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私の中の碇シンジ


「シンジが死んだ?そんな・・・嘘でしょ?」

 信じられないのも無理はない。ミサトはそう思った。
 外はさんさんとふりそそぐ光がカーテンから病室内を明るくしていた。
 アスカにとって最悪の報告であった。

「そんな・・・昨日はまた来るねって、また来るねって、そう言ったのよ。バ
カで頼りないシンジだけど、約束は守ってくれたわ。来てくれる。信じていた
のに・・・」
「アスカ・・・シンちゃんはね、死んでなんかいないわ・・・」
「でも、今死んだって・・」

 ミサトは首を横に振る。

「それは違うわ、アスカ。シンちゃんは私たちの心の中に生き続けるのよ。永
遠にね」
「心の・・・中?」
「そうよ・・・だから・・・うっ・・だから死んだなんて言わないで」
「でも・・・・・・・・・」

 アスカとミサトはその日、病室で泣き明かした。


 ミサト達が泣いているころ、リツコは秘密の研究室でコリャまた怪しげな作
業を黙々と行っていた。

「ふぅ・・・培養液はこれでよし!後はミサトがうまくやってくれれば問題な
いわね・・・」

 そして、危険だの放射能のマークだのそれ関係のシールが貼り付けられた箱
から試験管を慎重に取り出すと、中身をこれまた慎重に培養液の中に入れると
端末に向かってパチパチとタイプしはじめる。

「一ヶ月もすれば完成だわ。後は魂を探さなくては・・・」

 不敵な笑いを浮かべて研究室を後にするリツコ。



 シンジがここに来なくなってから一週間が過ぎた。
 長いようで短かった一週間。アタシはまだ信じられなかった。
 シンジの夢を見るのだ。しかも毎日。
 シンジは必ず誤る。どうしてって聞くと居なくなる。

「シンジ・・・」

 アスカはうつむいたままその名前をつぶやいた。
 薄暗い病室にサァッと風が吹き込んできた。
 アスカは窓の方を見たが、窓は閉め切られている。

「シンジ?シンジなの?・・・そんな馬鹿なことがあるわけないか・・・」

 再び風が吹き込んでくる。
 そしてアスカの顔を撫でるように、まるで生きているかのように風が吹いた。

「やっぱりシンジなんだわ・・・ずっとそばに居てくれるのね?」

 アスカはその日、久しぶりに深い眠りについた。
 安心したためか、その日は夜中に目を覚ますことなく朝を迎えることができ
た。



 その一部始終を監視カメラで見ていたリツコは、

「これだわ!」

 感嘆の声を上げた。
 培養液の中身も順調で、機嫌よくアスカの様子を見ていた時のことである。
 早速マギによる分析を開始すると、数秒もたたないうちに回答が出た。

「やっぱり、シンジ君の魂はここにあるわ・・・」

 その瞬間、培養液の中身が変化する。
 ボコッと空気を吐き出して、目を開けた。

「お目覚めね?わかるかしら?まぁ感情がないから分からないか・・・」

 それは、焦点の合わない目をリツコにむけると、再び空気を吐き出した。

「うん・・・ちゃんと呼吸はしているみたいね・・・よかったわ」

 培養液の中身にニコリと笑いかけると、リツコは研究室を後にした。



 その時、ミサトは無謀にも料理に挑戦していた。

「シンちゃんが居なくたって、出来るって言うのを証明しなくちゃ」

 心配そうに見つめるペンギンをよそに、キッチンで壮絶なバトルを繰り広げ
ていた。

「ペンペンは味を見るのよ!分かった?」

 その時、ペンペンは死を予感したという。(合掌)

