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私立第三新東京幼稚園A.D.2007



第十七話 二人一組


九月も終わり台風が日本列島を通過する度に涼しさを増していく中,私立第三新東京幼稚園では毎年恒例の「運動会」へ向けて園児や先生達は皆準備や練習に余念がなかった.

「・・・今日から二人一組で『ダンス』の練習を始めます.みんな,体操着は持ってきた?」
「はーいっ.」「おーっ.」×多数
既に黒のトレーニングウェア姿に着替えたマヤが園児達に声をかけた.元気に返事をする「さくら組」の園児達.ここ第三新東京幼稚園では運動会の種目に「ダンス」を取り入れていた.これは園児全員がフィールドに出て音楽に合わせて簡単な踊りを行うというものである.得点は無く勝敗には影響しない.

「ぼく,もってきてない….」
「せんたくでかわいてないよぉ….」
大多数の威勢の良い返事とは対照的に,元気の無い声が一つ二つ遅れてあがる.体操着を持ってきていない園児達だ.いつもとちょっとだけ勝手が違うとまごつく子がクラスの中に必ず一人か二人は出てくる.…もっとも幼稚園児の場合は先生から貰ったプリントを各々の家族に渡しているわけだが,家族の方も忙しくてつい忘れてしまうことはままあることだった.

「そう…持ってこなかったの?…それじゃ,今日は制服のままでいいわ.でも,明日は必ず持ってきてね.」
「「はーい.」」
マヤが「忘れ物」をした園児達へ穏やかに語りかける.先生によってはその辺りのことに関して厳しい人もいるのだが,マヤはその点については寛大だった.

「…えっと,着替えの前にもう一つお話があります.みんな静かに聞いてね.」
「はーいっ.」「おーっ.」×多数
再び元気の良い返事がわき上がった後,しんと静まる.クラスの園児全員がマヤに注目していた.

「…今日からここに『お勉強』をしに来る大きなお友達を紹介しますね.」
「えーっ.」
「わあーっ.」
「どんなひとぉ?」
「どんな『おべんきょう』するのぉ?」
マヤが「新たに来る大きなお友達」の話を切り出すと園児達が口々に声をあげる.クラスに新しい「誰か」が入ってくることは園児達にとっても大きなイベントの一つだった.

「おおきなともだちってなんだろうね,アスカ?」
「きっと,せんせいの『みならい』のことよっ.」
「…『みならい』ってなあに?アスカちゃん?」
「まだいちにんまえじゃないってことよっ,レイ.」
「…そうなんだあ.」
「おとこのひとかなあ?おんなのひとかなあ?」
そのことはシンジ・アスカ・レイの三人にとっても例外ではなかった.

(パン・パン・パン)

「みんな,静かにして.これから紹介するから.」
手を叩いてマヤは園児達を鎮めさせる.程なく教室が静かになる.マヤが「さくら組」を受け持って半年余りだが,園児達はマヤの言うことを素直に聞いていた.

「葛城さん,入ってください.」
「はーいっ.」
マヤの呼びかけに対し軽やかな女性の声が返ってきて教室の扉が開く.「葛城さん」と呼ばれたその女性は中に入ると扉を閉めてすたすたとマヤの隣に歩み寄った.すらりとしてかつ上背のあるその女性は青みがかった長めの黒髪を後ろでかきあげて一本にまとめており,おろしたてと思しきジーンズに上は毛筆で一撥ねしたようなロゴのついた白のトレーナーといういでたちだった.年の頃はリツコと同じぐらいだろうか.

「みんなに紹介するわね.こちら,葛城ミサトさん.葛城さんは研究のため週に1,2回みんなと教室で一緒になります.…それでは,葛城さん….」
マヤは園児達にミサトを紹介すると彼女に自己紹介するよう促がす.立場的にはマヤの方が「先生」であるのだが,年齢はミサトの方が上でマヤはどこかぎこちなかった.

「葛城ミサトです.今度みんなと一緒に『お勉強』することになりました.よろしくねっ.」
ミサトは平仮名で黒板に名前を書くと園児達に向き直って簡潔に名乗りをあげる.ミサトは第三新東京市内にある大学の教育学部生で来年3月卒業の予定だ.今回,ミサトが幼稚園に来たのは大学側からの研究要請を幼稚園が受け入れたからであった.

「かつらぎせんせい,しつもーん!」
茶色がかったショートカットの園児がぴっと手を上げた.

