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チュンチュン、チュンチュン…

午前9時。ここコンフォート浦安マンションの一室にも光が差し込む。ここの長女はランニングウェアで自室に戻って来た所だった。
決して運動神経が良さそうではない彼女は、厳しい表情で荒く息をつく。肩からかけたタオルで汗を拭う。

「ふぅー、やっぱり慣れない事をするものじゃないわ。」

冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップ一杯だけ飲む。ぐうぅ、と鳴るおなかは無視。今日の朝食はこれだけだ。

「はあぁー。」思わず悲しげな声を上げてしまう彼女。

「だあから、出来ないダイエットなんかするもんじゃないって言うのよ。」
キッチンとつながったリビングのリビング側で、寝転がりながら彼女の妹が突っ込んだ。

「…」

妹はファッション雑誌を読みながらポテトチップスを頬張っている。

牛乳を飲んでいた姉は呆れながら振り返って、妹に言った。
「あ、アスカ、何時家に来たの?」



 
やっぱりEVAが好き
 
最終話(笑)


「何時? 今さっきよ。んー」時計を見ながら考えるアスカ。
「20分位前かしらね。」

「もしかして、私鍵開けっぱなしだったかしら?」慌てる姉。

「ん? ちゃんと閉まってたわよ?」ポテチをくわえながら、アスカは不思議そうに姉を眺める。

「じゃあ、」姉はコップを流しに置いて、「どうやって家に入ったのよ。」

「合鍵で入ったに、決まってるじゃん。」

「合鍵?」

「合鍵よ。合鍵。やあねえ、実の妹がそれ位持ってて当然でしょ?」

姉はショックを受けたらしい。
「アスカに合鍵が渡っているとは…マズったわね。」

「ま、マユ姉ちゃん、あたしを泥棒か何かみたいに言わないでよ。」

今度はマユミが心底意外そうな表情を見せた。
「違ったの?」

「ちがーわよ!」

「ふう、まあ良いわ。あなたもゴロゴロしてないで、少しはダイエットでもしたらどうなの?」
まだタオルで汗を拭きながら、アスカのいるリビングに歩く。

「あたしは必要無いもん。」

「一応自称・女優なんでしょう、プロポーションとか、気にならないの?」

「自称じゃないわよ! 未来のスタアにそんな言い方しないで。」雑誌から視線をマユミに向け、きっとなるアスカ。

「スタアねえ…」

「大体あたしは多分、前世でドイツかどこかのお姫様だったのよ。だからダイエットなんかしないでも常に抜群のぷろおぽおしょんぬが維持されるのよっ!」知らない内に立ち上がっているアスカ。

「ドイツ人って、太っている人多そうね。」

きっ
「どうしてそう一々うるさいのかしら。」

「大体、あなたの髪が赤茶けているのは子供の頃スイミングスクールに通ってたから塩素で脱色しただけ、目がたまに青く見えるのは色素の薄かった綾波方のおじいちゃんの隔世遺伝でしょう。あなたは思田アスカ、全くの千葉人よ。…そんな不摂生な生活してたら、知らない間にデブっちゃうわよ。」

