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妖精の憂鬱
第五話  それぞれの夜 その他諸々編



アスカ、レイが、それぞれの時間を過ごしていたとき、やはり他の場所でも思

い思いの時間を過ごす者達がいた。







霧島家。

といってもマナ一人しかいないが。

彼女は、寝るまでの時間をボーッとするという何とも言えないやり方で、過ご

していた。

だが、気のせいだろうか。

いまベッドの上で、ボケッと天井を見つめている少女の雰囲気が、昼間と違う

ような気がするのは。

見た目が変わったわけではない。

ただ昼間、彼女を包んでいたような『お淑やかさ』というモノが、感じられな

いのだ。


「どうしてこんな事になったんだ?」


自嘲気味に呟くマナ。

昼間とはうって変わった口調、どことなく少年のような雰囲気で。

そしてマナは、枕もとにあった写真立て見つめる。

そこには二人の子供が写っていた。

一人は栗色の髪をした少女。

腰に手を当てて、ふんぞり返ったポーズをしている。

勝ち気そうな表情が印象的だ。

もう一人は、黒髪の少年?だろう。

何故か女の子の服を着ている。

なんとなく照れたように、少し俯き加減で写っていた。



「・・・もう会えないのかな」



寂しそうに呟くマナ。

その瞳は、写真の二人ではなくどこか遠くを見つめているようだった。

もしかしたらそれは、遠い過去の日々だったのかもしれない。









洞木家

ヒカリは、今日いつもと違っていた友人のことを考えていた。


「・・・・・悩み事かな」


普段は、むちゃくちゃに明るいアスカ。

少し行き過ぎかと思うときもあるが、アスカとレイ、あの二人の絶妙の掛け合

いは、見ていて飽きなかった。

今日それが無かったわけではない。

ただ、どことなく元気がなかったのも確かだ。


『それに授業中・・・・・アレってやっぱり・・・・・霧島さんの事・・・・

・見てたんだよね・・・・・』


上の空でマナのことを見ていたアスカを思い出す。

その時は、その事について言及しなかったが・・・・・。

やはり気になってしまう、アスカがおかしくなったのは、マナを見てからだっ

たから。


『知り合い?・・・・・でも霧島さんにそんな感じはなかったし』


さすがに、レイのような訳の分からない誤解はしなかった。

それに、レイには『禁断の恋』について悩んでいる乙女に見えたのだろうが、

ヒカリには、なんとなく『寂しそうに、悲しそうに』見えたのだ。

アスカとの付き合いはそれほど長くない。

出会ったのは、中学に入った時だ。だからそれ以前のアスカのことは、殆ど知

らない。

アスカ自身、あまり昔の事をしゃべりたがらない。

ヒカリも、アスカが教えてくれたこと以外、聞こうとしなかった。

そういった事は、わきまえている少女である。

だからこそ今日の事について、聞くのが躊躇われるのだ。


『触れられたくない事』


それに当たってしまうことを恐れている。


「見ている事しか出来ないの?」


少し悔しそうな呟き。









鈴原家。

トウジは、すでに眠りの世界へと旅立っていた。



「・・・・・むにゃ・・・・・めし・・・・・」



食べ物の夢を見ているようだ。

しかし、寝ているときも相変わらずのジャージ姿だ。

この少年の特長は?

そう訪ねられたときに、思わず『食い物』『ジャージ』等と言ってしまいそう

である。



「・・・・・こんなに・・・・・し・・しあわせや・・・・・」



鈴原トウジの幸せな夜は更けていった。









相田家。


「ぐふ、ぐふふふふふ・・・・・」


何やらカメラを持って、不気味な笑いを上げている。

そして彼の周りには、マナの写真が大量においてあった。

どうやら今日一日で撮ったモノらしい。

だからといって彼、ケンスケはマナのファンというわけではない。


「ふふふ、久しぶりのヒットだ・・・・・儲かる、儲かるぞ・・・ふふ・・ふ

ははははは・・・・・」


まあ、こういった訳である。

アスカ、レイ、カオルに続き、四人目の売れ筋である。

おまけにマナは性格も良さそうであるから、他の三人の売り上げを越えるかも

しれない。

笑いの止まらないケンスケであった。


「新しいカメラが買えるかも・・・・ふふ・・ふふふふふ・・・」


彼の笑いは一晩中続く。









渚家。

あの事件以来(レイに『渚の乱』等と付けられていた)どこかイってしまって

いるカオルは、家でもイっていた。


「ふんふんふん・・・・んふんふふ・・・ふんふん・・・ふんふん」


何の曲にもなっていない鼻歌を歌っている。

おまけにベッドの上で、ヨガのポーズをとりながらだ。

危ない、危なすぎる。

よほど色魔呼ばわりされたのが、聞いたのだろうか。

レイさえいなければ、今頃幸せな学校生活を送っていただろうに。



ところが・・・・・。



「霧島マナ・・・・・か」



その言葉を呟いた途端、うって変わった真面目な表情になる。

相変わらずヨガのポーズはとったままだが。


「どういうつもりなんだ・・・・・・」


その呟きを最後にまたもやイってしまうカオル。


「ふん・・・ふんふふふん・・・・・ふんふんふふんふん・・・」


いまいち理解の範疇を越えている奴である。


「ふん・・・・・ふふふふふん・・・ふんふふーんふん・・・・・」


これもまた一晩中続くのであろうか。











第三新東京市内の路上。

一人の教師が、酔っぱらってゴミと共に眠っていた。


「・・・・すぅ・・・・ビール・・・・ビー・・・・ル・・・」


良いのだろうか、こんな事で・・・・・。


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ver.-1.00 1997-05/21公開
ご意見・感想・誤字情報などは kazukun@mxv.meshnet.or.jpまで。

 [葵]さんの『妖精の憂鬱』第五話、公開です!

 マナがいよいよ怪しくなってきました・・・
 彼女(?)は何者なんでしょうか?
 ・・・・伏線から読みとるのも、このまま集結するのを待つのも楽しい展開です。

 委員長の優しさが溢れ、
 トウジの脳天気が、ケンスケの危なさが炸裂して、
 ・・・・カヲルはなんなんだろう(^^;

 アスカとマナの明日、一体どうなるんでしょうね。

 さあ、訪問者の皆さん。貴方も推理を働かせて展開を読んでみましょう!!
 それを葵さんに聞いてもらうのも楽しいかも?!


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