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Lust Update 1997/06/05

書いた人 まさひこ(From IN THE OTHER WORLD)

掲載してくれた方(Thanks!!) KanSinさん〜めぞんEva大家さま〜

 

 

 

「…あ…おはよう…アスカ…」

 

「あ、おはようシンジ!!」

 

いつも通り、シンジが少し送れて迎えに来てくれた。

今日は走って学校に行かなくてもいいかな?

にしても、今日のシンジ、暗い…

可愛いアタシの笑顔のあいさつ見ても、笑顔一つ返さない。

やっぱ、駄目だったのかな…

アタシ、喜んでいいのかな?

でも、シンジ…ホントに悲しそうな顔してる…

でもアタシだって、気になって昨日はずっとこんな顔してたはず…

確かに進めたのはアタシ…

迷ったけど、シンジのこれ以上困ってる顔、とりあえず見たくなかったから…

だから進めたし、相談にものって、お膳立てまでしてあげた…

ホントは昨日、TELしても良かったけど…

…結局できなかった…

 

「で、どうだったのよシンジ?」

 

「結果を聞かせてよ」

 

「……………」

 

シンジは黙ってうつむいちゃった…

確かに、その顔と態度見れば聞かなくてもわかるけど…

でも、何故かアタシは、シンジの口から結果が聞きたかったんだ。

意地悪な女かもしれないな。進めたのもアタシなのに…

直接結果を聞けば、安心するアタシと、シンジが可哀相だと思うアタシ…

そのふたりで葛藤する羽目になるのはわかってる…

でもやっぱり、聞かずにはいられなかった…

 

「ねえ、黙っていちゃ、わかんないわよ!?」

 

「…駄目…だった…」

 

その言葉を聞いた時、やっぱりアタシは、ホッとした。

それと同時に、シンジがやっぱり可哀相とも思った。

私の目の前でこんなに悲しそうな顔してるんですもの…

でも私には、ホントにしたいことは…何もしてあげられないんだろうな…

ううん、しちゃいけないと思う。

だって、今迄通りシンジとこのままの関係でいたいから…きっと…

 

「と、とにかくシンジ学校行こうよ?」

 

「歩きながら話は聞いてあげるからさ…」

 

「このアスカ様が慰めてあげるから…」

 

「…うん…ありがと…アスカ…」

 

シンジのその言葉を聞いた時、

やっぱりアタシはホントの意味で、シンジを慰めてあげたいと思った。

偽りの自分じゃなくて、ホントのこころを前面に出してシンジを慰めてあげたかった…

でもそれはきっとかなわぬ願い…

今のままがいいに決まってる…そう、今のままが…

 

「で、実際の所どういう成り行きだったの?」

 

「…どうもこうも…」

 

シンジはそして、アタシの方なんか、一度も見ずに話しはじめたの…

アタシのホントの気持ちも見えてないみたいに…

 

 

piral ove

 

arst piral〜

 

 

「…ごめんなさい…」

 

夕焼けの光が教室を包み込む。

何とか聞こえたのは、目の前の少女の呟く声。

その後は静寂のみ。

だけどシンジには、その言葉の後にベートーベンの「運命」が聞こえた気がした。

いや、心の中で大音量で鳴り響いてるみたいだった。

 

その原因を知るには、今から少し前の、少女と少年の会話を知る必要があるようだ…

 

 

「…碇君…」

 

「あ…ご、ごめんね綾波…こんな時間に呼び出したりなんかして」

 

放課後、シンジはひとり机に座って、マヤ先生に言われた通り居残り用の課題をしていた。

でも、今日の様な簡単な課題で、悪い点数を取ったのはわざとだった。

案の定、今日の居残りはシンジ一人のみ。

そして手はず通り、その少女は教室にやってきてくれた。

 

「…帰る途中…惣流さんから聞いたから…碇君が…大事な話があるからって…」

 

「…教室にいるから…行ってあげてって…」

 

「…うん…来てくれてありがとう…」

 

「…話って…何?…」

 

そう言って綾波、綾波レイはシンジの目の前に来る。

じっと見つめる、そのふたつの赤い瞳。

本当はその瞳を見つめ返したかったが、シンジにはできなかった。

目の前のノートパソコンのディスプレイを見ながら、シンジは大きく深呼吸した。

無言のふたりの間にあるのは、ノートパソコンの冷却用ファンが回る音だけ…

そして、意を決したようにシンジは顔を上げた。

目の前に広がるレイの顔。

いつも通りの無表情な顔。

だけどシンジにとっては、特別な意味のある人の顔。

わずかに唇を震わせながら、シンジはレイに話しかけた…

 

「…ねっ、ねえ綾波…」

 

「…何?…」

 

「綾波はさあ…いっ、今付合ってる人っているの?」

 

「…付合ってる…人?…」

 

「うん…要は恋人って事だけど…」

 

「…恋人…」

 

「そっ、そう恋人って今…いるの?」

 

レイはいったんシンジから視線を外すと、何処か遠い目で窓の外を見た。

視界に広がるは、夕焼けに包まれて黒く見える第三新東京市の中心部。

幾つかの高層ビルのシルエット…

レイはシンジの方に視線を戻す。

 

