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 その部屋は静寂に包み込まれていた。
 槍の穂先のような尖塔型のネルフ本部。おそらくジオフロント世界で人間が作った建物の中では最も高いそのビルは、まるで天に突き刺さっているようだ。天の主に刃を向けるかのごとく。
 広大な建物はまだ未完成の部分がある。度重なる使徒来襲や人員の不足が原因で、ネルフ本部は完成予想図の7割くらいしかできていなかった。防衛機構や情報管制の設備が最優先で作業が進められているため、研究施設や職員の住居については最低限の部屋しか確保されていない。
 六分儀ゲンシュウの私室は三階の西ブロックの一番隅、まだ他の住人がいない寂れたところにあった。
 部屋が静かなのは他の人間がいないせいだけではない。その空間の主は座禅を組み下腹部の辺りで両手の指で印を作ったまま動くことがなかった。声を発しないどころが身動き一つしない。彫像のように全ての生命活動を止めてしまったかに見えるゲンシュウは、遠目に見ている分には呼吸をしていることすら分からない。
 ゲンシュウはもうかなりの間座禅を組んだままだった。再びネオトウキョウに戻ってきてからというもの部屋に籠もりっぱなしである。シンジやアスカが剣の稽古をせがんでみても、重厚な笑みを作ってみせるだけで応じようとはしない。


 「来たか・・・・」


 年輪というしわが刻み込まれた瞼が開く。まるで何十年も前からその瞬間に目を開けることを定められていたかのように。短く、しかしはっきりとした呟きを漏らしながら瞼を開いたゲンシュウはよどみのない動作で立ち上がって、膝の上に載せていた白銀の鞘に包み込まれた剣を掴む。
 厳しい顔つきでドアを開けたゲンシュウの目には思いがけない人物が飛び込んできた。長身のゲンシュウの胸くらいの細身の少女は、鋭い眼光をしたゲンシュウの視線を気にもとめていないように受け止めると、赤い瞳を返した。
 偶然通りかかったわけではない。
 本部のはずれにあるゲンシュウの部屋は重要施設の通り道ではない。この部屋に用事がある以外、この場所にいるはずがない。しかしゲンシュウの前に立ちはだかった空色の髪の少女は、何か言葉を発することもなくただ立ちつくしていた。

 ゲンシュウが剣を抜く。

 ゆっくりと光り輝く剣を外気にさらしたゲンシュウは左手に持った鞘をレイの前に突き出す。何気なく鳶色の瞳をまばたきさせたレイは、小首を傾げながら鞘を受け取った。自分がなぜここに来たかもはっきり分からない、なぜこの鞘を受け取ろうと思ったのかも分からない。だがレイには白銀の鞘を受け取ることがごく自然なことに思えた。

 「シンジを頼む」

 ゲンシュウはレイにそれだけ言い残すと急ぐ風もなく淡々と歩き去った。扉の前に佇む少女は渡された極光の剣の鞘をじっと見つめた後、通路に消える剣聖の背中に真っ直ぐな視線を向けた。


ジオフロント創世記

第20話

光と闇と



 「ほらシンジ!ボサボサしてるんじゃないわよ!!」

 つばぜり合いだけでシンジを吹き飛ばしたアスカは、だらしなく尻餅をついた幼なじみを叱咤する。ネルフ本部内の鍛錬場。半球状のドームような空間では甲高いアスカの声はいつもにましてよく響く。

 「しっかりしなさいよ!そんなんじゃまた腕を切り落とされるわよ!!」

 アスカの厳しい声に怯えたような表情を見せたシンジはヨロヨロと立ち上がると、猛獣の前に投げ出された小兎のような情けない格好で剣を構えた。アスカは自分の大きな声がシンジをより一層萎縮させているような気がして溜息をついた。
 先程も全力でぶつかったわけでもないのに、シンジはアスカの剣圧に耐えられずに吹き飛んで地面にはいつくばってしまった。
 最近のシンジは明らかに精彩を欠いている。純粋な気の最大量だけで言えば、シンジはアスカはおろかミサトやシャルロットを凌ぐ域まで達しているのだが、今のシンジは別に訓練を積んだ人間にさえもたやすく倒されてしまう気弱な少年だった。

 「仕方ないわね。少し休憩にしましょ」

 カタカタ震えながら素人以下の構えをとっているシンジを見たアスカは、少し肩を落として歩き出すと訓練用の剣を放り投げ、隅に置いて有ったタオルと飲み物をとると、大きく息を吐き出しながら座り込んだ。
 昼食の時間を削ってまで訓練につきあっているのにシンジが上達する兆しはほとんどない。上達とは剣の腕ではない。気構えにおいてだ。サキエル戦に始まり、シンジも相当な修羅場をくぐっているはずなのに。

 「ほら飲みなさいよ」

 疲れ果てた重い足取りでアスカの横に座り込んだシンジの目の前に、冷たい水に柑橘系の果汁を加えたボトルが突き出される。生気のない目つきをしたシンジは、奴隷が主人のおこぼれをもらうような手つきでそれを受け取った。

 「ねぇ、アスカ・・・・」

 「何?」

 「ネルフから出ようよ・・・・」

 多少荒っぽく答えたアスカの耳にシンジのかぼそい声が響く。アスカは驚かなかった。シャルロットからシンジがそういうことを言い出すのではないか、という忠告を受けていたし、シンジの性格を最も熟知していたからだ。最近のオドオドしたシンジならいつかはこんなことを言い出すのではないかと思っていた。

 「どうして?」

 「どうしてって・・・・。こんなとこにいたらいつ死ぬか分からないよ!相模の街の時も浅間山の時だっていっぱい人が死んだじゃないか!とにかく危険だよ!!」

 「どこにいたって同じことよ。アタシ達はEVAの適格者なんだから」

 「で、でもネルフにいなければ使徒と戦うこともないんだよ!!ねぇ、アスカ!僕と一緒にここから出ようよ。アスカ一人くらいなら僕が守るからさ!ね、そうしようよ!!」

 「食べ物はどうするの?住む場所は?」

 「そ、そんなのどうにかなるよ!ここから出てしまえばどうにでもなるよ!!」

 「じゃあ右手のものはどうするの?」

 まるで想定問答集でもあったかのように冷静に答えたアスカは、視線を落としてシンジの右手首と一体化している紫色の腕輪を凝視した。腕輪に埋め込まれた蒼い宝玉は興奮する持ち主とは対照的に静かな光をたたえている。

 「こ、こんなのすぐに取れるよっ!!!」

 シンジは半狂乱になって腕輪に左手をかけ、引きちぎるかのような行動をとった。腕輪のひりに指をかけ、爪が剥がれるのではないかと思うくらいに力一杯引っ張る。しかし深海のような光を保ったEVA01は、持ち主の意志とは裏腹に離れようとはしない。

 「どうして何だよ!どうしてこんなものが僕の腕にくっついてるんだよ!!僕はこんなものいらないのにっ!!!」

 鼻水を垂らして臆面もなく泣きわめいたシンジは、どうしても離れない腕輪を見つめて激しい嗚咽を漏らすと力つきたように座り込んだ。

 「僕はただの中学生なんだよ・・・・。この前まで普通に学校に行って、テストの心配をして、部活に行って・・・・。それがいきなり戦争ばっかりやってるこの世界に連れてこられたと思ったら、無理矢理剣を持たされて、アスカを探すためだけにネルフに来たのにいつの間にか、戦争行って、化け物を殺して、訓練で苦しい思いをして・・・・、どうしてなんだよ!!!」