「はい,何かな?あ,私は『先生』じゃないから『先生』は付けなくていいわよ.あと,名前の方で呼んでくれると嬉しいんだけど.それと,お名前を名乗ってくれないかな?」
ミサトは手を上げた園児の方を向き微笑みながら応えた.

「えっと…わたし,きりしまマナ.ミサトおねーちゃん,『おべんきょう』ってどんなおべんきょうするの?」
質問の主,マナは改めてミサトに尋ねた.

「いい質問ね,マナちゃん.私のお勉強はみんなが何を思って何をするのかを観察することよ.」
「かんさつってなつやすみにきんじょのおにーちゃんがやってたあさがおのかんさつのかんさつのこと?」
「そうよ.」
「ふーん….」
マナはよく分かったような分からなかったような顔をしてミサトを見ていた.

「かんさつしてどおするんだあ?ミサトぉ?」
マナの疑問を引き継いだ形でタカシがミサトに尋ねる.呼び捨てにしたことでマヤが少しばかり眉をひそめるがミサトはそれを気にする様子も無くタカシのもとへと歩み寄ってきた.

「そうねえ…」
そう言い出してミサトは思案を始める.実のところ,ミサトもその辺のところよく解っていなかった.そもそもミサトがここに来たのは卒業論文のテーマに困った彼女が指導教官に泣きついたのが始まりで,指導教官の「必要なデータさえ集めてもらえれば文献たくさん読まなくてもいいぞ」という甘い言葉と「何か面白そうだから」という彼女自身の好奇心に乗っかったのが真相だった.

「…えっと…」
ミサトは言葉をつぎながら時間を稼いでいた.タカシにどう答えるか考えているうちに彼女の中でちょっとしたいたずら心が湧いてきた.

「それはね…」
「それは?」
ミサトは体をかがめてタカシの顔を覗き込んだ.タカシもまたミサトを見上げていた.

「ひ・み・つ・よん.」
ミサトは片目をつぶって人差し指をちっちと振りながら答えた.

「なんだよー,それえーっ.」
ミサトの答えにタカシが抗議の声を上げる.

「それより,お名前を教えてくれない?」
「ひみつだ.」
タカシの抗議を無視してミサトは彼に名を尋ねる.だが,ミサトにからかわれたタカシは「仕返し」で名前を名乗らなかった.

「(くすっ)あーら,教えてくれないの?」
「おしえてやんない.」
「…そう.じゃあタカシくんには『ひみつ』は教えられないわね.」
「ど,どうしておれのなを!?」
むきになっているタカシにミサトは笑みを浮かべながら話し掛ける.タカシは自分が名乗っていないのにどうして名前が分かったのだろうかと驚いていた.

「はたけやまタカシくん,名札にそう書いてあるわよ.」
「あ….」
「よろしくねっ.」
「お,おうっ.」
いつぞやかカヲルがシンジに行った時のようにミサトがタカシの疑問に答える.園児は制服の時には胸に名札を付けることになっていた.ミサトに指摘されてはっとするタカシ.ミサトはタカシの頭をなでながら明るく話し掛けていた.ミサトのペースに乗せられたタカシは憎まれ口を叩くのも忘れてしまっていた.

「他に質問はないかなー?」
中央に戻ったミサトがクラス中を見渡しながら園児達に問いかける.

「どこにすんでるの?」
「第三新東京市内よ.」
「すきなたべものはー?」
「枝豆にもろきゅうに焼き鳥にさきいかに….」
いわゆる酒のつまみを列挙するミサト.傍らにいたマヤの顔が少し引きつる.

「ミサトぉ,『エバン』しってるかあ?」
「知ってるわよ.朝陽テレビの特撮番組ね.あたしも観ているわ.」
園児達から「おお.」という声が上がる.他の特撮番組に比べれば女性視聴者の多い『機動刑事エバン』だったがそれでも人気の中心は幼児と特撮マニアの大人だった.ミサトは特撮マニアでは無かったが何故かその番組を知っていた.

「ミサトはなんごうがいちばんいい?」
「1号よ.」
「ミサトぉしってるー?『ゼーレ』のまわしものがここのほけんしつにいるんだよーっ.」
「アンタ,バカァ?あかぎせんせいが『ゼーレ』のまわしものなわけないじゃないっ.」
話題が『エバン』になって「白衣の悪魔」リツコのことが引き合いに出される.リツコのことを『エバン』の悪の組織『ゼーレ』の手先だと信じている園児に反発するアスカ.夏休みの迷子騒動以来,アスカはリツコのことを悪く言わなくなっていた.

