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Project E

第一話

「そういう設定になってるわ」



 「じゃ、そういうことで。あと洞木さんお願いね」

 葛城ミサトの朝のホームルームはいつものようにずぼらだった。これはホームルームの最後にミサトが言った言葉ではない。今週の週番である鈴原トウジが、ミサトの入室と共に言った「起立、礼、着席」の直後のセリフである。
 生徒の出欠、プリントの配布、日々の行事の説明、掃除の役割分担など、本来教師がすべきことをミサトはほとんど放棄していた。
 それは現在に限ったことではなく過去においてもそうだった。彼女の担当する2年A組が、かろうじて無法地帯になるのをとどめていたのは、以前は副担任の保健教諭の赤木リツコ、そして今は学級委員長の洞木ヒカリである。
 それもリツコやヒカリがてきぱきとルーティンワークをこなしているのを見ている時はまだましな方で、2日酔いのため机に突っ伏して寝ていたり、あまつさえホームルームに顔を出さないこともしばしばだった。

 「この人本当に先生かしら?」
とヒカリがため息をついていたのさえ、すでに遠い昔のことである。

 今日は珍しくまともに朝のホームルームを終えて職員室に戻ろうとしていたミサトだったが、廊下で不意に立ち止まった。
 「なんか忘れてる気がするのよね・・・。いっけない!林間学校のこと言うの忘れてた!」
人事のようにポンと手をたたくと、ミサトはバツが悪そうに頭に手をやり教室に戻り始めた。




 「なんですって!バカシンジ!」
 惣流アスカ・ラングレーの声帯は今日も全開である。周りにいる人間はアスカの大きな声に対して一瞬身体をこわばらせるが、いつものことなので「またはじまった・」と思うだけである。もちろんそれだけではすまない人物が確実に1人いる。

 「どうですか?相田さん?」

 「まずいね。ランクBだ。いやCかな・・・・・・」

 「それは・・・・。ワイらも避難を始めた方がいいんとちゃう?}

 「そのようですね、鈴原さん・・・」

 そう囁きあうと鈴原トウジと相田ケンスケは荷物をもって机の移動を始めた。

 ランクC

 シンジ&アスカ夫婦喧嘩評論家の相田ケンスケ氏の分類によると、シンジの命に危険有りという状態である。ちなみにランクAはシンジが保健室にかつぎ込まれる可能性有り。ランクBはシンジに入院の危険性有りということになるらしい。
 実はランクDという状態に陥ったことがあるらしいのだが、アスカが見物人を巻き込んで暴れ回り、シンジを含む全員を失神させてしまったので科学的な判定はできないとのことである。

 「ちょっと、何かいいなさいよ!アタシを生命の危機にまで追い込んでおいて一言も謝らないなんてどういうつもりっ!」

 現実に今、生命の危機に追い込まれているのに気づかないは当人は、素直に平謝りしておけばいいものを、愚かにもつい言い返してしまった。

 「そ、そんな生命の危機だなんて大げさだよ。ただが弁当のことじゃないか!」

 「たかが?食物の接種は人間の生命維持に最も大切なことよ!それをアンタはたかがなんて言葉で片づけるつもりなの?!」

 「そんなに大切なことなら自分ですればいいじゃないか!アスカも女の子なんだから自分の弁当くらい自分で作れるだろ!だいたいアスカは・・・」

 その後を最後までいうことはシンジにはできなかった。アスカが猫科の猛獣を思わせるしなやかな足取りで前にでると、必殺の右ビンタを放ったのである。下半身の鋭い踏み込みから腰、肩、肘にすばやい回転を伝え最後に手首のスナップまで効かせたアスカのビンタにシンジは為す術もなく吹っ飛んだ。
 長年の経験からシンジが一瞬だけ後ろに飛んでいなければ、本当にあっちの世界にいってしまったかもしれない。しかしドアのところまで飛ばされ、仰向けに横たわったシンジの目に飛び込んできた光景はかなり悩ましげなものだった。