 アスカは心の闇を吐露したシンジをじっと見ていた。何も言うことができない。言うべき言葉が見つからない。ただそばにいて見ていることしかできなかった。だがアスカは何が有ろうとシンジのそばにいることだけは心に決めた。

 「僕は怖いんだ・・・・」

 「平気な顔で戦いに臨むみんなが、あんなに強い力を持つ使徒が、そんな使徒ですら倒してしまうような自分が・・・・」


 「・・・・僕は怖いんだ・・・・」


 アスカは涙を堪えていた。
 胸の奥からあふれ出てくる思いを口の中でかみ殺し、頬を強ばらせて次から次へと落ちてくるような涙をせき止めようとする。かつて母親が死んだときアスカは誓った。もう泣かないと。今はその誓いは頭の中になかったが、とにかく泣いてはいけないような気がした

 「シンジ・・・・。アタシは何もできないかもしれない。でもこれだけは覚えておいてね、世界中の人間全員がシンジの敵になったとしてもアタシだけは絶対、絶対にシンジの味方だから・・・・。忘れないでね」

 シンジは床に小さな水たまりを作りながら慈母のようなアスカの言葉を聞いていた。それは激しい嗚咽と鼻をすする音でとぎれとぎれに耳に入ってきたが、心の奥底からにじみ出てくるようなアスカの心だけはしっかりとシンジに染み込んできた。


 ガチャ


 シンジの鳴き声が小さくなりはじめた頃、鍛錬場の扉が開く。さほど大きい音ではないのだが、扉の金具が回転する音は妙に大きく響いた。
 コツコツとした靴音を規則的に立てて入ってきた空色の髪の少女、綾波レイは、うずくまるシンジに寄り添うように側に立っているアスカを軽く一瞥すると更に歩みを進めた。
 ようやく涙が止まり視界がにじまなくなっていたシンジの目に、ほっそりとした足が映る。白い短衣から伸びている白い足と深い藍色の靴は不思議とシンジの心を落ち着かせる。シンジはしばらくレイの足下を見続けた後、ゆっくりと顔を上げた。

 「これは?・・・・」

 かすれた声でシンジが聞く。
 目の前には白銀の鞘があった。装飾はあまりないが洗練された美しさを放つそれがなんであるか、シンジは即座に分かった。なぜ、今自分の目の前にあるのかは全く分からなかったが。

 「どうして綾波がこれを?・・・・」

 「あなたに渡せって・・・・」

 レイは少しぎこちない調子で答えた。実際にゲンシュウにそう言われたわけではない。しかし鞘を手渡された時に老将はそう語りかけてきたような気がした。

 「先生が?・・・・」

 シンジは右手で涙を拭った後ようやく立ち上がった。横隔膜の振動で微かに震えている手で目の前に突き出された鞘を掴む。
 極光の剣の鞘に触れた刹那、シンジの目にまだ残っていた涙は凍り付いた。鞘はぞっとするほど冷たくなっていて、今までこれを持っていたレイの手が凍傷にかかっていないことが不思議に思えるくらいだ。
 永久凍土の冷たさとともに悪寒がシンジの全身に流れ込んでくる。まるで40度の熱を出している病人のようにシンジの身体が震え出す。何が何だかわからないが、とにかく悪い予感がシンジの全神経を駆けめぐる。

 「シンジ!どうしたの?何があったの?!」

 真っ青になったシンジにただならぬ気配を感じたアスカは、シンジの肩を包み込むように抱え込んだ後、鋭い視線をレイに向ける。

 「ちょっとアンタ!シンジに何をしたの?!」

 「違うんだ!アスカ!!」

 アスカの腕の中で赤子のように震えていたシンジは、冷たさと悪寒の後に敢然と死に立ち向かう老人の姿を見た。

 「・・・・先生が、危ない・・・・」

 シンジはそう呟くとアスカの手を振りきって走り出した。震えはすでに止まっている。焦げ茶色の瞳にはまだ涙が少しだけ残っていたが、それを感じさせない強い光が眼に宿っていた。
 後ろから追いかけるアスカにはシンジの瞳が強さを取り戻したことが見えない。だが自分の目の前を疾走する幼なじみの右手に埋め込まれた宝玉が、強い光を放っていることだけは確認できた。




 ゲンシュウは人知れずネルフ本部を出た後、静かな足取りでネオトウキョウの西側にある森の中に足を踏み入れていた。
 浅間山決戦及び力天使ゼルエル襲来の際、避難した住人はまだ完全には戻ってきていない。人気のない道を通り過たゲンシュウは一度だけネルフ本部ビルを振り返って、鬱蒼とした木々の間に入っていった。
 木の枝をかき分けながら獣道のような細い道を進むこと10分余り、ゲンシュウの目の前には少し開けた野原が広がっている。傍らにはわき水が溢れる清涼な泉があり、恋人とピクニックにでも来たい場所であった。
 だがそこで待ち受けていたのは恋人とは対極にあるような人物であった。
 気配でゲンシュウを認めたその男は手を腰の前で交差させると剣を抜く。両手に握られた漆黒の双剣・暗黒を統べると言われるEVA05。剣を構えた長身の男は切れ長の鋭い目を開いてゲンシュウを睨み付ける。

 ゲンシュウも無言で剣を構える。

 一見ダラリと剣を垂らした無防備に見える構えであるが、見るべき者が見ればそれが天王流・無の位であることが分かるであろう。すなわち、ゲンシュウの不退転の決意を示す構えである。
 二人の剣士は無言のまま間合いを詰めた。両者の間に交わされる言葉がもはやないことを二人とも良く知っていた。




 「魔力形成パターン青!使徒です!!」

 悲鳴にも似た伊吹マヤの声が本部発令所に響きわたる。
 その場に居わせたネルフ職員全員の顔が即座に緊張の色に包まれる。強ばった表情を隠しきれない職員の中で唯一冷静さを保っていた赤木リツコは、マヤの前にある感知装置の前に歩み寄るとコンソールにしなやかな指を滑らせ更なる探査を開始した。


 ウウゥゥッーーーーー!!!


