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七話   








「着いたわよ、レイ行きましょ」

シンジとレイは、ミサトの車に乗っていた。シンジの検査も終わりレイとシンジ

が帰ろうとすると、ミサトはシンジの着替えが必要だろうと言う事で、今はミ

サト達の家に来ていた。

「でも碇君・・・・」

そうシンジは後の席で眠っているのだ。ミサトもさすがに荒い運転はしなかっ

たためか、シンジは静かな寝息をたて眠っている

「だいじょぶよ、着替えを取ってくるだけだし」

「でも・・・・」

レイはシンジを見詰めながら答える

「ちょっち話もあるし、ね?」

「・・・・・・」

レイは、少し考えた風にしていたと思うと突然シンジに唇を合わす。ミサトは唖

然としていたが、レイが降りるのを見て自分も車を降り部屋に向かう。当然ミサ

トが、黙っていられるわけもなくエレベーターの中に入った途端レイに言う。

「レイ、見せつけてくれるわよね〜いきなりキスだものね〜」

ミサトは実に楽しげにレイに言うがレイは答えもせずただ扉を見ている

するとおもむろにレイの口は開く

「・・・・気持ちのいいこと・・・・」

「なっ・・・・・」

ミサトは思いもよらないレイの答えに言葉をなくしていると、レイは誰に言う

でもなくつぶやく。

「・・・・碇君の心暖かい・・・・」

チン

エレベーターが止まりミサトも我に返り部屋に向かう







部屋に入りひととうりの物をバックに詰め、二人はシンジの部屋を出て玄関に

向かう、その途中ミサトは立ち止まりレイに話しかける

「ちょっといい、レイはシンちゃんの心がわかるの?」

「いいえ」

「じゃあ、何でさっきあんな事言ったの?」

「・・・・感じるんです・・・・」

「感じる?」

「・・・・はい・・・碇君の心、縛られる心、だから飛べない、かべ・・・

・・・それでも感じる碇君の温もり、暖かい心・・・・・・」

ミサトはあのレイがこんなに話す事に驚いたが、レイに問いかける。

「レイはシンジくんを、救えるの?」

「・・・・いいえ・・・・」

レイの顔はミサトが見ても苦痛の色がでているのが見てとれた

「・・でも碇君にあげるの、私の心・・・碇君に力をいつも貰っている・・・・

だから碇君が帰って来るまで・・・碇君の心暖めるの・・・今は弱っているから

・・・・壊れないように・・・いつ帰って来てもいいように・・・・・・」

レイは淡々とした口調でそう言う

しかしミサトには言葉の中にレイの強い思いを感じた

「・・・わかったわ、シンちゃんの事、頼んだわよ」

ミサトは、そんなレイの肩に手を掛けレイの目を見て力づよく言う

そして二人はシンジが待っている車に足を向けた











シンジとレイは、ベット入っていた。昨日と同じ様にお互いを求める様に抱き合

って、しかし一つだけ違っていた少年のほほを流れるものがあることだけが、

レイは、それを見て少年を抱く腕により一層力がこもる。そしてシンジにキスを

する

それはシンジのこころを深く感じる時

レイの心でシンジの心を暖めるもの、レイに力をくれるもの











次の日シンジは、午前中に検査を済ましアスカの所に来ていた

レイは、病室に入らず廊下のベンチに座って本を読んでいる

「結局どうなのよ、シンちゃん」

「医師の報告を見ても外的損傷は見られない、少し体が衰弱してる程度でこれと

言ったものはないわ」

リツコはティスプレイに表の様のものをミサトに見せながら説明する

「じゃあ、原因なに?」

「わからないわ」

リツコは表情のない声で答える

「わからないて、どう言う事よ!」

「何をしたのかわからないのよ、脳の機能は正常外的損傷も見られない、考えられ

る事としたら心への干渉、けどそれが暗示のようなものか、薬で行なったものによ

るものなのか、まるで見当も付かない、それが今の現状よ」

「何も出来ないって、事・・・・」

「そう言う事ね、でも彼は生きているわそれがどんな形にしても・・・」

ミサトはモニター越しにシンジに目をやる