 「あーーら、シンジ君案外大胆ね。それならそうと言ってくれればいいのに」

 教室に帰ってきてドアを開けた途端、シンジに真下に滑り込まれ、スカートの中をみられたミサトは、それを隠そうともしないで向日葵のような笑みでそう言った。

 「あ、ああ、こっこれは!?!?」

 パニックして硬直しているシンジが、なんとか眼球だけ動かして助けを求めるような視線をアスカに送ろうとした時、アスカはさっきまでいた場所にいなかった。ただシンジの網膜には徐々に大きくなるアスカがなぜかスローモーションのように飛び込んできた。

 「いつまで・・見てんのよ!!」

 アスカの叫び声とともに放たれたニードロップがシンジに直撃した瞬間、シンジは次のことを頭の中で反芻しながら意識を失った。

 「・・・く、黒のレース・・・」




 「本当に大丈夫か?碇・・・・・」

 奇跡的に意識を回復し、物語の展開上(?)無傷で保健室から戻ってきたシンジが席に着くとケンスケがそう声をかけた。

 「ああ、もう慣れっこになってきたからね。それより・・・・」

 慣れっこという言葉に半ば絶句しているケンスケをよそに、教室内に茜色の髪の少女がいないのに気がついたシンジはこう言った。

 「アスカは?」

 あれだけのことをされてもまだアスカを気にかけているシンジに、さらなる絶句をしたケンスケはその問いに一瞬うろたえていた。

 「っあ、ああ、惣流か・・・惣流ならシンジにつきそって保健室に一緒にいったはずじゃ・・・。いなかったか?保健室に」

 「ん、いなかったけど・・・リツコさんは何も言わなかったし・・・」

 「委員長は?」

 「え、洞木さん?洞木さんもいなかったよ。」

 「おかしいな・・委員長も一緒にいったはずなのに・・・・。まあもうすぐ2限の授業が始まるし、すぐに戻ってくるだろ。」

 ケンスケはシンジを安心させるようにそう言ったが、シンジは誰も座っていないアスカの席を見つめたまま動こうとはしなかった。そんなシンジの視界に1人の少女の姿が飛び込んでくる。

 綾波レイ

 空色の髪と赤い瞳、雪よりも白い(シンジは実際には雪を見たことはなかったが)肌、ガラス細工のようなその少女は窓際の席で1人本を読んでいる。ちょうど一ヶ月前、新学期が始まってまもない頃に綾波レイは転校してきた。シンジはレイに対して何かひかれるものを感じていたが、積極的に話しかけることはなかった。
 片やレイはクラスの誰とも積極的にまじわることはなかった。話しかければ答えるが、必要以上のことは決して口にしない。見えない壁をたてて他人と接するレイはクラスの中で特異な存在であった。シンジはじっとレイを見つめることしかできなかった。
 レイはシンジの視線に気がついていた。というのもシンジが保健室から戻ってくるのを今か今かと待ちこがれていたからである。レイの意識はシンジが教室に入ってきた瞬間から目の前の本にはなかった。しかしそのことに気づく者はいない。レイの外見はその内面とは裏腹に極めてクールだった。

 (シ、シンちゃんがこっちを見てる。どうしよう?どうしよう?さりげなく振り向こうかしら・・・外から風でも吹き込んでこないかな?そしたら風に舞った髪を直してシンちゃんにふりむいて・・・あ、でもロングヘヤーじゃないからあまり髪がなびかないかな?ええっと、それからそれから・・・)
 外見とは裏腹に果てしなく続くレイの妄想を知るものは誰一人としていなかった。