 使徒来週を告げるサイレンがネオトウキョウを包み込む。雲一つない晴天に囲まれたのどかな都市は、瞬時にして殺伐とした戦闘の地へと早変わりした。

 「状況報告っ!!」

 サイレンが成ってからほどなく、葛城ミサトは発令所に来るなり鋭い声を飛ばした。普段はグータラな彼女だが、やはりミサトがいると発令所全体の雰囲気が引き締まる。

 「西側D−12地点に使徒出現!魔力パターンから恐怖天使ショウ=イロウルの可能性大!現在目標はD−12にとどまっています」

 「動きがない?どういうこと?」

 「使徒と衝突している力があるわ。EVA反応も魔力反応もないけど・・・・。おそらくこれは・・・・」

 マヤの報告を補足するリツコ。
 短い説明であったがミサトは即座に全容を理解した。現在ネルフにいる人間の中で一時でもショウ=イロウルを止められるのは、適格者であるシンジ・アスカ・レイ・カオルか聖剣士シャルロット、又は自分かリツコ。いずれにしても選択肢はそう多くない。
 EVA反応がないということは適格者ではなく、魔力反応がないということは魔法剣士であるシャルロットである可能性も低い。
 ミサトがそこまで思考を進めた時、特務機関ネルフ司令・碇ゲンドウが冬月コウゾウをともない発令所に入ってきた。

 「碇司令!D−12ポイントに使徒確認。目標はは恐怖天使ショウ=イロウルと思われます。現在六分儀ゲンシュウ閣下が応戦している模様!」

 「たった今、目標に向かっているEVA反応を2つ捕捉しました。これは01と02!碇シンジ、惣流アスカと思われます」

 ゲンドウが入室した途端、ミサトは敬礼を施しながら状況説明をした。その直後感知装置を食い入るように見ていたリツコが即座にミサトの言葉を継ぐ。それを聞いたミサトは表情をしかめる。ショウ=イロウルが陽動であった場合、シンジとアスカの勝手な行動は 致命傷と成りかねない。

 「葛城大尉は剣士部隊を率いて出撃。先行した者とともにD−12の使徒殲滅を優先。綾波・渚、両適格者及び魔法部隊は本部にて待機。命令を待て」

 ゲンドウの判断はミサトのそれと合致した。
 低く重く、そして感情のこもっていないいつもの声でそう司令を出したネルフの司令官は、眼鏡の位置を右手の中指で修正するとおもむろにデスクに座った。
 ミサトは鋼鉄の彫像のように身動き一つしないゲンドウに敬礼をするとキッとした動きで身を翻す。散策でもするかのように背筋を伸ばし腕を後ろで組んだ副司令・冬月コウゾウは発令所を駆け出していくミサトと司令席に座ったままのゲンドウを交互に眺めた後、深く息を付いた。
 おそらくこの世界で最も歴史の裏側を知る人間の一人である冬月には、些細な出来事であっても考えさせられることが多くあった。




 森の中に佇む泉は清冽な水をたたえていた。大地の底からわき出る水によって作られたその泉は、クリスタルのように透明である。
 だが清涼な水面に移っている光景は水の質とは無縁であった。金属を切り裂くような剣音で波紋ができた水面には破壊的な風景だけが映し出されていた。

 「っく・・・・」

 ショウの連続攻撃がゲンシュウに襲いかかる。
 ゲンシュウが身につけている防具は強力な結界を自動的に展開しているのだが、ショウの剣は紙でも切り裂くかのようにやすやすとゲンシュウに肉薄した。
 ゲンシュウは劣勢に立たされていた。元々分のある戦いではない。ショウのEVA05から繰り出される漆黒の刃はゲンシュウを切り刻むことができるが、極光の剣では使徒の唯一の弱点であるコアを傷つけることはできない。
 それでもゲンシュウの卓越した技をもってすれば手足を切り落として動きを封じることはできる。だが、ゲンシュウはコアを傷つける以前の単純な剣の腕の差で窮地に陥っていた。
 それは十対九、いや百対九十九もないほど微妙な差であった。
 しかしゲンシュウは傑出した剣士であるがために、ショウの力量が自分を上回っていることが分かった。剣速・剣圧ともにショウが僅かではあるが上回っている。
 ゲンシュウは経験の差でそれを凌いでいるにすぎない。ショウに少しでも勝利の天秤が傾けばゲンシュウの首はいつ胴体と離れてもおかしくはなかった。
 ショウが強くなったせいもあるが、二人の差を演出しているのはゲンシュウの衰えである。心の力が現実化されるジオフロント世界においては、精神力が強い人間であれば20代の体力を50歳前後まで維持できる。人並みはずれた精神力を持つゲンシュウは80歳になっても自らの衰えを自覚することはなかった。
 彼が自らの身体の衰えを実感するようになったのは、10年ほど前に一線を退いてからである。僅かではあるが肉体がイメージ通りに動かなくなる。頭で分かっていても身体が付いてこない。稽古の後、吐く息が荒くなる。
 ゲンシュウは内心苦笑いしながらそのことを受け止めていた。むしろ100歳を越えてまでここまで肉体を維持できることは希有なことであった。


 シュワッ


 黒い刃がゲンシュウを襲う。
 2本の刀をまるで別々の生き物のように自在に操るショウはジリジリとゲンシュウを追いつめていた。ショウは大技を繰り出すことなく剣を振るい続ける。大技は攻撃力はあるが、同時に隙を作る。
 同門同士で互いの技を知り尽くしている以上、下手な技もフェイントも通用しない。ショウは百手詰みの詰め将棋をするかのようにゆっくりと、だが着実に勝利に近づいていた。
 一方のゲンシュウは内心焦りの色を隠せない。
 間断なく繰り出されてくるショウの剣を受け止めるのが精一杯だ。ショウが大技に入れば察知能力と経験に優れている分、隙をつくこともできるが、矢継ぎ早に攻撃を繰り返されては隙をつくこともできない。
 しかもスタミナという点においては、ショウのそれが無限であることに対してゲンシュウの体力はとみに衰えを見せ始めている。ゲンシュウは早めに勝負に出なければならなかった。
 この時、時間をかせぐということはゲンシュウの頭の中にはない。時間が経てば無能とはほど遠いネルフがショウの存在を察知して動き出す。シンジ・アスカ・ミサトといった加勢が加わればショウが不利なことは言うまでもない。
 だが、ゲンシュウは自分の手で決着を付けなければならぬと決意していた。加持とシャルロットの報告、様々な事実からの推察により、ゲンシュウはショウ=イロウルの真実をを見抜いていた。だからこそこれだけは自分の手で決着を付けなければならないと堅く心に決めていた。


 「はあっ!!」


 ゲンシュウは気合い以外の何かを含んだ声で吼えた。
 ショウの右からの袈裟斬りを紙一重でかわすと捨て身に近い打ち込みで身体をぶつける。それまで巧みに受けに回っていたゲンシュウの突然の猛撃に虚を突かれたショウは、咄嗟に剣を交差させて強烈な一撃を受けると後方に跳んだ。
 ショウを退けたゲンシュウの気が急激に高まる。太陽でも目をつぶるようなまばゆいオーラを燃え上がらせたゲンシュウの姿をショウは一度だけ見たことがある。あのときはショウの完敗であった。首を切り落とされ一度は無惨に地に沈んだ。

 天王流・四龍技の一つ、幻龍陣

 これから繰り出されるであろう技はこれしかない。
 しかしショウは知っていた。幻龍陣を出す時、ゲンシュウに僅かだが隙ができることを。それは肉体の衰えがもたらしたものなのかもしれない。全盛期のゲンシュウであったら、全くよどみのない動作で幻龍陣を繰り出すことができたのかもしれない。
 だが、以前に一度だけ見た時には技に入る際、ゲンシュウが無防備になる瞬間が一瞬だけあった。それは戦いを刻む砂時計の砂粒一つくらいの時間でしかない。それでもショウにとってはその砂粒一つはダイヤモンドのように貴重であった。

 ゲンシュウの気が最大限に高まり白昼を焦がした刹那、ショウは消えた。

 ダイヤモンドの砂粒が、なだらかなガラスのスロープを滑り降りて下に積もった砂に埋もれるまでの僅かな時を目がけて。
 繰り出す技は天王流最速の技、こちらも四龍技の一つ覇龍閃。浅間山でミサトがバルバロイの手練れを葬り去った技だ。しかも両の手から同時に放たれるショウのオリジナルである。