「なーっ、乙女への禁句を!」アスカは目を細めた。「大体マユ姉ちゃんがダイエット頑張ったって、そんな眼鏡顔じゃ何の意味も無いじゃない。」

マユミは少しムッとしたようだが、軽く受け流した。
「はいはい。でも私は、あくまで健康の為にやっているのよ。」
マユミはシャワーを浴びに行った。



 
ゲーム製作会社から疲労困憊したマナが帰って来たのは、その日の夕方の事だった。
紙袋にサンプル版のゲームを持って来たようだ。

ぴしっとスーツで決めたマナは、パジャマだか普段着だかもはっきりしないようなトレーナーを来て依然ゴロゴロしている自分の姉を見て呆れた。

「アスカちゃん、良い加減にしてよ。自分がゴロゴロするのは勝手だけどさ、この家にまでゴロゴロ菌を持ち込むのは止めてくれる?」

「おうまいぐっねす。」肘を付きながら、両手を軽く上げるアスカ。
「ここの女達はどうして揃いも揃ってあたしに冷たいのかしら…姉は泥棒扱い、妹は病原菌呼ばわり…」

「両方とも事実でしょうが。…それにそれ、ドイツ語じゃなくて英語よ。」

アスカはマナの置いた紙袋に近付いた。
「凄い! これ、「エヴァン大戦2」じゃない! マナの会社こんな有名なゲーム作ってたの!?」

「ま、下請けだけどね。これから動作のチェックをしなきゃならないのよ。」

「家で?」

「ん。」

「へえ。普通そういうのって、会社でやるもんなんじゃないの?」

「ウチの会社、隣のビルに最近劇団か何か入ったらしくてね。うるさくてうるさくて、ウチの神経質な社長がキレて、会社の引っ越しを決めちゃったのよ。…まあ、会社って言っても全社員で5名だしね。でも、これの納期は明後日。だから各自、自宅の機材で出来る所までやろうって。」

「マナも相当危ない橋を渡ってるわねえ。」

「仕事ではね。アスカちゃんみたいに人生その物をギャンブルに賭けているのとは違うから。」

アスカはマナの反撃は聞いてもいない。
「ねえ、このゲームやらせてよ、一度プレイしてみたかったのよ、これ。」

「だーめ。仕事の邪魔になるような事は一切しないでくれる?」

「そうよ、アスカ。マナの邪魔はしないのよ。」
夕方のランニングから丁度帰ってきたマユミがアスカに忠告する。

「なあによ、2人して。分かったわ、やっぱりあたしはこの家の子供じゃないんだわ! はぷすぶるぐ家の王女の血を引く隠れキリシタンで…」

「ああ、マユ姉ちゃんこれ、社長が出張のおみやげで皆にくれた奴。」
「あら、ル・クレのレアチーズケーキじゃない!」

「人の話を聞けっ!」

「はいはい、アスカちゃんは確かにオーストリアの生まれよ。」どうでも良さそうに流すマナ。

「まあまあ、さっそく3人で食べましょ!」

「あ、ごめん。私今仕事で、時間無いの。それ、姉さん達で食べちゃっていいから。」重そうな紙袋を持ち、アスカが名残惜しそうに持っているディスクを奪い返し、マナは笑って自分の部屋へと消えて行く。

「そお? 悪いわねえ…」皿を用意しつつも、申し訳無さそうなマユミ。

「よし! ライバルが一人消え去ったわね。マユ姉ちゃん、さっそく頂きましょ!」

「そうね。…あ、」ここまで至ってマユミは自分の服装が上下ジャージである事にようやく気付いた。
「私今ダイエット中だから、こんなの食べる訳にはいかないわ。カロリーの計算が合わなくなるもの。」
紅茶を入れながら一人ごちる。

「あらー、残念でしたわねえ、お姉様。と言う事は、このケーキ丸々一個わたくしが独り占め出来るという事でござーますわね。」

「駄目よ! この家の血を引かない隠れキリシタンに、ケーキは分けられないわ!」
言いながら紅茶を入れているマユミが目を上げると、アスカは既に立ったままキッチンカウンターの上のケーキを勝手に切って頬張っていた。

「あー!」絶叫するマユミ。

「おいぴい…」立ち食いながら味を堪能するアスカ。

「もう! マナちゃんも後で食べるかもしれないから、ちゃんと残しておきなさいよ。」

「はーい。」

「もう、うるさいなあ。どうしたの?」
マナが部屋から居間に出て来た。

「ああ、ごめんなさい。ほら、紅茶入れたわよ。」

「ああ、サンキュ。」

「はんでもな、マウ姉ひゃんが、ガイエッド中はがらゲーギはべられないんだって。」

「物食べながら話さないでよ、王女様が…」呟くマユミ。

「ああ、それでマユ姉ちゃんそんな格好だったのね。じゃあ、ケーキ持って来るなんて悪い事しちゃったわね。」

「良いのよ。余ったらお隣にお裾分けしても良いんだし。」

「まあ、そうね。」

マナとマユミが話している間に、アスカは勝手にケーキを皿にのせ、居間(兼食堂)のテーブルに移動した。
「いっただっきまーす。」

無言でアスカの方を見るマナとマユミ。

「っくーっ! やっぱル・クレのチーズケーキはんまいわねえ。上品な甘味、固めに焼き上がった皮とひんやりした中身、まーさーに王女様の味よねえー。」殆ど涙ぐみながらフォークを振り回して力説するアスカ。

