒼い瞳を輝かせた活発そうな美少女だった。教室中から感嘆の声が上がる中、その美少女を眺めつつ真治はある女の子を思い出していた。
(赤い髪、蒼い目かぁ。明日香ちゃん、元気にしてるかなぁ。)
「では、自己紹介してください。」
「はい!ドイツから来ました、惣流・明日香・ラングレーです。よろしくお願いします。」
(明日香・ラングレー・・・惣流・明日香・ラングレー・・ええぇ!!)
「ええぇ!!」
真治は脳にその言葉が染み込むと同時に、おもわず声を上げてしまった。なんせ、今、思いを馳せていたのと良く似た少女から同じ名前が飛び出したのである。
クラスのみんながこちらを見つめる中をその明日香が呆然としている真治に近付いていき、動揺している真治の目の前に立つ。
真治の覚えている幼いアスカの微笑みが、目の前の明日香の笑顔に重なった。


「久しぶり。約束、守ってよね、お兄ちゃん。」


Vol.2へ
ver.-1.00 1997-09/23 公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは jr-sari@mvb.biglobe.ne.jpまで。


ども。先月家賃滞納してしまったjr-sariです。
やっと、続きが書けました。8月はまるまるお休みしましたが、 これからは大丈夫だ・・と、思う・・・ん・・だけ・・・ど・・・
とりあえず、頑張りますんで、見捨てないでね。
感想・苦情・御意見のメール、待ってまーす。


 jr-sariさんの【世界、重なりて】Vol.1 Bパート、公開です。
 

 アスカが少女で登場して、
 「あぁ・・・LASにはならないのね (;;)」
 ちょっとブルー入っていましたが−−−

 ちゃんとちゃんとで同い年(^^)/
 

 人間ではない真治の歳はよく分かりませんが(^^;
 

 それにしても・・
 アスカちゃんに「お兄ちゃん」なんて呼ばれた日にゃあ・・・

 メロメロになって、
 ガクガクになって、
 ボロボロになってしまう気がする(^^;
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 感想メール! 感想メール! 感想メールを書きましょう!!


TOP 】 / 【 めぞん 】 / [jr-sari]の部屋