 森の泉には新たな波紋が生まれた。二人の剣士の怒号によって。


 

「幻龍陣!」「双・覇龍閃!」





 シンジは無我夢中に疾走していた。不思議なことに一度も迷わなかった。自分が行くべき場所は左手に握った白銀の鞘が教えてくれた。
 不安と恐怖と必死さがこもった瞳はただ前方のみを眺めている。人間の視界は通常180度弱、走っている時などはもっと狭まるが、今のシンジの視界は0度に近かったのかもしれない。
 森の中に入ってもはかなげに存在する小道は無視していた。目標に向かって一直線、途中にある木々の枝が服に引っかかるが気にもとめない。服の肩口が破れ、手足に切り傷を無数に作りながらもシンジは走り続けた。

 「間に合ってくれっ!」

 不安な予感は加速度的に膨らんでいく。絶壁の縁に立たされた老剣士が巨大な漆黒の闇に飲み込まれそうになるようなイメージは、不安を打ち消そうとする思考とは逆に膨張を続けた。
 シンジは走る速度を限界まで上げた。
 今までも精一杯のスピードで足を動かし続けていたのだが、それでも上げようとした。今の彼にできることはそれしかなかったから。


 「ったく!普段はトロトロしてるのにどうしてこんなに速いのかしらっ!」

 シンジを追いかけて鍛錬場を出たアスカだが、すぐに先行する幼なじみの背中を見失っていた。何しろシンジときたら5階の窓から飛び降りると何事もなかったように走り去ってしまったのだ。
 アスカは窓枠から身を乗り出し、駆けていくシンジを半ばあきれて見た後少し迷った。エレベーターでは遅すぎる、でも飛び降りればただではすまない。一瞬の戸惑いの後、アスカは覚え立ての下位飛行呪文で降りることにした。落下を制御するだけの呪文だが、エレベーターで降りるよりは速いであろう。
 ゆっくりと地表に向かう間、アスカは焦れったくてしょうがなかった。身体が2階の窓と同じ高さになった時点で魔法を解いてしまったくらいだ。
 足と大地の衝突が骨に響く。
 しかしアスカは気にもとめずに駆け出した。
 行き先はなんとなく分かる。ただしこれはゲンシュウの居場所を探り当てているのではなく、シンジの居場所が直感的に分かるためであったが。この時アスカはそのことには全く気づかなかった。




 シンジの視界が開けてきた。
 森の中にある小高い丘の頂が見える。ここまでくると凄まじい気のぶつかり合いが肌で感じられる。シンジは自分が来た方向が間違ってなかったことに安堵したが、不安は安堵する気持ちを遙かに上回っていた。

 「あともう少しだっ!」

 悪い予感をかみ殺し、荒くなる息を整えながらシンジは丘の最も高いところにたどり着いた。鬱蒼と生え茂る木々に覆い隠されていた太陽が顔を出す。
 まぶしいばかりの日差しがシンジの瞳に焼き付いてくる。もつれ合う片方の剣士から吹き出る真紅の鮮血をともなって。


 ドゥバァッ!!


 切り落とされた肩口はどす黒く変色しはじめている。噴水のように飛び散った血は男の足下に赤い泉を作りだし、地表を染めている。隻腕となった剣士は衝突の余波で吹き飛んで大地にはいつくばっていた。
 苦痛に顔を歪めながら節くれ立った手を傷口に当てる。男は魔法の手を持っているのか、あふれ出ていた血は止まった。だが男の顔は土色に変わっていた。瀕死の重傷を負ったことは間違いない。


 「せ、先生っ!!」


 シンジの絶叫が木々の間を行き交う風と重なった。

 ゲンシュウの幻龍陣とショウの双・覇龍閃

 一千万分の一秒くらいの差で速かったのはショウの方だった。
 振りかぶった漆黒の双剣をゲンシュウの両肩口目がけて車輪のように振り下ろす。
 自分の目の前にショウの黒い細剣が迫ってきた時、ゲンシュウは己の敗北を知った。そのまま斬り殺されてやることも一瞬脳裏をかすめたが、長年積み重ねてきた戦士の本能は思考を凌駕した。
 反射的に身を傾けたゲンシュウは急所をはずすことに成功した。一瞬の内に翔んでくる天王流最速の技、覇龍閃に反応すること自体奇跡に近いことであるが、老剣士が鍛えてきた肉体は奇跡を実現して見せた。
 ただし完全にかわすことができるわけがない。ゲンシュウの右腕は極光の剣を握ったまま持ち主から離れていった。宙ぶらりんになった腕は無惨にもショウの足下に落ち、ゲンシュウ自身は気の衝突の余波で後方に吹き飛ばされた。

 (嘘だ!あの先生が負けるわけがない!僕は幻覚を見ているんだ!)

 シンジは堅く目をつぶると頭を左右に振った。これは幻だ、剣聖と謳われたゲンシュウが腕を切り落とされて負けるなどということはあり得ないんだ、と言い聞かせてから再び目を開ける。だが眼前に広がる惨状に変化はなかった。

 「せ、先生!」

 シンジは操り糸の切れたマリオネットのような異様な仕草でゲンシュウに駆け寄った。自分ではしっかりと大地を踏みしめて全速力で走っているつもりなのだが、肉体は言うことを聞かなかった。

 「大丈夫ですか?しっかりしてください、先生!」

 「シ、シンジか?・・・・」

 薄目を開いたゲンシュウがただ泣きわめいているシンジに弱々しい声をかける。背後にショウがいるにも関わらず、シンジはゲンシュウに身体にすがりついた。
 一方のショウは吹き飛んだゲンシュウやおたおたしているだけのシンジには目もくれなかった。ショウは手にした剣と同じ黒く鋭い瞳を大地に転がるゲンシュウの右腕に集中させている。正確に言えば右手に握られた光り輝く剣にだ。
 右手に持ったEVA05の片割れを惜しげもなく投げ捨てたショウは、硬直しつつあるゲンシュウの手から極光の剣を奪い取ると恍惚とした眼差しを向ける。陽光を反射して一層輝く剣を見つめたショウは勝ち誇ったように高笑いをした。

 「くっくっく!ついに手に入れたぞ!剣聖の証を、極光の剣を!」


 「おじいちゃん!シンジ!」

 アスカが惨劇の場へ飛び込んできたのは、ショウの高笑いが最高潮に達したときである。隻腕になって大地に身を埋めているゲンシュウと敵にに背を向けたままのシンジの姿に愕然となったアスカだが、すばやい動きでシンジとショウの間に割ってはいると真紅の長剣を抜き放つ。
 ショウは自分に向けられたアスカの闘気に不機嫌そうな視線を見せつけると剣を握りなおしている。射すくめるような眼光を見た瞬間、アスカは自分の手が震えているのがわかった。

 「敵の強さが分かるのも実力の内よ。かなわないと思ったら迷わず逃げなさい。退くべき時をしらない者は、狩人の獲物にしかならないわ」

 シャルロットの言葉が身にしみる。
 アスカは目の前にいるこの長身の男が自分よりも遙かに強いことがわかった。アスカも急速に強くなっている。だがゲンシュウを倒し、今や天王流最強の剣士となったショウをまともに相手にするにはまだ4,5年の歳月が必要であろう。
 それでも逃げるわけにはいかなかった。後ろには泣くことしかできなくなったシンジと傷ついたままのゲンシュウがいるのだ。いずれ救援が駆けつけてくる、それまではなんとしても持ちこたえなければ。そう心の中で言い切ったアスカは慎重に構えをとった。