「…いないわ…」

 

「…わたしに恋人は…いない…」

 

「そっ、そうなの?」

 

それを聞いて、シンジは少し緊張感が抜けるのを感じる。

気持ち顔に笑みが走る。

再びシンジは大きく深呼吸して、レイに話しかける。

 

「な、なら、お願いがあるんだけど…」

 

「…何?…」

 

「その、恋人がいないなら…ぼっ、僕と…」

 

「…僕と…付合って欲しいんだけど…」

 

「…碇君と…付合う…わたしが?…」

 

「…う、うん…できれば付合って欲しい…」

 

「…それは…碇君が…わたしの恋人になるって事?…」

 

「ま、まあそうなるのかな…駄、駄目かな?やっぱり…」

 

テレまくって真っ赤っかのシンジの顔とは対照的に、レイの顔はいつも通り無表情のままだった。

ただその顔の中で唯一赤いのは瞳の色だけ…

シンジは一度唾を飲みこむ。

ここが勝負の分かれ目、そうターニングポイント…

レイの返答をシンジは待つ。

流れる静寂の時…

 

そして、レイの口から出た台詞が、冒頭の台詞だったのだ…

 

「…ごめんなさい…」

 

「…わたし…碇君の恋人には…なれない…」

 

「…今は…なれないから…」

 

「…付合う事は…できない…」

 

「…ごめんなさい…」

 

二度目のゴメンナサイの時も、シンジの心には「運命」が流れていたが、

何とか気力を振り絞って返答した。

ここで黙り込んでしまうのは、一応の男としてのプライドが許さなかった…

 

「…う、うん…わかったよ…」

 

「あ、綾波が謝る必要なんて、ないんだからさ?」

 

「ぼ、僕の方こそゴメンね…無理なお願いしちゃって…」

 

「…碇君…どうして?…」

 

「…へっ?…」

 

「…どうして…わたしと付合いたいの?…」

 

「どっ、どうしてって…」

 

「すっ、好きだからに決まってるだろっ」

 

「…綾波…が…」

 

そうシンジが言った時、一瞬レイの表情が変化したが、

うつむいていたシンジにはそれが見える訳もなかった。

レイは、再び窓の外に視線を向けながら呟いた…

 

「…そう…あ…ありがと…」

 

「…えっ!?…」

 

シンジは自分の耳を疑う。

自分の告白を拒否したレイが、好きだといった事に対していった言葉に…

 

…あ…ありがとう…

 

シンジにはその言葉が、レイのその台詞が、一体どんな意味を持っていたのかわからなかった。

ただ事実に変わりはないのだけがわかった。

自分はレイにフられたという事実には…

レイは、そのままシンジの方には振り向かずに教室のドアの方へと歩いていく。

 

「…わたし…約束があるから…」

 

「…じゃ…さよなら…」

 

そう言い残すとレイは教室の外へと出て行く。

シンジはさよならも言わないで、ただ椅子にじっと腰掛けて廊下の方を見ているだけだった。

聞こえるのは徐々に遠ざかってゆくレイの足音と冷却ファンの音…

そして聞こえる音はひとつになる。

夕焼けの光に包まれながら、シンジはしばらくそのままでいた。

そのまま廊下の方をずっと、見ていた…

 

 

 

「…と…いうわけ…」

 

「…やっぱり駄目だったよ…」

 

「…最初からそんなに期待はしてなかったけど…さ…」

 

「面と向かって言われると…やっぱりショックだったなあ…」

 

「…そっ…か…残念だったね…シンジ…」

 

歩きながら見えるシンジの顔は、ホント悲しそうだ。

よっぽどショックだったのね…

そりゃ、アタシの知る限りではアンタが女の子に告白したっての、初めてだもんなあ…

で、初めてにしてあえなく玉砕…フられるってやっぱショックなんだなあ…

今までアタシがフってきた男の子達もこんな顔していたんだろうか?

そう思うと何か悪い事したって気になる…

でもそんな事言ってたら、きりないもんね…駄目なら駄目って言った方がそいつの為よっ!!

にしても…今の話を聞いているとなんか変な気がするなあ…

優等生が「…今は…なれないから…」って言った事と、

シンジが好きって言った時に「…ありがとう…」って言った事…

この2点がどうも納得いかないのよね…

これじゃあ、”そのうちいいわよっ”て事にも受け取れるじゃないの!?

この事に気づいてるのかしら?バカシンジったら…

でもこの様子だとそれどころじゃないみたい…

まあ、今回はフられたっていう事実には変わりないもんねえ…

さてと、アタシはどうすればいいのかな?

この事は言うべきかな?

いわなきゃ駄目よね…

でも、変に希望持たせても余計傷つくだけかも…

でも、やっぱり言わないと駄目よ!!