何もかわらない、いつもの光景に・・・・











プールルルル、プールルルル

薄暗い部屋の中、何度目かの電話が鳴り響く

「・・・・そうかわかった」

冬月は今までと同様に短い言葉を返し静かに受話器を置く

そして冬月は深く呼吸をし口を開く

「終わりだな」

「ああ、老人達の戯言に付き合うのも疲れたからな」

ゲンドウはいつもより静かな口調で答える

先ほどの電話の内容は策の成功

建造中の最後のEVAがネルフの手に落ちた事の知らせだった

それによりネルフは全てのEVAを事実上、手に入れた事を示していた

「そうだな、だが良くこんな物が成功したものだな今でも俺には信じられんよ、

やはり彼の力か」

「その為に生かしている」

冬月はそんなゲンドウの態度に苦笑し言葉を続ける

「そうか、だがお前も少しはかわった方がいいじゃないか、碇」

「・・・・」

「まあいい、自分の事も少しは考えるんだな」

「・・・・ああ」

二人の言葉は消える

いつもの静かな空間に戻る

しかしそれは今までの物とは違い、心地良い時の流れを二人は感じていた











時間になるとアスカの部屋に看護婦が入って行く

レイは入り口に行きシンジを待つ

シンジが出て来るとレイはシンジを連れて家に帰る

帰っている時レイは何も話はしない

ただシンジの手をとり静かに歩いていく

端からみれば恋人同士に見えているだろう

レイはそのまま買い物を済まし家に帰る

ただ繰り返されるいつもの光景







二人は家に着くと、レイは料理を始める

シンジは床に座りなにか遠くを見詰めている

レイは食事を作るとシンジの横に腰かけシンジに食べさせる

「はい」

レイはそう言いスプーンを開いたシンジの口の中に入れる

今のシンジは一応口は開くが飲み込むのに時間がかかる

ただ口に入って来た物を、ずうっともぐもぐしているのだ

レイはそんなシンジの様子をじっと見詰めている

そんな食事を済ませレイは食器を洗い始める    

その頃シンジの前には、レイは本ででも覚えたのかお茶の入った湯飲みが置か

れている

シンジはそれをただぼーと見ている







シンジとレイは、お風呂を済ませベットに入る

そしてシンジを抱きしめ口づけをする

繰り返されるおまじない

『・・・・碇君、起きて・・・・』

静かに肌を合わす

こころの壁をいたく感じる時
















「だれ?」


「・・・・さむいの・・・・」


「だれなの?」


何もない空間

時の流れすら感じられない


「・・・ミサトさん・・加持さん・・リツコさん・・・父さん・・母さん・・・」


ただ闇だけが広がる所


「・・・アスカ、綾波、トウジ、ケンスケ、みんな・・・・・・・カヲル君・・」


狭く感じそれでいてどこまでも広がって行く感じのする場所


「・・・お願い・・・・これを・・・・」


人の形はなく

しかし形を感じとる事の出来る

そこにヒトの形をした物が存在していた


「・・・・一人はもう・・・いやだ・・・・・」


その小さな箱のなかに














「バカシンジ」














八話へ

ver.-1.00 1997- 5/23公開
ご意見・感想・誤字情報などは nisioka@mx4.meshnet.or.jpまで。

 [にしおか]さんの連載小説『涙』第一章 七話、公開です。
 

 新しく生まれたレイとシンジの”日常”。
 繰り返されるこの時の中で、シンジは帰ってくることが出来るのでしょうか?

 またそのシンジを支えにしているであろうアスカは?
 レイ自身の動きと合わせて複雑な事情が絡んでいます・・・・
 眠るシンジの心に触れる物の存在も・・・・・
 

 一方ゲンドウ達の方ではなにやら準備が整ったようです。
 こちらの動きも目が離せなくなってきました。
 

 訪問者の皆さんは3人の子供達に何を感じますか?
 にしおかさんにその気持ちを伝えて下さい。


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