「け、ケーキ…」死んだ目でケーキに向かおうとするマユミ。

「だ、駄目よマユ姉ちゃん、自分が持って来て言うのも何だけど、あれは悪魔の食べ物よ! あんな物食べたらダイエットもへったくれも無くなるわ。」
マユミの両肩を押さえるマナ。

「はぅー。この歯触りよねー。しっとりとした味わいがまたたまらないわあ…」

「げえ゛ぎ…」

「アスカちゃん! 良い加減にしなさい!」
マナがアスカの前に立ちふさがる。その態度は姉に対する物と言うよりは、出来の悪い娘に対する物だ。

「何よう。あたしはただ自分の感動を一レポーターとして素直に読者に伝えようと!」

「何でも良いけど、マユ姉ちゃんのダイエットを邪魔するような事は止めて頂戴。…どうせ暇なんでしょう、マユ姉ちゃんのダイエットを手伝ってあげたら。」
マナは自分の部屋に戻った。

「何よ、言いたい事だけ言ってさっさと行っちゃってさ。」

「う゛う゛…けえき…」ケーキの霊が乗り移ったらしいマユミが、アスカにのそりのそりと近付く。

アスカは嫌な汗をかきつつ嘘笑いをする。
「あ、あは、食べる?」

「うう…」ふと我に返るマユミ。「はっ、いや、食べる訳にはいかないわ。」
アスカを優しく見つめる。「遠慮せず、たんとお食べ。」

「そ、そう…」

じぃ…

「…」

じーっ…

「あの…」

じい、じぃいいい…

「凄く、食べづらいんですけど…」アスカが食べる至近距離でアスカの顔をじっと見つめるマユミ。

「…良いの、食べて頂戴。…私は匂いだけでもかいで味わうから…」そっと、目の端を拭う。

「もう、分かったわよ!」
アスカは立ち上がり、ケーキの皿をキッチンに持って行く。ケーキの残りをラップして、冷蔵庫に入れてしまった。

「もう良いの?」

「あのねえ…まあいいわ。…マユ姉ちゃん、痩せたいんでしょ。」

「ええ。」

アスカは両手を腰に当て、言った。
「協力してあげる。このアスカ様に任せない。素晴らしいダイエット法があるわあ。」




CM
 
ついにあいつの時代がやって来る!
 
「キーホルダー」「エヴァントレック」でお馴染みの作者が送る、今までで最も珍しいキャラのエヴァ小説!
アスカ、レイ、リツコに続き第4のキャラ派閥形成か?
 
 
夏の海岸、恋、友情、自然。
 
何も無かった片田舎の海に、東京からやって来た彼等の目的は?
2人の少女と1人の少年の関係。動物と人間の関係。
 
果たして作者は夏休み中に完結なんて出来るのか?
 
新連載「海辺の生活」、全11話前後完結予定、お楽しみに!
 

 
スタートレックとエヴァンゲリオンの華麗?なる融合!
 
 
舞台は宇宙。24世紀の宇宙船を舞台とした壮大なバカ話。
 
愛、倒錯、盗作、女装、ヤヲイ、何でもOK。
掟破りの実験ギャグ、引用に次ぐ引用、しかも無断!
エヴァ小説史上最も登場人物の数が多い小説の一つ、ただし大部分が引用!
 
 それでもまだ作者が抗議のメールを受け取った事がないのは奇跡か、誰も読んでいないからか。
 
現時点で完結のメド全く立たず。(TT)
 
大バカコメディー、「新エヴァントレック」、好評?連載中!




「確かに、それなりに効果はあるのかもしれないと思うわよ。」マユミは、ずり落ちた眼鏡を上げる。
「でも、何でこんな格好をしなきゃいけないのかしら。」

マユミとアスカは、どこから持って来たのか派手、かつ安っぽいフリフリ付きレオタードのペアルックを着ていた。御丁寧にシャツには、恥ずかしい音符のマークが付いている。

「ノンノンノン。日本人は形から入る物なのよ。」
人指し指を振るアスカ。

「何だかねえ…」

「それじゃあ、さっそく行くわよ。まずは腹式呼吸で、「あー」って言うの。良いわね。」

「分かったわ。」

2人は立ち上がり、お腹に手を当てる。思いっきり息を吸い込んで、
「あー」「あー」

お腹の底から響く、結構大きな声を出し続ける。

「あーーーーーーーーー、あ、あ、ふー。」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

マユミが息切れしている間もアスカは声を出し続けている。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアアアアアアア、あ、あ、あ。」