またシンジの笑顔が見れるようになるだけでも、言う価値はあるわ…

でも、ホントは…ホントのアタシは…言いたくないはず…

 

「ねえ、シンジ、今の話を聞く限りだとねえ…」

 

「今回はフられたけど、まだチャンスがないって訳じゃあないみたいなんだけど…」

 

「…えっ!?それは、どういう事なのアスカ?」

 

「それは、優等生がアンタに言った台詞から分かたっんだけど…」

 

そしてアタシは、シンジにさっき気づいた事を丁寧に、話してあげた。

やっぱり思った通り、シンジの顔に笑顔が戻ってきた。

…よかった…

でもホントにこれで良かったのかな?

アタシにはわからない…ううん、わかりたくない…

 

「そっか、言われてみればその通りかもしれないね…」

 

「まだ、ほんの少しだけど希望はあるかもしれないよね?」

 

シンジがアタシに笑いかける。でもその笑顔…アタシの為じゃないのよね…

 

「そうよシンジ!!せっかく、はじめて本気で女の子の事好きになったんでしょ?」

 

「諦めるのはもったいないわよ…ね?」

 

これがアタシの本心なんだろうか?

ホントにシンジに、あの優等生の事を諦めて欲しくないんだろうか?…

たぶんウソ…これはきっとアタシの本心じゃない…

でもそれは口に出しちゃ駄目…

今のままの、今のままでいたいのなら…

今のままが一番いいの…きっと…

 

「とにかく逃げちゃ駄目よ!!」

 

「たとえアンタが何回フられてこようとも、このアスカ様が何回でも慰めてあげるから…」

 

「…アスカ…」

 

「また別の方法を考えましょ?いきなり告白ってのが、マズかったのかもしれないしさ」

 

「今度はあの優等生と、もっと仲良くなれる方法を考えてあげるから」

 

「だから逃げちゃ駄目よ!!あの子からも、現実からも…わかった、シンジ?」

 

「…うん、わかった…」

 

「…ホント…いつもありがと…」

 

「な〜によシンジったら…アタシとアンタの10年来の仲じゃない!!」

 

「また、マックで奢ってくれればいいだけよ!!」

 

アタシはそう言ってシンジの頭を軽くはじいた。

やっぱり、この程度のふれあいで満足しておくのがベストなのかな?

近すぎず、遠すぎずってやつ…

いつまででも幼なじみの関係…か…

シンジの笑顔を、これだけ近くで見れるだけで、

アタシは満足しなきゃいけないのかな?やっぱり…

それより、シンジに言ったあの台詞…

あれはきっと…アタシがアタシ自身に言った台詞よね…

 

逃げちゃ駄目よ!!

 

わかってるけど…

アタシは今迄…逃げてきていると思う…

そう、自分の正直な気持ちから…

 

…あ〜あ、アタシどうしたらいいんだろう?…

 


次回に続く
ver.-1.00 1997-06/06公開
感想・ご意見・誤字情報などは こちらまで!

 

NEXT econd piral〜

 

Copylight 1997 まさひこ

〜ヘボ作者より〜

めぞんEvaの住人、ならびに御来訪して下さった皆様、はじめまして!!

知る人ぞ知る(単に無名なだけ)エヴァ小説HP、「IN THE OTHER WORLD」

を公開させて頂いてる、まさひこと申します…

今回晴れて、めぞんEvaの住人にさせて頂けました!!(してると思うんですけど…)

いつも、自分のHPではテンションの低いラブコメ(笑)や、ちょっとエッチなお話を書いてる

ものですから…今回は少し違ったお話を…と考えて頑張ったんですが…

すみません…つまんなくて…(揺れるアスカの想いを上手く伝えたかったんですが)

が、どうやら続いちゃうみたいです…このお話…(今はそのつもり)

だって、まだレイが”今は付合えない”って言った意味や、アスカの想いの行方、書いてませんからね…

気長に待っていてください…(なんせ、自分のHPの方もあるもので)

最後に、こんな駄文を快く(わたしはそう信じている!!)掲載してくださった、

めぞんEva大家

の神田さんにお礼を言いつつ

今回は失礼させて頂きます…


 本日二人目、
 めぞんEVA通算34人目の新住人[まさひこ]さん、ようこそ!!

 音楽を聴くのが好きなまさひこさんには角部屋に入ってもらいました(^^;
 ここならVISI.さん菊地さんのお二方にしか迷惑かからないし・・・(^^;;;

 そのまさひこさんの第1作は『Spiral Love』。公開です!
 

 「シンジが好き」その一言を口にすることで壊してしまうかもしれない今の関係。
 今の気の置けない関係を失うのが怖い・・・・
 その為にシンジの恋を応援までしてしまう・・・・

 アスカの揺れる心が伝わってきます。
 彼女がこれからどう行動を起こすのか、
 彼女の思いは伝わるのか、
 続きを読んでいきたいですね。
 

 6月6日は
 まさひこ@IN THE OTHER WORLDさんと
 のっぷ@妄想廃棄場さんという
 お二人のEVAページマスターがやってきた素晴らしい日です(^^)

 訪問者の皆さん、ぜひお二方のページにも遊びにいって下さいね!

 

 

 まさひこさん、「絆シリーズ」系の話も
 私、好きです(^^;


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