 「下がっていなさい、アスカ。奴の相手は私がするわ」

 震えながらも敢然とショウに立ち向かおうとしたアスカを止めた人物がいる。いつの間に来ていたのか、それとも初めからいたのか、音もなく現れた金髪の剣士は優美な仕草でアスカの肩に手を掛けると、ごく自然な足取りで前に出た。

 「弟の仇を取らせてもらうわ」

 華やかな香水の薫りを漂わせながら剣を抜いた女剣士、シャルロット・フェリアス・ド・ヴィコントは気負った様子もなく物騒な言葉を口にした。
 まるで熟睡中にたたき起こされたかのように不機嫌に目を細めたショウは、シャルロットが剣先を突きつけてくるのを見ると構えとった。右手には極光の剣が、左手には漆黒の双剣EVA05の片方が握られている。
 ショウは秀麗で切れ長の眉を残忍に歪めると同時に突進する。
 陽光を反射しながら大気を切り裂いた極光の剣は、衝突の轟音を残してシャルロットの持つ聖剣ラ・ロッシュによって受け止められた。間髪入れずに放たれたもう片方の刃をかがんでかわしたシャルロットは、優美な金髪を揺らしながら低い回し蹴りを放つ。
 蹴りを膝に直撃させて相手のバランスを崩した後、かがみ込ませた身体を一気に上昇させ、喉元目がけて刃をたてる。流れるようなシャルロットの連携は、上体をそらして避けたショウほ黒髪を2,3本宙に舞わせた。
 後方に跳んだショウは不愉快そうに歯をギリギリと噛みしめると口元を歪める。先程からショウの顔はどんどん歪んでいくように見える。


 キンッ!


 再び火花が散る。両者の持つ剣に秘められた力は、衝突の瞬間に奔流する光の束を作り出していた。
 激烈な鍔ぜり合いは互角であった。女性にしてはかなりの長身であるシャルロットだが、実際の所ショウの鼻くらいまでしか身長はない。体格では遙かに劣るシャルロットだが力は拮抗していた。
 両者の足が地面にめり込んでいく。下半身から立ち上げた力を鍔元に集中させた二人の剣が少しずつ上がっていく。
 腰の辺りから胸へ、胸から肩へ。大地の奥に眠るマグマが火山の頂から噴出するように気を飛び散らせたショウとシャルロットは、剣をすり上げるようにして同時に後方に跳ぶ。そして着地と同時に再び突進し、痛烈な斬撃の嵐をからした。

 「す、すごい・・・・」

 アスカは全く動くことができなかった。
 隙あらばシャルロットの加勢にはいろうとしているのだが、二人の卓越した剣士の凄まじい攻防には付け入る間がない。出ていってもシャルロットの足を引っ張るだけになりかねないと思ったアスカは、歯がみをしながら激闘を見守っていた。
 それも大きな進歩とも言える。以前のアスカなら向こう見ずに出ていって味方を窮地に陥れてしまったかもしれない。相手と自分の力量を正確に把握できるということは一種の強さである。ただし後からシャルロットがそう言ってもアスカには何のなぐさめにもならなかったが。


 「ダークミスト!」


 シャルロットの美麗な唇から発せられた魔法語はショウを黒い霧で包み込んだ。切り羽ショウをすっぽりと覆い隠したが、アスカがまばたきする間もなく四散させられる。だが金髪の剣士にとってはそれは折り込み済みの事態であった。

 ピカッ!

 手にした剣で霧を退かせたショウの目の前には太陽のごとく輝く光球が投げつけられる。まぶしさに目を細めながらそれをかわしたショウだが、シャルロットの攻撃はそれでおわりではなかった。
 闇から光へ、そして最後は頭上からの斬撃。魔法との連携を得意とする覇流ならではの技だった。
 常人ならとっくに斬り殺されている連続攻撃だがショウは双剣をクロスさせてシャルロットの一撃を食い止める。両者の衝突は再び雷の放電状態を作りだし、辺りを嵐の渦に放り込んだ。
 再び対峙するショウとシャルロット。だがにらみ合いは一瞬のことであり、更なる斬撃の応酬が繰り返された。

 「シャルロットってこんなに強かったんだ・・・・」

 アスカは驚嘆の声を上げていた。普段から稽古をつけてもらっているだけにその端倪ならざる実力は十分に知っていたつもりだったが、それは彼女の奥深い力の一端にすぎなかった。
 ゲンシュウの片腕を切り落としジオフロント世界最高の剣士となったはずのショウを相手に互角以上の戦いを展開している。西方最強とも謳われるその実力に偽りはなかった。
 むしろ戦いを優位に運んでいるのはシャルロットの方であった。両手に違う長さ、重さの剣をもっているショウはいつもと勝手が違うのか思うような動きが取れていない。しかしそれをさしひいても、シャルロットの途切れること無い連続攻撃は留まることを知らなかった。


 「先生!まだ起きあがっては駄目ですよ!大怪我しているんですよ!」

 「気にするな、腕が一本飛んだだけじゃ。大した傷ではない」

 ゲンシュウは血の気の引いた顔を上げようとしていた。シンジはその背中を支えながらまだ泣きわめいている。ショウとシャルロットの激闘に半ば見とれていたアスカだが、弱々しいゲンシュウの言葉は妙に耳に残った。
 前方の戦いから注意を逸らさないようにしながらチラリとゲンシュウの方を見やる。ようやく身を起こしたゲンシュウの表情には、片腕を失い無様に倒れ込んでもまだ威厳が残されていた。

 「大丈夫なの?!おじいちゃん」

 「それより早く何とかするのじゃ。ショウがイロウルを食い止めてる内に決着をつけねば、大惨事になる」

 シンジとアスカはゲンシュウが何をいっているのかよく分からなかった。ショウがイロウルを食い止める?ショウとイロウルは一体だと思っていた二人にとって、その発言は青天の霹靂であった。

 「ど、どういうことなの?!」

 「今説明している暇はない。うっ・・・・」

 半身を起こしたゲンシュウだが傷は相当深いようだ。止血は済んでいるようだが、ダメージは大きい。未だに歩くことすらままならない状態であった。


 「グルルルル・・・・・」


 地獄の亡者の叫びのような昏い音が響く。低く曇ったうなり声は、ゲンシュウの思わぬ言葉に動揺しているシンジとアスカでさえ振り向いてしまうくらい負の存在感があるものだった。

 「な、何なのよ?!」

 訳が分からないまま呟いたアスカだが、ショウが今までにない変容を見せていることだけは理解できた。飢えた狼のようにシャルロットにうちかかるショウの姿は、華麗に双刀を操っている時とは大違いだ。
 シャルロットの剣を受けて全身に傷を負っているショウは、顔を血に染め、黒い障気を吐き出し、地獄の餓鬼のような姿になっていた。