「アスカ、結構凄いじゃない。」

「まあね。一応女優だからね。」髪を掻き上げるアスカ。

「ちょっと感心したわ。」

「それでこれ、意外と良い運動になるでしょ?」

「うん、そうかもしれない。」

「こういうのもあるわよ。あえいうえおあおかけきくけこかこ…」得意になって続けるアスカ。

「それって、声どうこうっていうよりは滑舌の問題なんじゃないの?」

「…それも大事だって事よ。まあ、運動量は、さっきの方があるかも知れないわね。」

「でもアスカ、これって何か、もう一つ動きが足りなくない? 確かにこれだけでもそれなりに疲れるけど…」

アスカは笑った。
「こんな声出しながら動いたら、それこそミュージカルになっちゃうわよ。」
自分の台詞で、ぽんと手を叩くアスカ。
「ああ、そうだ。あたしが今度オーディションを受けるミュージカル、ここでちょっとやってみれば良いのよ!」

「へ?」

「だからあ、台本見ながらで良いからちゃんと腹式呼吸で歌いながら同時に踊るのよ。どう? これならかなり運動量を消費するわよ。」

「それって、要はアスカの稽古に付き合えって事?」

「何でそうなるかなあ。あたしは善意で愛しのマユミおねえたまに提案しているのよお。」
アスカは既にノリノリだ。

「まあ、それも悪くはないか。確かに運動にはなるでしょうね。」


マナは自室でヘッドホンを付けて仕事をしていたが、先ほどから何か居間から変な声がするのが気になっていた。仕事に支障があるという事でもないのだが、気になったマナは居間に出る事にした。
 
 
居間では、2人の姉が何やら不思議な事をやっていた。

「おお、ジュリエット。君は何故ジュリエットなのだろう。」純白のタキシードに身を包んだマユミが赤い薔薇を見つめて悲しむ。

「あおあ! ロメィオゥ! あなたはぁ何故ロメィオゥなのぅ?」赤いドレスのアスカ。

「ジュリエット!」

「ロメィオゥ!」

「おう、ジュリエット!」

「ルォミオーゥ!!」

2人は突然互いの手を取り、タンゴのような踊りをしながら腹式呼吸で歌いだした。

2人ーでー歩いていけーばー、大体ー恐くーないさぁー。愛のー力ーでぇ世界をー、征服してやるぅのさぁー。

使徒が来たって人任せえー、小麦相場は乱高下ぇえ!

「わいはおまんがニュータイプになると言うならとめはしまへん、そやけど、そやけどドッグフードはペディグリーヂャムにしておくんなましー!」

ワワワワー、あぁいの世界ぃー。ワワワワー、蕎麦湯がうぅまいぃー。

ふーたーりーがいれーばぁ、このぉ世は70ってーん弱さぁああー!(ワワワワー!)

