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新説エヴァンゲリオン
MISS MOONLIGHT



AD2022年もあと僅かとなった。



その日、綾波レイは薄暗くなった第三新東京市街を走っていた。

恋人との待ちあわせの時間はすでに10分ほどすぎている。

だから彼女は、いつも待ち合わせに使っている喫茶店へと急いだ。





その日、碇シンジは薄暗く落ち着いた雰囲気の喫茶店でアイスティーを飲んでいた。

恋人との待ち合わせの時間はきっともう過ぎているだろう。だが彼は時計を見ることもなく

のんびりとストローに口をつける。彼は、これから始まる恋人との最高の時間を、こうして待つ

のが大好きだった。しかし、今日の彼の顔がいつもと少し違うのはその胸にある、決意と 不安と期待のせいだろうか。



飲み終えたアイスティーをウエイターが下げた頃、恋人は息を弾ませながら店にやって来た。

「レイ、こっちだよ」

「遅れちゃってごめんなさい、シンジさん」

「いいよ、僕も今来たところだから」

レイはテーブルの上の伝票と湿ったコースターに気づいていたが、それを言ったりはしない。

それは、シンジの気持ちを無駄にしてしまうということだから。

だから彼女はちょっと笑ってアイスティーを2つ頼む。

「ごめんね。突然電話しちゃったりして・・」

「いいの、うれしかったわ。それより話って何?」

「うん・・」

シンジは何を思っているのだろう。不安や恐怖、そんなものが無いと言えば嘘になる。

しかし彼がいつも願っているのはレイの幸せ、ただそれだけだ。だから彼はほんの一握りの 勇気を出す。

「僕たちが付き合い始めて、そろそろ1年だね」

「そうね」

「僕は・・・人を愛するってことの意味はまだ良く分からない。けど・・・・アスカやトウジ、洞木さん

やケンスケやミサトさん、皆幸せになってほしいと思ってる。だけど、レイだけは違うんだ。

レイは・・・・僕が幸せにしてあげたい。僕のやり方でレイに幸せをあげたい。それが人を愛する

ってことなんだとしたら・・・・僕はレイを愛してる」

レイの肩がピクンと跳ね上がった。



「僕と結婚してほしい」



レイが、自分は泣いているのだと気づいたのは、シンジが差し出したハンカチを見た時だった。

「な、泣かないでよ」

それは目の前にいる、シンジからもらった涙。

「あなたは・・・いつも私のほしいものをくれるわ。私の聞きたい言葉をいつも言ってくれる

だって、私の幸せは・・・・・あなたといることだから」

「レイ、・・・・・これを・・・・・・・・・」




やがてアイスティーの氷が溶けるころ、レイの左手の薬指には銀色の指輪が光っていた。




その日の深夜、シンジは1年ぶりに父に電話をかけた。彼はしばらく話をしていたがやがて

彼の目から涙があふれ出した。

シンジが父の前で泣いたことは何度かあった。だが、 喜びの涙を流したのはこれが始めてだった。




AD2023年、箱根にある小さな教会で、ささやかな結婚式が行われていた。

「汝、碇シンジは綾波レイを妻とし、生涯愛することを誓いますか?」

「誓います」

あれから8年、彼は背が伸び、肩幅も広くなり、そして精神的にも十分に成長していた。

「汝、綾波レイは碇シンジを夫とし、生涯愛することを誓いますか?」

「誓います」

あれから8年、彼女は、今やすべてをその心に持っていた。 美しいその顔に掛かるシルクのヴェールが揺れている。

「では、誓いのくちづけをもって2人を夫婦と認めます」

向かい合った2人の唇がゆっくりと近づいて、そして重なった。それはたくさんの想いが詰まった、 神聖なくちづけだった。

「2人の未来は神に祝福されました」

神父が退室していった。

あの、1番つらかったときに知り合った親友や、かつての上司の祝いの言葉が降り注ぐなか、教会の玄関が開き

1人の男性が入ってきた。見る者を萎縮させてしまうその威圧感と、圧倒的な存在感を連れて。







「父さん・・・」

「司令・・・」

「レイ。シンジ」

水を打ったような静けさの中、碇ゲンドウは言葉を紡ぎ出した。

「私は、今更2人に祝いの言葉を送って良い人間ではない。許してくれなどとムシのいいことを言う

つもりも無いし、何を言えば良いのかもわからん・・・だから、この言葉を送らせてくれ。これは

昔、ある女性が私に言った言葉だ」

一息にそこまで言ったあとゲンドウはサングラスをはずした。

「女は自分の体の中に、生まれつきからっぽの部屋を持っている。男は、そこに自分の愛の全てを

注ぎ込み、そこから新しい命が生まれる。それが、愛し合う2人にとっての、本当の幸福だ」

「父さん・・・・」

「シンジ、レイを幸せにしてやってくれ」

「司令・・・・」

「レイ、これからは、シンジと2人で幸せに生きろ。お前達は誰よりもその権利がある。」

シンジとレイは涙を流す。ゲンドウが、外したサングラスを再び掛けたのはなぜだろう。





そしてこの日、綾波という姓がこの世から消え、神の名の下に、2人は夫婦となった。












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ver-1.00 1997-12/29公開
ご意見、感想などは こちらまで!

まいど。鈴木です。

アスカだけにクリスマスの話を書いたので、不公平かな、とか思って綾波にはこんな話を 書いてみました。

どうでしたか?

実はこの話は、もうずいぶん前に書いてそのままだった話を、手直ししたものです。

どうでもいいけど、シンジがちょっと格好良すぎだったかな。まあ、いいや。

相変わらず適当な作者ですね。

それでは、今回はこの辺で。

じゃね。


「黒夢」のナンバーから「MISS MOONLIGHT」を聞きながら


 鈴木さんの『MISS MOONLIGHT』、公開です。
 

 

 綾波な人、大喜び(^^)/
 アスカな人、ダメージド(^^;
 

 LRSとLASの両方を発表する鈴木さんですから、
 どちらかのキャラに主入れのある方などは
 読み始める前にドキドキしているかも(笑)
 

 

 クリスマス記念ではアスカを、
 年末ものではレイを。

 二人ともそれぞれ幸せになっていって・・・
 

 決めるときに決めたシンジ、
 成長していますね(^^)
 

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 どちらのキャラも幸せにする鈴木さんに感想メールを送りましょう!


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