 「・・・・センセ、センセ・・・聞いとるのか?シンジィ」

そういいながら鈴原トウジがシンジの肩をたたいたことがシンジの思考を現実に引き戻した。

 「あ、ああトウジいたんだ・・」

 「いたんだとは、失礼なやっちゃなあ。それより、シンジ」

 トウジの目はランランと輝いている。顔は上気しうっすり汗ばみ、その様子は不気味の一言につきる。トウジは不意にシンジと強引に肩を組むと小さい声でシンジに言った。

 「何色やった?」

 「は?何が?」

 どこまでも鈍感なシンジである。アスカとレイのことに気がいって何も考えていなかったこともあるが・・。

 「何がじゃないやろ、見えたんやろ、教えてくれや、頼むで、此の通りや」

 「だから何が?」

 畳みかけるようなトウジの質問の意図を、シンジはこの期に及んでも全く理解していなかった。ケンスケが助け船を出す。

 「だから朝のホームルームの時にさ。ミサト先生の・・」

 ケンスケがそこまで言ったとき、シンジはその時のことを思いだし、リトマス試験紙も真っ青の速さで、顔を真っ赤にした。

 「あれは、その・・・」

 「なんや、本当は見えてなかったんか?」

 「い、いや、そっそういうわけではないけど・・・・」

 「なら、もったいぶらずに教えてくれや。一生のお願いや。な、シンジ・・」

 トウジの哀願はそこで停止した。トウジ自身の意志ではない。いつのまにかアスカと一緒に教室に戻ってきた洞木ヒカリがトウジの耳をひねりあげたのである。

 「痛っ!何をするんや、いいんちょ。今、男として大事な事を話してるんや!」

 ケンスケが助け船をだしたあたりから教室に戻っていたヒカリは、
 (何が男としてよっ!!ただスケベなだけじゃない!!)
と憤慨していたが、そんなことは無論口にすることができず、別の方向からトウジを攻撃した。

 「鈴原週番でしょ!はやく黒板きれいにしなさいよ!それに花瓶の水はかえたの?早くしないと次の授業はじまるわよ!それから・・」

 「ほら委員長。トウジも分かっただろうからさ、そのくらいにしといてあげなよ。」

 ケンスケはヒカリにそう言うと目配せをして、ヒカリの後ろに隠れるようにしていた茜色の髪の少女への意識を促した。

 (あ、ああっ・・そうかアスカと碇君はやく仲直りさせてあげなくちゃ・・・)

 「あ、そうね。ほら鈴原早くしなさいよ!」

 ケンスケの意図に気づいたヒカリはトウジにそういうと、仕方なさそうに黒板の掃除にいったトウジの背中を見つめた。
 (・・・鈴原・・・)
 おさげの少女の独白は誰にも聞こえることなく、少女の胸の内だけに寂しく響きわたった。


 「シンジ、ごめんね。さっきはあんなことして・・・どこか痛いとこない?大丈夫?ほんとにごめんね・・・・」

 それがアスカが事前に用意したセリフだった。ただ14歳という年齢と反動形成を軸として構成されている茜色の髪の少女の心は、そんなセリフを素直に言うことを拒んでいた。

 「ふん、やっと復活したようね。バカシンジ!全く手間がかかるったらありゃしない」

 アスカは実際に自分が口にしたことを、言った瞬間から後悔した。
 トウジの背中を見ていたヒカリもアスカのその発言によって自分1人の思考の迷宮から現実世界に戻され、そして頭を抱えた。

 (さっきはあんなに泣いてたのに・・・どうして・・・)

 「そ、そんな言い方はないだろ!こっちは死にかけたんだよ!」

 「あの程度で死ぬわけないでしょう。この天才美少女アスカ様が加減を間違えるなんてことはありえないことよ!なんならもう一度同じ目に・・・」

 アスカがそこまで言ったとき二人の間に空色の髪の少女割り込んできた。

 「そんなことはさせないわ。碇君は私が守るもの・・」

 「あ、綾波・・・・」

 「大丈夫よ、碇君。もし私が死んでも代わりはいるから・・・」

 困惑する一同をよそに、レイはシンジに向かって天使の微笑みを投げかけた。
 (きゃあー、碇君を守るなんて恥ずかしいこと言っちゃった!もうレイちゃん赤面よね!でも私はシンちゃんに物静かで神秘的な美少女だと思われてるのよ!ここはそういうふうに対応しないと・・・でも私の代わりってなんだろう?そんな設定ないはずなのに・・)
 レイの妄想は相変わらず継続されていた。

 「ファ、ファースト何言ってるのよ、アンタ!そんな設定この物語にはないわよ!これは正統派ラブロマンスとして・・」

 「ファースト?なんなの、その呼び名・・・私3人目だから知らないわ・・・」

 「あんた言ってることが完全に矛盾してるわよ!!」

 「今を維持する力と変えようとする力・・・矛盾を内包しているのが人間という生き物なのよ・・・」

 はたから見ていると完全に危ない精神状態に陥っているレイに対して、アスカは形勢不利を認めざるを得なかった。だがそのことは負けることに耐えられないアスカの闘志に火を付けた。