「オウ、ルォミオゥ!」

「こんな所に居たんだねジュリエット! さあ、一緒においで、スタアシップに乗ろう!」

「駄目よロミオ、私にはどぇきないわあ!」

「ジュリエット!」

「ッルメィオオオオウウ!」

ワワワワー「ん、んん」
マナが咳払いをした。

「ちょー、そこのお客はん、芝居の邪魔は止めてくれまへんか。」マナにガンを飛ばすアスカ。

「ま、マナ、見てたの…」急に正気に戻り、どうもブルーになっているマユミ。

「……………何、これは。」

「見て分からんかのう、ミュージカル、「スペースロミオと横丁ジュリエット」でっしゃろ。芝居の途中で妨害工作とは、あんさんも度胸があるたいね。」

「どこの方言よ。」

「マナ、ごめん、うるさかった? 良い運動になるかと思ったんだけど…」

「ああ、別に良いけど…これ、ダイエットだったのね…でも、わざわざそんな服に着替えなくても…」
改めてマユミの服を見上げるマナ。口は半開きだ。

「あんさんはまだ、演技の本質が分かっとらんたいね。稽古とはいえ、芝居となれば全身全霊を演技に打ち込む! それが役者というものじゃっきに!」

「アスカに「日本人は形から入るものだ」って無理矢理着せられたの…」

「それは、大変だったわね…」

そのわりにはかなりノッて歌ってなかったか? とマナは思ったが、敢えて口には出さなかった。

「ダイエットに協力してやったのに何よ、その態度わあ。」アスカがぶーたれる。

「ああ、ごめんなさい。確かに良いダイエットになったわ。」マユミが笑ってアスカに振り返った。

「でしょう?」

ニコニコするアスカが、ふと思い付いた。
「そうだ。このミュージカルのオーディション明日なんだけど、マユ姉ちゃんも一緒に来てよ!」

「「はあ?」」

「一人だと、どうもああいうのって心細いのよねえ。お願い!」

「何言ってんのよ、マユ姉ちゃんは、無職のアスカちゃんと違って仕事あんのよ。」

「無職って言うな!」

「そうよマナ、幾ら何でもそれじゃアスカが不憫だわ。せめて「プー」位の言い方で…」

「それも違ーう!! …大丈夫、オーディションはそういう事を考慮して、夕方からなの。だから問題無いわよねっ!」
マユミがまだ持っていた薔薇を取り、両手で振り回すアスカ。

「何で、私がそんな事しなきゃなんないのよ…」


3日後

マユミは夕飯の準備をしていた。アスカはやっぱり家に押しかけて来て、ゴロゴロしている。

アスカは寝転がり、足をバタバタさせながら言う。
「そういえばさあ。」

「ん、何?」ジャガイモを洗いながらアスカに聞くマユミ。

「オーディション、どうなったのかな?」

「何の?」

「「宇宙のロミオと横丁のジュリエット」よ。姉さんも行ったでしょ。」

「ああ、あの変なオペラね。」

「…ミュージカルよ。」

「ああ、ミュージカルね。もう、何で私まで連れてかれなきゃなんないのよ、知ってるでしょ、私、歌苦手だって。大勢の人の前で赤っ恥かいちゃったじゃない。」
洗ったジャガイモを水の張ったボウルに入れる。

「それも経験よ。…今月仕事が少なくって苦しいのよねー。」

「ただいまー。」
マナが仕事から帰って来た。

「ああお帰りマナ。」

「マユ姉ちゃんただいま。…あれ、アスカちゃん今日もいるの。」

「人をお邪魔虫みたいに言わないで。」

「「お邪魔虫よ。間違いなく。」」ユニゾンで返すマユミとマナ。

「3人姉妹なのに、どおしてそうあたしだけを迫害するのかしらっ!」嘘泣きをするアスカ。

「アスカは一人暮らししてるんじゃなかったの?」

「マナ姉ちゃんは良いわよ、帰るホームがあって! あたしは自分の家に帰っても誰もいない、ただ極限状態にまで散らかった部屋が無言であたしを迎えるのよ!」
おーいおいおいおい。

「掃除してないからでしょ。」

マユミは台所から顔を上げてアスカに聞いた。
「でも、アスカ、仕事無いっていったってさ。もしあのオーディションに受かったらどうすんのよ。」

「どうするって?」

「あんな変な仕事、やるの?」

「変とはまた失礼ね。宇宙を又にかけた壮絶なる愛のミュージカルよ。これをやらずして女優とは言えないわあ!」

「…まあ、本人が乗り気なら、別に良いんだけどさ。」
 

マナが立っている横にある電話が鳴った。

「あ、はい、思田ですが。え? あ、はい。少々お待ちください。」受話器を手で押さえ、アスカに渡そうとするマナ。
「アスカちゃん、オーディション事務局から。」

「え、えええ!」

「何で、それが家にかかってくるのよ。」怪訝そうなマユミ。

「あ…ゴメン。連絡先でここの電話番号書いたの。今ウチ電話止められちゃってて…」

「どういう生活してんのよ…はい、どうぞ。」しかしアスカはマナが渡そうとする受話器を受け取ろうとしない。

「そ、そんな、恐いわよ! お願い、マナが聞いて!」両手をあわせる。

「もう、しょうがないわねえ。」マナは受話器を自分の顔に近付けた。
「はい、すいません、只今出かけておりまして。はい、伝言なら構いませんが。…はい、ええ、ええ。え?」
マナは取り繕った高めの声から一瞬地声になった。
「…あ、はい、はい。分かりました。はい、いえこちらこそ。はい、失礼します。」