『へえ…一度保健室に行ってその顔拝んでみたいものねぇ….』
園児達のやり取りを聞きながらミサトの中で好奇心がもたげていた.


−*−


「それでは,私と葛城さんが一回,通しで踊ります.ちゃんと見ていてね.」
「はーい.」「おーっ.」×多数
マヤがグランドで園児達に話し掛ける.ミサトへの質問が一通り済んだ後,園児達は体操着に着替えて外に出ていた.

「葛城さん,いいですか?」
「はい.」
マヤの合図と共に二人は予め定められた振り付けに基づいて動作を一つ一つ始める.振り付けといっても踊るのは園児だからその内容は至ってシンプルである.お辞儀をしたり腕を組んでぐるぐる回ったりハイタッチをしたり一人が屈んでもう一人が飛び箱の要領で跳んだり…一つ一つの動作は至って単純なものだったし,組み合わせもさほど複雑ではなかった.ただ,いい年した大人がそれを行うのは少しばかりの開き直りが必要だったが.

「…次は手をつないでブンブン振って….」
マヤはにこやかに動作の一つ一つを丁寧に説明しながら踊っていた.ミサトもまたマヤの動きに合わせる.二人共,その辺の開き直りが出来ているというよりは本当に踊りそのものを楽しんでいるようだった.

「…はいっ.これでおしまいっ.みんな,良く見てた?これからみんなに少しずつ覚えてもらいます.いいわね?」
「はーい.」「おーっ.」×多数
「それじゃ,とりあえず近くの人と二人一組になってね.」
マヤは園児達に組み合わせを決めさせる.最終的には背丈の列順の組み合わせで運動会本番を迎えるのだがマヤに限らず始めのうちは様々な組み合わせで練習させていた.これは欠席者が出た時の対応措置の意味もある.

「キクコちゃん,わたしとおどろっ.」
「うんっ,アヤちゃん.」
「じゃ,カズヒロはとおれとな.」
「ああ.ツヨシはどうする?」
「ん?カツくんとくむよ.」
「リョウくんいい?」
「いいですよ,シゲタネくん.」
園児達はめいめいにペアを作っていく.大体は仲良しだとか,家が近所だとかでペアが出来ていた.もっと上の年代に比べれば男の子・女の子をさほど意識する年でもないのだができた組み合わせは男の子同士・女の子同士が多くを占めた.

その一方で,男の子・女の子の組み合わせも何組かできている.シンジもまたその範疇にあった.

(すかっ)

「アスカぁ,そんなにとんだらとどかないよぉ〜.」
「アンタがとべなさすぎなのよっ.」
「そんなぁ〜.」
ジャンプしてのハイタッチに失敗したシンジ.シンジはアスカと組んでいた.だが,アスカの方が運動神経がはるかに良くそれでいて自分のペースで動こうとしたためシンジは振り回されるばかりであった.

(ぎゅっ)

「レイちゃん,ひっぱるわよ.」
「…うん.」
右手同士を握って引っ張り合いながら回る二人の園児.レイはマナと組んでいた.おとなしい子と活発な子の組み合わせはシンジ達と同じだったがこちらはマナの方がレイの動きに合わせていた.

「はいっ,腕を組んで右に回って…タカシくん,カズヒロくん,そんなに速く回ったら目が回っちゃうわよ.」
穏やかな声でマヤがタカシ達に声を掛ける.その口調に咎めたてている様子はない.

「わっ.」
「ひゃっ.」
「きゃっ.」
練習を始めたばかりとあって上手く踊れない組が多数出てくる.また,踊り踊る園児達の様子も様々で,アスカとシンジのように一方が相手を振り回している組,マナとレイのようにうまくリズムが取れている組,タカシとカズヒロのようにお互いに力入れまくりの組など様々であった.

「はい,それまで.それじゃ,今度は別の子と組んでね.」
何回か最初から最後まで少しずつ区切りながら踊りの動作を行わせた所でマヤは園児達を静止させた.そして,組み合わせを変えさせる.

『きゅう』
「だいじょうぶ?シンジくん?」
「…うん.らいじょうぶ,レイちゃん.」
「なっさけないわねー.」
アスカに文字通り「振り回された」シンジはフラフラになっていた.シンジを心配するレイとシンジに容赦のない言葉を浴びせるアスカ.確かにシンジは運動神経の良い方ではない.だが,クラス一の運動能力を誇るアスカの動きに合わせられる子はそう多くなかった.