 「この手だけは使いたくなっかたんだけどね・・・・」
 アスカはそういうと自分の席に戻り、鞄から黒い袋を取り出した。不気味な笑みを口元に浮かべながらやってきたアスカは、唐突にレイの前にある席に座った。黒い袋から取り出したのはなんと付け髭と色つき眼鏡、そして小型のMDである。唖然とする一同をよそに素早く付け髭と色つき眼鏡を装着し、両手を口のところで組んで両肘を机につけたアスカはMDの再生ボタンを押した。

 「そこをどけ、レイ・・・」

 「命令だ・・・・」
 MDから流れてくる音声にシンジがひきつった表情でつぶやく。

 「と、父さんの声・・・・・・」

 アスカは心の中ではすでに勝ち誇っていた。
 (これでもう勝ったも同然ね!!このあとレイは「命令ならそうするわ・・・」とかなんとかいっちゃって引き下がるだろうし、これでシンジとの仲を邪魔する事もなくなるわ!)
 だが、アスカの甘い期待は即座に打ち砕かれた。

 「あなた・・・なにしてるの?」
 レイの無表情な反応に、アスカは一瞬うろたえ硬直する。

 「それは誰の声なの?」

 「誰って碇司令に決まってるじゃない!あんた知らないわけじゃないでしょ?!」

 表面上、レイはあくまで感情をみせない。

 「知らないわ・・・」

 固まったままのアスカをしりめにレイはさらに続ける。

 「私は1ヶ月前に転校してきて、既に碇君を含む学校中の視線を釘付けにしている可憐で清楚な薄倖の美少女。あなたはがさつで乱暴で碇君に暴力ばかり振るっているただの幼なじみ・・・そういう設定でしょ?」

 涼しい顔とはまるで逆のレイの過激な言葉にやっとアスカが息を吹き返す。

 「誰ががさつで乱暴だって言うの!それに{既に碇君を含む学校中の視線を釘付け}ってどういうことよ!シンジに限ってそんなことあるわけないじゃない!シンジは・・」

 そこまで一気に言っておいてアスカは気づく。頭の中に浮かんだ次のセリフは
「シンジは私のものよ!!」
なのだが、衆人環視の中そんな言葉を言えるわけがなかった。

 「碇君がどうかしたの?」

 「な、なんでもないわよ!!・・・それより碇司令のこと本当に知らないの?」
 

 「ええ・・そういう設定になってるわ・・」


 キーーンコーーンカーーンコーーン


 その時チャイムが鳴った。アスカとレイの舌戦はいささか消化不良気味であったが、授業の開始を告げる鐘の音とともに全ては中断された。自分の席に戻る途中レイは相変わらず氷のような表情で呟いた。

 「碇司令・・・。聞いたことがあるような気がする。でも関係ないわ。だって・・・」

 「だって、じいさんは用済みだもの・・・・」




 「ハックッション」
 財団ネルフの本部ビル最上階にある会長室に大きなくしゃみが響きわたった。

 「風邪か?碇」

 くしゃみをした男の隣で書類に目を通していた白髪の初老の男はそう言った。

 「いや、誰かが噂でもしてるのだろう・・・。もてる男はつらいからな・・冬月・・」
 白髪の男に碇と呼ばれた男、世界有数の資金量を誇る財団ネルフの会長・碇ゲンドウはそうつぶやくと、口の周りの筋肉だけでニヤリと笑いを作って、そう言った。

 (相変わらずこの男にはついていけん・・・・)

 内心いつもそう思ってるネルフ副会長・冬月コウゾウであったが口に出しては何も言わなかった。冬月が黙っているのをいいことにゲンドウは更に続けた。

 「いや、この前もな、街を歩いていたら若い女性がこぞって振り向くのだ。それに秘書課の遠藤君、彼女はおそらく私に気がある。それに加えて総務課の・・名前はなんて言ったかな?身長が172cm前後で推定スリーサイズは上から88,60、85、髪の毛は肩よりやや長め、内側に少しカールしていて黒というより少し藍色のような感じで、右大腿部の内側と左のうなじにほくろがあって、鼻筋がこう、すっきりとしていてアレクというネコを飼っている課長代理の・・・」