マナは呆然としていた。

マユミは包丁を持ちながら、マナに声をかける。
「どうしたの、マナ?」

「オーディションに、オーディションに…」
呟くマナ。

「まさか!」

「受かったの!」詰め寄るアスカ。

「……うん…」

マナの答えを聞いて、両手を上げて文字通り跳びはねるアスカ。
「ぃぃぃよっしゃぁぁぁあ!!」

ふっ
「やっぱり見る人間が見れば、違いが分かるって事よねえ。」

マユミはジャガイモの皮を剥きながら言う。
「喜ぶっていうのが、解せないんだけどね。まあアスカの性格には、ああいう楽しい劇は合ってるか。」

マナは呟いた。
「…マユ姉ちゃんが。」
 
 

「「はい?」」

「「宇宙のロミオと横丁のジュリエット」のロミオ役でぜひとも出演して下さいって。審査員の人達も、彼女の個性的な才能に感動した、って。全国八ヵ所で公演があるけどスケジュールは大丈夫か、って聞いてた。」
 

「「え。」」
マユミとアスカはしばらく顔を見合わせた。

「「え、え、ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」」
 

つづかない
 


ver.-1.00 1997-08/ 公開
 
感想・質問・誤字情報・デリバリーオーダー、テイクアウト御予約などは こちらまで!


「えっと、今回のはですね、「やっぱりEVAが好き」と言いまして、1990年頃フジの深夜放送でやっていた「やっぱり猫が好き」のパロディーです。」
「そう、良かったわね。」
「(少し手ごたえのある返事…)で、地域や年齢によっては「そんなの知らない」という方もかなりいらっしゃると思うんですが、恩田三姉妹(のみ)が出て、あるマンションの一室(のみ)で毎回ドタバタが起きるというコメディドラマでした。ちなみに三谷幸喜作品です。詳しくはここ等を御参照のほど。」
トゥルルルル…
「今日は随分早いね。」
「はい、こちらダメノピザ。はい、はい…」
「(もういいや…)89年から92年位のフジの深夜放送って、凄く面白かったですよね。もう、挙げるとキリ無いですけど、「マーケティング天国」とか「カノッサの屈辱」とか「IQ Engine」とか「Einstein」とか「男と女の輸入物」とか「TV-Bookmaker」とか「夢で逢えたら」とか「Soft verdict生活」とか(←これ分かる人かなり通)「東京ストーリーズ」とか「ボクらの気分」とか…」
「はい、12インチ2枚と10インチ2枚…」
「でも私が一番好きだったのは「TV2」。これにつきますね。あの手の環境ビデオ的なのって大好きなんですよ。高速道路や北斗星から見える景色を延々と映すだけの奴とか、後、空撮物。東京23区、私鉄沿線、京都・奈良とかありましたよね。後、「抜け道マップ」も面白かったなあ。私車運転しないですけど、道の景色が延々と早送りされてるのを見てるだけで、何か楽しいの。「TV水族館」に…「インタビューズ」!! 「TVで見る森羅万象」(←タイトル違ったかも)って、分かる人いる?」
「メイクさん、これお願い。」注文のメモを渡すレイ。
「はい?」
「あなたメイクでしょ。」
作者の目の前にはピザメイク用のテーブルが。
「…何で私が生地こねてるの?」(;;)
「…駄目ね。バイト、交代。」
「今度から違う人出すべきかな…」

 フラン研さんの『やっぱりEVAが好き』、公開です。
 
 「やっぱり猫が好き」・・・

 深夜で人気をはくし、
 調子に乗ったTV局がゴールデンでの放送に踏み切り、
 見事にこける・・・

 というフジTVお得意のパターンに見事にはまった作品ですね(笑)

 あと、「カルトQ」とか・・・

 なんてことを書いていたのですが、
 ここを見に行ったら・・・同じ事が書いてあった (;;)

 
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 全11話前後という具体的なのか半端なのか良く分からない(^^;CMを流したフラン研さんに
 感想のメールを送りましょう!

 

 

 

 最近『ロミオとジュリエット』って流行っているの?
 めぞんEVAで3本目ですよ、この劇が出てきたの・・・



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