 「いかん!EVA05は両方揃わんとその力を発揮せん!このままでは・・・・」

 変わりゆくショウを見たゲンシュウは苦痛に顔を歪めながら苦しげな声を履く。表情が切羽詰まっているのは腕の痛みのせいだけではないようだ。

 「シンジ!霊龍断じゃ!霊龍断でショウを、いやイロウルを斬れ!」

 「え、霊龍断って・・・・。そ、そんなのできるわけないですよ!四龍技の一つじゃないですか!ぼ、僕にはできっこないよ!!」

 「いいからやれ!このままではショウの身体からイロウルが吹き出てネオトウキョウにいる人間全てがイロウルに侵されてしまうかもしれん。そうなってからでは遅いのだ」

 「で、でも僕には・・・・」

 シンジは母親から見放された子猫のようにうずくまってしまった。天王流四龍技の一つ霊龍断。確かに見たことはある。やり方も教わった。だが今まで一度たりとも練習したことはなかった。そんな大それた技が自分にできるわけないと思いこんでいたせいである。膝を抱え込んだシンジは肩を振るわせながら視線を下に向けた。


 「この愚か者がっ!!」


 瀕死の重傷を負っているとは思えないゲンシュウの一喝が響きわたる。胸ぐらを捕まれ無理矢理立たされたシンジの目の前には、悲壮なまでの決意を瞳に宿した老剣聖の姿があった。

 「自分一人で戦っていると思うな!自分一人が苦しんでいると思うな!アスカもミサトもショウも、そしておまえの父親も人には言えない思いを抱えて戦っておる。よいかシンジ、おまえは一人ではない。何度も言っておるであろう。術のものに感謝し、全てのものから力を借りろ。大丈夫じゃ。おまえならきっとできる」

 そう言ってシンジの肩に手を置いたゲンシュウは、手を回してシンジをショウの方向に向かせる。そしてシンジの背中をじっとみつめると左右の肩胛骨のちょうど中間あたりを親指で押した。

 「せ、先生!目がっ」

 「騒ぐな、シンジ。二,三分で元に戻る。霊龍断は邪悪な魂のみを斬る技。なまじ視覚があっては逆に惑わされてしまう。よいか、シンジ。ゆっくりろ錬気した後、気を周囲に広がるように展開させるのじゃ。そして邪なる存在を感知したら迷わず剣を振り下ろせ。イロウルのそばにいるであろうシャルロットには当たらんから心配するな。霊龍断は暗黒の精神のみを断つ」

 突然視界が真っ暗になりあわてふためいたシンジだが、ゲンシュウに言われた通りに気を錬りはじめる。大きく吸い込んだ息を下腹部の辺り、丹田に落とすとゆっきりと力を全身に行き渡らせる。二度それを繰り返した後、手首を返して紫の腕輪に意志を込める。
 右手に埋め込まれたEVA01はシンジの純粋なる意志を受け取ると宝玉を輝かせる。一瞬光が飛び散らせたEVAは大剣の形状に変化し、シンジの手に収まった。
 手に少しだけ重みを感じたシンジは気を周囲に展開させていく。風に乗せるように、大地に染みわたるように、空を覆い尽くすように。

 (後ろにある厳しくて温かくて弱々しげな気、これはゲンシュウ先生だ。横にある明るくて元気がよくてどこか心配げな気、これはアスカ。前方で激しく燃えている一際大きく気高いような気、これは多分シャルロットさん。その隣でもみ合うようになっている・・・・。ん?何か変だな。二つの気が絡み合うような存在。白と黒が拮抗しているような・・・・、でも白が飲み込まれる寸前だ。これが・・・・)

 シンジはゆっくりと剣を頭上に掲げた。
 もう一度錬気をして剣に全身の力を集中させていく。筋肉を強ばらせているわけではない。余計な力を抜きながら、抜いた力、周囲から集まってくる力を剣に集めていく。
 背後のゲンシュウの気が、横にいるアスカの気が、周囲に集う精霊の気が流れ込んでくるのが分かる。不思議と緊張はなかった。恐怖も感じない。シンジは剣に集まる気が最高潮に達した時、EVA01を真一文字に振り下ろした。


 

「霊・龍・断」


 視界を封じられたシンジには捕らえたかどうか自信がなかった。だがシンジが繰り出した光の束はショウに直撃した。蒼白い光球がショウを包み込む。剣を会わせていたシャルロットは、その瞬間後方に跳んで様子を見守る。


 「グアァァッ!!!!」


 魔神の断末魔のような悲鳴が上がる。
 ショウの口から目から耳から、全ての毛穴から漆黒の煙が吹き出す。露出した負の障気は光にサラされ蒸発していく。段々と吹き出る量が少なくなり、ショウが一際黒い煙の塊を口から吐き出した。
 漆黒の塊は必死に抵抗しているようであったが、光球が今までにないくらい蒼白く輝いたかと思うと跡形もなく消えた。
 恐怖天使イロウルの最期であった。光の球の消滅とともに落ちてきたショウは電池が切れた自動人形のように崩れ去った。




 数分後葛城ミサト率いる部隊が現場に到着していた。といってもことは全て終わっていた。ミサトは周囲の再チェックとイロウルの影響について調べるように命令を下していたが、何もできなかった自分に対する当てつけのようにも見える。

 「閣下、遅れて申し訳ございません」

 「いやいや、おまえさんはよくやっているよ」

 「今、救護班を呼びます」

 隻腕になったゲンシュウを沈痛な面もちで見たミサトは、目を背けるように救護班の方を振り返ろうとする。ゲンシュウは身を翻そうとするミサトの肩を掴んで視線を合わせると静かに頭を横に振った。

 「ワシの細胞は若くはない。シンジやおまえさんみたいに細胞自体に復元能力がなければ治癒呪文も効かんのは分かっているじゃろ?」

 ミサトは悲しみに瞳を染めてゲンシュウの瞳を見返した。ミサトも理解はしていた。しかし利き腕をなくすということは剣士を引退するということである。今まで剣の道に生きてきたゲンシュウが剣士でなくなる姿をミサトは想像できなかった。

 「よく働いてくれた腕じゃった。どこか景色のよい所に埋めてやるとしよう」

 ゲンシュウは白い布に包まれた右腕を懐かしそうに省みた。ミサト言語ファイルにかける言葉はなかった。

 「ミサト、シンジとアスカを連れて先に帰ってくれんか?」

 しばらく風に揺れた後、ゲンシュウは言った。
 イロウルを消滅させたシンジはといえばアスカの膝の上で寝入っている。霊龍断で全ての力を使い果たしてしまったのか、シンジは息も絶え絶えといった具合であった。崩れ落ちる身体をアスカに支えてもらったシンジは、
 「よくやったな、シンジ。今はゆっくり眠れ」
というゲンシュウの一言を聞くと安堵した笑みを浮かべて眠り込んだ。
 今は寄り添うアスカの柔らかな膝を枕にして規則的な寝息を立てている。
 ミサトはショウの方をチラッと見た。ショウの気がまだあることにミサトは気づいている。だが大地に横たわったショウの傍らに立つシャルロットが頷くのを確認したミサトは完璧な敬礼をすると部隊に撤収命令をだした。
 激闘の後には片腕を無くしたゲンシュウと所々に傷を負っているシャルロット、死んだかのように見えるショウだけが残された。激しい戦いであれだけ水面を揺らしていた泉も今は静謐な水をたたえている。


 「大丈夫か?ショウ」

 「・・・・・お、おじいさま・・・・・」

 ゲンシュウに気を送られたショウは薄目を開いた。顔に生気はないが、命に別状はないようだ。

 「・・・・・わ、私は・・・・・」

 「何も言うな。おまえはよくやった」

 「し、しかし多くの人をあやめました。その償いは・・・・・」

 ゲンシュウは静かに首を横に振った。音もなく立ち上がったゲンシュウは重傷を負っているとは思えない足取りで打ち捨てられていた一対の黒い細剣を持ってきた。
 ショウは目をつぶった。ゲンシュウが刃を振り下ろしても身動き一つしないで甘んじて受けようと思っていた。自分はそれだけでは償いきれないことをしてきたのだが、償わないよりはましだろう、そう思った。

 「手にとってみろ」

 だがゲンシュウの行動は違っていた。ショウの傍らに座り込むとまだ力がうまく入らないショウの手にEVA05を握らせる。ショウは半身を起こして側にある気の根元によりかかりながら、剣を握る。


 シュィーーーーーン


 静かな音が鳴った。ショウが柄を握った途端EVA05に埋め込まれた二つの宝玉が輝き出す。今までとは微妙に違う澄んだ黒であった。かつては適格者ではなかったショウなのに、なぜ?