「ねえ,アスカちゃん.わたしとくまない?」
「ん?いいわよ,マナ.」
「…わたしとくんでくれる?シンジくん.」
「うん,いいよ.レイちゃん.」
新しい組み合わせはマナ×アスカ,レイ×シンジとなった.シンジにとってこの組み合わせは先程より少しばかりましだった.二人共だいたい同じレベルの運動能力でどちらかが相手を振り回すことはまず無かった.他の組に比べると動きは少し悪いがまずまずといったところである.

(ごんっ)

「あいたた,だいじょうぶ?レイちゃん.」
「…うん,だいじょうぶ.シンジくんは?」
「ぼくもだいじょうぶ….」
ただし,練習中に頭と頭をぶつけたことを除けばだが.

「アスカちゃん,そんなにひっぱんないでっ.」
「ご,ごめん.マナ.」
シンジの時と異なってアスカはマナの言うことに耳を貸していた.マナの運動神経は悪い方ではないがそれでもアスカの全力の動きについていくのは少しばかりきつかった.

「もうちょっとちからをぬいて,ね.アスカちゃん.」
「う,うん.」
マナの要請を受け入れる形でアスカは少しだけ力を抜いた.すると,ぎくしゃくしていた二人の動作がスムーズに流れるようになる.

「あ.」
「でしょ?」
動きの変化にアスカはちょっと驚いていた.マナはアスカににっこりと微笑んだ.

組み合わせが変わって前より上手く踊れた組,踊れなかった組様々だが 園児達は新しいパートナーと共に何度も何度も練習を繰り返していた.



「…こんどはわたしとくんでくれる?シンジくん?」
「うん,いいよ.マナちゃん.」
「レイっ,アタシとくもうっ.」
「う,うん….」
3回目の組み合わせはシンジ×マナ,アスカ×レイである.最初のアスカと組んだシンジの姿を見ていただけにレイは少しばかり不安だった.

「ゆっくりうごくからねっ.レイ.」
「…うん.ありがとう….」
レイの不安を知ってか知らずかアスカはレイに声を掛けていた.そして言葉通りアスカはレイを引きずり回さないように加減して手を引いたりしてレイのペースに合わせていた.

「よろしくねっ.シンジくん.」
「う,うん.」
シンジと組んだマナはにっこりと微笑む.そしてシンジを少しリードする形で練習を始める.シンジは時にマナに引っ張られながらもマナに遅れないよう必死に動いていた.シンジもレイもこの日一番の良い動きだった.

『ふーん,あの子達,面白いわね….』
園児達の様子を一部始終「観察」していたミサトは笑みを浮かべながらこの四人の挙動に関心を寄せていた.

「はい,それまで.じゃ,また最初に組んだ子と一緒になって.」
ミサトがシンジ達の動きに関心を寄せていることなど露知らずマヤは練習を進行させる.それはともあれ,マヤの指示を受けて園児達は再び最初の組み合わせの二人一組になった.

「またよろしくねっ,レイちゃん.」
「…うん.マナちゃん.」
「こんどはひっぱんないでよぉ,アスカ.」
「アンタにいわれなくたってわかってるわよっ.」

「最後に,通しで音楽に合わせて踊ってみましょう.つっかかっても構わず続けてね.」

マヤは園児達に指示するとプレイヤーの「再生」ボタンを押した.

(ずんちゃっちゃっ♪ ずんちゃっちゃっ♪・・・)

イントロが始まる.横に並んで右手と左手を握り合った園児達が前後に手をブンブン振る.

(・・・たったったっ♪ たったっかたったっ♪ たったったー♪・・・)

「はいっ,手を離して向き合って.左右に伸びて.」
イントロが終わってマヤが園児達に指示を出す.手を離して向き合った園児達は両手を思いっきり天にかざして対称的に右に左に伸びをする.

(・・・たったったららん♪ たったったららん♪・・・)

「はいっ,一人でくるくる回って.」
園児達は思い思いにくるくる回りだす.この辺はばらつきがあってもほとんどの園児がマヤの指示についてこられた.