 「一条君か?」

 「ああ、そうだ一条君だった。それにしてもよく知っているな、おもえもチェック厳しいな冬月・・・」

 もちろん冬月がその名前を言えたのはゲンドウの<なぜそんなことまで知っている?>情報のおかげではなく、総務課・課長代理ということからなのだが・・・。

 「一条君がこの前の会議中、悩ましげな視線で私の方を見ていたのだ。彼女は夫がいる身ではないか。困ったものだ、全く・・・」

 (困ったものなのはおまえの脳味噌の方だ!!)
 と冬月は心の中でシャウトしていたが口に出しては何も言わず、やれやれといった視線だけでゲンドウの戯言に応じた。冬月の内面の苛立ちをよそのゲンドウの戯言は続く。

 「それにこの前ユイがな・・・」

 碇ユイの名を聞いたとき、冬月は突然自分の神経が切れる音を聞いた。
 ネルフに副会長として招かれる前、大学で教鞭を執っていた自分のかわいい教え子だったユイ・・・・なぜこんな外道と結婚してしまったのか?神はなんと無情なのかと冬月は常々思っていた。
 その後もゲンドウののろけ話は続いていたのだが、それは冬月の耳には既に届いていなかった。冬月は自分のデスクの鍵付きの引き出しからブルーのカラーコンタクトと茜色のかつらをとりだし、マッハの速さでそれを装着した。そしておもむろに立ち上がり腰に手をあてて胸を張る。

 「アンタ、バカァー?だいたいアンタみたいなヒゲメガネ親父がそんなにもてるわけないじゃない!!一条君が会議でアンタのこと悩ましげな目で見てたすって?勘違いもいい加減にしとかないと犯罪よ!この妄想親父!!」

 完全に憑依状態に陥りキレてしまった冬月に、ゲンドウもうろたえる。

 「ふ、冬月・・・ど、どうしたというのだ・・・」

 そこまで冬月を追い込んだ当人は無責任に言ったが、冬月は止まらない。彼はかつらを一瞬にしてとると、椅子に深々と座り直して今度は黒のバイザーをつけ背中を少し丸める。

 「いずれにしても使徒襲来による計画の遅延は認められない。予算については考慮しよう。まあ、いい。今回の君の罪と責任は追及しない。だが、君が新たなシナリオを作る必要はないい・・・」

 その後も延々と続行された冬月のトリップに、ゲンドウが飽き始めた頃、会長室の扉を何者かがノックした。

 「誰だ?」

 「加持です」

 「入りたまえ」

 書類を携え入ってきたのはネルフ特別調査室・室長加持リョウジである。加持は謎の行動をとっている冬月を好奇心と困惑が入り交じった瞳で見つめると、ゲンドウのデスクの前に歩み寄り、<極秘>と表紙に印刷されたファイルを差し出した。

 「E計画の報告を聞く前に実行してもらいたいことがある」

 「なんなりと・・・」

 「冬月コウゾウは現時刻をもって破棄。以後第十八使徒と識別する」

 「しかし・・」といいかけて加地はその言葉を飲み込んだ。碇ゲンドウが一度口にしたことは絶対であるからだ。加持はため息を一つつくことで心の整理をつけ、内線電話で隣室に控えているSPに冬月を連れていくことを命令した。

 「碇会長・・・。一つだけ申し上げたいことがあるのですが・・」

 ゲンドウは顔を少しだけ加持の方に向けて発言を促す。

 「使徒なんていう設定はこの話にはないことになっているのですが・・・」

 それに対するゲンドウの返答は簡潔を極めた。

 「っふ、問題ない」



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ver.-1.10 1997-05/18 公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは meguru@knight.avexnet.or.jpまで。

 新たなエヴァ小説が気が「めぞんEVA」にやって参りました(^^)
 26人目の住人 meguru さんの『Project E』第一話、公開です!
 

 素直になれないアスカちゃん、
 ちょっとイってるレイちゃん、
 純なヒカリちゃん、
 お気楽ミサトさんに男二人。

 賑やかで楽しい学園生活ですね。
 

 ネルフの方は
 ゲンドウも、そしてなんと冬月さえもが・・・・○キ印です(^^;

 その裏でチラッと出てきた一言「E計画」気になりますね。

 さあ、訪問者の皆さん。
 めぞんEVAにやってきた meguru さんを歓迎して下さいね!


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