 「どうやらおまえは”導き手”であるらしいの。”導き手”はアスカ一人かと思っていたが複数存在するらしい」

 「わ、私が”導き手”?」

 ショウは訳が分からないといった状態だ。”導き手”の意味は知っているが自分がそうなるとは思っても見なかったことだ。放心したようになったショウは、静かに光をたたえる二つの宝玉をただ眺めていた。

 「あなたは死ぬことは許されないわ。あなたは生きなければならない。アーベルの、私の弟の命にかけても・・・・」

 それまで黙り込んでいたシャルロットが口を開く。ショウは金髪の剣士のアイスブルーの瞳を見つめたまま何も言うことができなかった。やむを得なかったとはいえ、ショウはシャルロットの最愛の弟の首をはねている。もし彼女が斬りかかってきたら黙って殺されるつもりだった
。  だがシャルロットは悲しみの色を瞳にたたえたままだ。ゲンシュウ同様斬りかかるそぶりもみせない。

 「あの日のことについて教えてくれない?」

 表情を強ばらせながらそう呟いただけであった。シャルロットの言葉を受けたショウは身体を起こして姿勢を正すとポツリポツリと話し始めた。

 「あの日、シゼルの封邪の迷宮に新しい部屋が見つかったと報告を受けた俺達は、地底奥深くまで進んでいた。先遣部隊が発見した部屋は祭壇のような巨大な半球型のドームで、中央部には物々しい石棺が安置されていた。石棺の封は簡単に解けた。あっさりすぎるほどにな。悪い予感がした。俺は棺はもうしばらく調べてから開けるように言った。しかしアーベルは聞かなかった。簡単な封しか施されていないのだから大したものではないだろうというのが彼の主張だった。こと遺跡の発掘にかんしては遺跡監察官であるアーベルの方に権限があった」

 「あの子らしいわね・・・・。疑問はすぐにでも明らかにしないと気が済まないから、あの子は・・・・」

 「石棺の中には黒い障気の塊があった。俺はアーベルにすぐに閉めるように叫んだが手遅れだった。石棺の周りにいた人間は闇に侵され凶暴な鬼へと変貌していった。説得を試みたが無駄だった。襲いかかってきたアーベルが素手で俺の剣の片方を握りつぶした時、俺の中の何かが切れた。部下の半分は闇に侵された者たちに八つ裂きにされ、残り半分は俺が首をはねた。イロウルは俺にも侵入してきた。その時はそれがイロウルだとは気づかなかった。だが凄まじい悪寒に襲われた俺は部下を埋葬することもなくその場を逃げ出した。気づいたときには封邪の迷宮の入り口に戻ってきていた。そこで俺は倒れた。気が付いたら3年が経っていた。俺はイロウルになっていた・・・・」

 ショウはうつむいたまま早口で一気に喋った。シャルロットとゲンシュウは身じろぎもせずに聞いていた。事態の裏を知る彼らにとっては予想していたことであった。だがいざ本人の口から真相を聞くと新たな衝撃が二人を襲った。

 「そう・・・・分かったわ・・・・」

 シャルロットは震える声でそれだけ言うと身を翻した。
 いつもは状態をツンとそらし、胸を張って歩く金髪の美女は、うつむきながら歩き出した。金属が刷り合う音がカタカタと鳴る。真紅の鎧はかすかな痙攣を繰り返しながら森の影に消えていった。他人には絶対に弱音をはかない気丈な剣士の肩は悲しみと慟哭で揺れていた。


 「ゼーレが”箱船”の修復をはじめたらしい。ワシの代わりに調べてくれんか?」

 悲しげな金髪が完全に見えなくなってからゲンシュウは落ち着いた声で言った。
 それまでほうけたようにシャルロットが消えていった方向を眺めていたショウは、その声で我に返る。膝を二回ほど崩し、よろめきながら立ち上がったショウは漆黒の双剣を少し凝視したあと鞘に納めると、ゲンシュウの目を見据えながら敬礼をした。

 「そこまで送りますよ。この辺りにはまだネルフの人間がうようよしていますから」

 ショウがふらつく足を無理矢理大地に押しつけて歩き出そうと瞬間、目の前の空間が割れる。場違いなくらい明るい声をだして現れたのは挑発を後ろで縛り無精ひげをはやした陽気な男だった。
 ショウはしばらくの間、硬直した。だが何事もなかったように微笑む男の笑顔は。ショウのためらいを融解させた。二人はかつての戦友である。互いに背中を合わせて窮地をくぐり抜けたこともある。

 「すまないな、”琥珀”の加持リョウジ・・・・」

 「いえいえ別に構いませんよ、”紺碧”の六分儀ショウ・・・・」

 二人の男が交わした言葉はそれだけであった。それで十分であった。加持はゲンシュウの方に軽く会釈をすると目の前の空気を四角形になぞった。ゲンシュウは二人のたくましい背中を見送った後、空を見上げた。
 抜けるような青空だった。天はいつでも変わらぬ青さを保っていた。たとえ地上で何が起ころうとも。




 「で、一体どういうことなのよ?」

 ネルフ本部にある赤木リツコの私室。
 キッチンの脇に設けられたバーカウンターにグラスを押しつけた音が、その言葉の語尾に重なった。リツコは肩をすくめながら左隣に座る親友の顔を眺めた後、右隣に座る金髪の女性の方を見た。
 リツコに視線を向けられたシャルロットだが、全く口を開こうとはしない。ただ黙々とグラスを重ねるだけだ。リビングに来客用のテーブルがあるにも関わらずここで飲んでいるのは、お互いに面と向かって視線を合わせたくないからだろうか?