「シンちゃんってよっぽど料理がうまかったのね・・・私も頑張らなくちゃ!」

 ペンペンはその日、遺書を用意したそうな。



 そしてついに、その日はやってきた。
 リツコは研究室で最終段階に入ろうとしていた。
 魂の入れ物は出来上がった。後は、魂を入れるだけだ。

「やっと出来上がるわよ。ご苦労様、よくここまで成長してくれたわ」

 そこには、怪しい笑みではなく、本当に感謝の気持ちがこもった微笑みがあ
った。



 アスカは、カーテンの隙間からこぼれる光をベッドの横で見つめていた。

「シンジ、ついに退院の日が来たわ。でも、ミサトの家に帰りたくない。シン
ジの居ない家にはもう・・・」

 ツゥッと頬に暖かい涙がこぼれおちた。
 風がアスカの頬を撫でるように吹いた。

「ふふ・・・シンジ。やさしいのね・・・アタシは大丈夫よ・・・」

 そこには、何かを心に決めた顔があった。

「それじゃ・・・ね・・・」

 そう言い残してアスカは病室を飛び出した。
 逃げるように走った。
 そうしないと二度とあの病室から出られなくなってしまうのではないかと思
ってしまうぐらい居心地がよかったのだ。


 アスカが居なくなった病室にリツコが現れる。
 手元には炊飯ジャーみたいな物が握られており、ふたは開いている。

「さぁシンジ君。居るのは分かっているわ。黙ってここに封印されなさい!」

 病室に向かってそういうリツコ。端から見ると怪しいお姉さんにしか見えな
いであろう。しかし、そう言った後、炊飯ジャーらしき物のふたが勢いよく閉
じて、赤いランプが点灯した。

「成功だわ!!」

 そう言うと、リツコは音もなく病室を去った。



 そして、ついにそれは完成したのだ!!



つづく 1997-06/08 公開 不明な点、苦情などのお問い合わせはこちらまで!

作者とチルドレン達による後書き OHCHAN:やっと謎がとけたって感じで書きはじめたんだけどどうかな? シンジ:僕は風なんですか? OHCHAN:風って言うか、空気みたいな存在ですね・・・ シンジ:そうなんですか・・・ アスカ:納得してどうするのよ!!あんたねぇ、空気にされてるのよ!頭に来     ないの? シンジ:だって、これはこの物語のお話であって・・・ アスカ:ま、いいわ。しっかし短いわね・・・かくしEVAに投稿していた頃     とは大違いの短さだわ。 OHCHAN:あの頃は、仕事も忙しくなかったからね・・・ シンジ:今は忙しいんですか? OHCHAN:うん・・・いろいろとね・・・ アスカ:自分とこの小説も書かないといけないしね! OHCHAN:そうなんですよ・・・レイちゃんシリーズも書きたいし。 レ イ:そうそう・・・ アスカ:どっから沸いて出たのよ?あんたは! レ イ:人をボーフラみたいにいわないで。 シンジ:なにはともあれ、投稿することに異議があるんですよね? OHCHAN:そのとおり、見る人を飽きさせないようにしなくちゃね! アスカ:取り敢えず自分のやつもあげちゃえば? OHCHAN:だめですよ!自分のとこのは設定どおり書いているんですから。 アスカ:そうなの? OHCHAN:そうです!!それじゃ、これで・・・ アスカ:あ!待ちなさい。まだ言いたいことは山ほどあるのに! シンジ:僕はないけどな・・・ レ イ:私もないわ・・・  OHCHANがパチンと指を鳴らして亜空間を作り出す。  有無言わさず、3人は亜空間に吸い込まれていく。 アスカ:今度のときは質問攻めにするからね!!  最後にアスカの声が木霊した。 OHCHAN:ふぅ・・・  OHCHANはため息を吐くと、椅子に深く腰を下ろした。
 OHCHANさんの『私の中の碇シンジ』その2,公開です!  体を失った後も”風”となってアスカを気遣う・・・  シンジのアスカへの思いが伝わってきますね。  そしてシンジ復活への希望、リツコの研究。  クローンでボディを作り、アスカの元で漂っていて魂を入れる・・・  怪しいです、リツコさん(^^; でも、頑張って下さい!  シンジはどうでもいいんですよ、アスカの涙が辛いいんです(爆)  さあ、訪問者の皆さん!  生と死の狭間で漂うシンジ君を応援して下さいね(^^) 神田:ふぅ、コメントを書き上げたぞ。  神田は呟くとアスカを追って亜空間に飛び込み・・・道に迷って遭難した。


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