(・・・たったら♪ たったら♪ たったららん♪ ・・・)

曲の節目節目毎にマヤの指示が飛んでいって園児達はそれに従う.曲が進むにつれてつっかかる組が増えていく.練習初日なのだから当然であろう.一度つっかかってずるずると後までリズムを崩してしまう組,あるいはさっきのしくじりがあたかも無かったかのように元の流れに入ってしまう組,さもなくば完全に開き直って自分達のペースで踊っている組など様々であった.

(・・・たららん♪たららん♪たららん♪・・・)

右手で握手して二人で握り合った手を中心に引き合いながらスキップして右回転をする場面,お互いの力のバランスが取れないと一方が相手を「引きずり回す」ことになる.マナとレイは上手に力加減ができていて奇麗に回転していた.

「わっ.」
シンジはアスカに引きずられかけていた.引きずり回されなかっただけ最初の時よりはましだろう.練習を続けていくうちにアスカも多少は力を加減していた.

(・・・だっだだだっ♪ だっだだだっ♪・・・)

『うんしょっ.うんしょっ.みぎ….』
シンジはアスカの動き・力加減に追いつこうとこれまでに無く必死に動いていた.
『えーと…えいっ.』
アスカもまたシンジに合わせようと一つ一つの動作に集中していた.

(・・・だだだん♪ だだだん♪ だだだん♪・・・)

『うんしょっ.うんしょっ.』
『えいっ.やあっ.』
右に左にとシンジとアスカはその小さい体を目いっぱい動かしていた.

(・・・ちゃっちゃっちゃっちゃっちゃー・・・♪)

フィニッシュは互いに向かい合って屈みこみ思いっきりジャンプしてハイタッチをするというものである.シンジもアスカも膝を曲げ体勢を整えていた.

『『いっせーのー…』』

シンジとアスカは同時に跳び上がった….


−*−


「いったあ〜.」
「もうっ,バカシンジ!」
「だあってえ〜」
シンジを非難するアスカ.ここは保健室で,シンジは怪我をしていた.フィニッシュの瞬間,シンジは着地に失敗してひざと手の平を擦りむいていた.

「だってもなにもないのっ.なんであんなおもいっきりとぶのよっ.」
あの時シンジはこれまでに無いくらい思いっきり跳びあがり,アスカは逆にこれまでに無いくらい控えめに跳んでいた.結果,手と手がすれ違ってハイタッチが決まらずシンジは自爆したのである.

「シンジくんはアスカちゃんに合わせて思いっきり跳んだのよね?」
「う,うん.」
付き添いで来たミサトがシンジに問いかける.シンジはミサトの問いに対して素直に答えていた.

「な,アンタ,バカァ!?」
「アスカちゃんはシンジくんに合わせようとしてちょっとだけしか跳ばなかったんでしょ?」
「な,なにいってんのよ!?ミサトぉ!」
「あら?違うの?」
ミサトは笑みを抑えようとせずアスカに問いかける.それに対しアスカは顔を真っ赤にして怒鳴るばかりであった.

「…静かにして.治療の邪魔よ.」
「まあまあ.いいから,いいから.」
「・・・・・・・」
ミサトの茶々にこめかみをひくつかせながらリツコは消毒の済んだ患部にガーゼを当てて黙々とシンジの治療を続けていた.


第十八話に続く

公開10/23
お便りは qyh07600@nifty.ne.jpに!!

1997/10/22 Ver.1.1 Written by VISI.



筆者より

長らくお待たせしました.更新再開です.この作品を支持してくださる皆様には本当に感謝しております.相も変わらずベタな展開でベタな落ちですが(^^;;)これからもお付き合いいただければ幸いです.
今回,ミサトを登場させました.当初は「教育実習」にしようかと思ったのですが色々と思案の末,本文の形になりました.これが吉と出ますか凶と出ますか…次回は「学園物」お約束イベントの予定です.が,シーズンをちょっと外しそうです(汗).

誤字・脱字・文章・設定の突っ込み等は,
までお願いします.


 VISI.さんの『私立第三新東京幼稚園A.D.2007』第十七話、公開です。
 

 1度目は自分の事ばかりに気が行ってギクシャクしていた二人。

 しばらく別の人とペアを組み、
 その中で落ち着いて見つめ直すことで成長して。

 2度目の出会いでは・・・
 

 こうなると、
 ラブストーリーですよね(^^)

 ミサトさんでなくとも
 ”研究”したくなる!?

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 米国出張から無事帰還したVISI.さんを感想メールでねぎらいましょう!


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