 (私が喋るしかないみたいね・・・・)

 溜息をつきながら心の中で呟いたリツコは、少し投げやりな言葉を返した。どことなく分からず屋の上司と部下にはさまれた中間管理職のようだ。

 「どういうこととは、具体的に何のこと?抽象的な問いでは答えようがないわ」

 「何がって?!六分儀ショウ=イロウルに関する全てよ!なぜショウはEVAを求めたの?なぜショウは極光の剣に固執したの?イロウルに侵された封邪の迷宮の探索隊はすぐにくたばったのになぜショウだけ平気だったの?なぜイロウルに侵されてから三年も消息不明だったの?」

 「六分儀准将が・・・・」

 酒気まみれのミサトの怒号に辟易したリツコだが、やんわりとショウの呼び方を改めると科学者らしく理路整然と話し出した。

 「六分儀准将がEVA、それも05を求めた理由は、おそらく恐怖天使イロウルを押さえ込むためよ。イロウルは恐怖を司る使徒。それに対抗するには闇を統べるEVA、漆黒の双剣05が最も適していたのは事実だわ。それから極光の剣に固執した理由。これは推測でしかないけれど・・・・」

 「使徒に関することなんてみんあ推測じゃない。いいから話してよ」

 ミサトはかなり荒れていた。それでもショウの惨殺されたミサトの師匠であるスプレイグ大佐のことを口にしないのはまだ自制心がある証拠か?

 (まったく、加持君はどこに行ってしまったのかしら。こういうミサトをなだめるのは私の役割じゃないわ。肝心な時にいないんだから・・・・)

 「極光の剣に固執した理由は、それが六分儀准将の最も強い思いであったからだと思うわ。イロウルとの戦いはおそらく精神的なもの、だからイロウルに完全に取り込まれないようにするには自分の中の最も強い思いにすがらなければならなかった。六分儀准将の場合、剣聖の座と証が最も欲しかったものなのよ。そしてその思いは極大化され先鋭化し、ついには極光の剣を求めることが存在理由にまでなってしまった。ゲンシュウ閣下との戦いの後、それまで押さえていたイロウルに完全に支配されそうになったのは、二つ揃わないと力を発揮しないEVA05の片方を放り出したせいもあるだろうけど、極光の剣を手に入れたことで心に隙ができたせいもあるでしょうね」

 「で、どうしてショウだけイロウルに耐えられたの?」

 「理由は二つ考えられるわ。一つは六分儀准将が類い希なる精神力を持っていたこと。もう一つは彼の中に流れる六分儀の血のせいね」

 「六分儀の血?」

 ミサトにはリツコの言わんとするところが完全には分からなかった。かなり飲んでいるとはいえ、まだ聴覚が麻痺するほど酔ってはいない。だがリツコはそれ以上説明する気がないのか、間を取るためか席を立つとつまみを作りに冷蔵庫の方に歩き出した。

 「六分儀の血、神の血脈よ」

 それまでグラスを傾けることのみに専念していたシャルロットが初めて口を開く。神の血脈という言葉を聞いた瞬間、ミサトはリツコが言いにくそうにしていた理由を理解した。
 神の血脈、古代より受け継がれた神の血を体内に持つ一族。神の血を持つと言われる六分儀、碇、ヴィコントなどの家からは、しばしばEVAの適格者や超常なる力を持った人間が輩出される。
 時が経つにつれ、その血は薄まるのではないかという説もあったが、どうやら神の遺伝子は血によって薄まるものではないらしい。隔世遺伝のような形で脈々と受け継がれていく神のDNAは因果律のバランスにより発露する。
 リツコが言いにくそうにしていた理由は封邪の迷宮で死んだシャルロットの弟も神の血脈の一員であったからだ。神の末裔でありながらイロウルに耐えることができなかったのは何も恥じることではない。何とか体内に封じ込めることができたショウの方がむしろ希有な例と言えた。
 だが人一倍自分とその家に誇りを持っているシャルロットの前で、それを口にすることにためらいがちになるのは無理もないことであった。

 コンッ

 リツコがチーズの盛り合わせをカウンターに置く。モッツァレラ、マリボー、ロックフォール、カマンベール。この日のために用意して置いたかのような色とりどりのチーズは独特のくせのある匂いをはなった。
 三人はまた黙々と飲み始めた。身体に付いた血はシャワーを浴びれば落ちる。心に付いた血を洗い落とすには酒を浴びるように飲むのが一番であった。
 グランの中の氷が注ぎこまれた琥珀色の液体に呼応して鳴る。まるで過ぎし日と時に埋もれた人間達への鎮魂歌のように。


 「あなたは大丈夫なの?」

 夜も白み始め、空が群青色に染まり始めた頃、シャルロットが唐突に言った。三人の中で最も量を飲んでいるが、いかなるアルコールも今日の彼女には酔いをもたらさないようである。
 ピッチの速かったミサトはだいぶ前に沈没し、リビングのソファーで高いびきを立てている。髪をかきあげながらシャルロットの横顔を眺めたリツコは、ミサトのいびきを圧するような短い言葉が何を意味しているのか計りかねていた。

 「01の適格者はイロウルを一撃で葬り去るだけの実力をつけているわ。これならゼーレも補完計画の第一段階の発動を司令してくるわ。第一段階が終われば、第二段階、一度始まればゼーレは歯止めが利かなくなるわ。ゲンドウが時価稼ぎに延期を要請すれば、彼女が来るわよ」

 「覚悟はしています。私は碇司令の意志に従うだけです」

 「そう・・・・」

 シャルロットはそれだけ言うと席を立った。傍らに立てかけていた剣を取ると玄関に向かって歩き出す。一瞬送ろうと思ったリツコっだが、シャルロットの背中はそれを拒否しているような気がして浮かした腰を椅子に下ろした。

 「私にも譲れないものがあるのよ・・・・母さん・・・・」

 自分以外誰もいなくなったカウンターでそう呟いたリツコは、グラスを八分通り満たしていた液体を一気にあおる。口の中には強い刺激と共にスモーキーフレーヴァーが広がった。
 苦みに少し顔をしかめながらグラスを下ろす。殻になったグラスには決然とした色浮かべるリツコの瞳が映っていた。



NEXT
ver.-1.00 1997-09/11 公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは meguru@knight.avexnet.or.jpまで。

 ジオフロント創世記第20話です。とにかく疲れました。書いては消し、読み直しては消すの繰り返しで、今まで書いた中で最も苦労した話です。でも苦心のわりに話にまとまりがないようで困ってしまいます。二つにわけようかと何度も思って両方の題も考えたのですが、結局一つにしました。その方が大家さんも面倒がないようなので。
 大学院試験のため最近めっきり更新が遅れています。八月中に終わらそうと思っていたProject Eも完結してませんし・・・・。でも余計な読書をしているせいもあります。最近遅蒔きながら、直木賞作家・浅田次郎氏の「蒼穹の昴」を読みました。結構はまってしまって関連書籍を読みあさったりしています。
 ジオフロント創世記の裏設定に関するものをそのうちUPさせようと思っています。その内っていつになるか分かりませんけど・・・・。
 それではまた


 MEGURUさんの『ジオフロント創世記』第20話、公開です。
 

 イロウル殲滅。
 ショウ帰還。
   ですね。

 ネルフの面々を苦しめ、
 多大なる損害をもたらしていたイロウルショウ。

 ゲンシュウの片腕と引き替えに。
 

 体を支配されていたとはいえ、
 もたらしてきた破壊・殺害故にわだかまりを持つ人々。
 

 死ではなく、生きて償う・・・
   ・・それでいいと思います。

 ”死んで終わり”ってあんまり好きじゃないんです(^^;
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 試験を控えながらも更新を続けるMEGURUさんにメールで応援を!

 

 

 約50KBの大作です!

 この位の量ですと、
 2つに分割していただいても構いませんよ。

 12KBx4とかになると泣いちゃいますけど(^^;

 「短い1エピソードを細切れにする」
 これだけなんですよ、困まっちゃうのは・・・(^^;


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