TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Tossy-2]の部屋/ NEXT

タイトル



第2話 「使徒、襲来」
Story:02 ANGEL ATTACK

Cパート



再起動


 「シンジ…」
 「碇君…」
 「こら、動け!戦闘を撮らせてよ!」
 「街破壊されてたまるかい!」

 4人の願いが通じたのかどうかはわからない。だが、ケンスケのビデオカメラのファインダーの中で、初号機は指をピクッと動かした。
 あまりに細かい動作だったので、気づくものはいなかったが。

 「碇君…」
 「シンジ…」

 レイとアスカは、もう一度祈った。
 シンジが無事で帰ってきますように…と。



 「ふん…とどめをさしてやるか」
 サキエルは、つまらなそうに初号機に向かっていく。

 数歩近づいたときだった。

 初号機の方から、何か音が聞こえてきた。

 グルルルルル…

 低い、うめきだった。
 そして、次の瞬間!

 初号機の片目に、光が戻った。
 右目はサキエルにつぶされたため光ってはいないが、左目は沈黙前に比べ激しい光を放っているようだった。

 「ま、まさか…」
 サキエルは、一瞬たじろいだ。

 初号機でさえも、困惑せずにいられなかった。
 (シンジ君!?)
 呼びかけるが、声の反応はない。
 しかし、それでも…。

 (もしかして…目覚めてしまったの?)

 その明らかに戸惑っている声に反応するかのように、初号機は顔を上げた。
 そして、天に向かって吠える。

 グオオオオォォォォ……

 いつの間にか日が暮れた空には、白い月と、星達が浮かんでいた。
 初号機の咆哮は、夜空を突き抜けてどこまでも響いていく。

 「目覚めてしまったか…」
 サキエルは、非常にまずい、という口調でつぶやいた。

 「だが…私はお前を倒す!」



 オオオォォォ…

 しばらく咆哮をあげていた初号機は、満足したのかやっとサキエルの方を向いた。
 光を放つその目が夜の闇にやけに映える。

 行くぞ!
 先に仕掛けたのはサキエルだった。
 目からビームを放つ。

 しかし、その光は初号機によっていとも簡単に防がれてしまう。

 次の瞬間、もう初号機の姿は元の場所には無かった。

 初号機は、地を蹴って空中にいた。
 使徒のところまで跳んでいくと、落下を利用してサキエルに蹴りをいれた。
 吹っ飛ぶサキエル。

 「…くそっ」
 更に走って向かってくる初号機を確認したサキエルは、ATフィールドを張った。

 ATフィールド。
 Absolute Terror FIELD、それは心の壁。
 使徒が持つ、あらゆる攻撃を反射するバリア。

 初号機は、瞬時に張られたATフィールドに顔から突っ込んだ。
 顔を離して、何度か叩く。
 しかし、そんなことで破れるようなものではない。

 「で、どや?」
 「黒い方は…バリア張ってるみたい。紫の方は、突破しようとしてるよ。」
 「ふーむ…やっぱりこの世界っちゅうのは不思議なもんやな。」
 「全く。」
 シェルターでは、トウジとケンスケがこんな会話をしていた。



 ガンガンガン…

 いくら叩いたところで、ATフィールドが壊れるわけもない。

 初号機は、一旦叩くのをやめ、折られた左手を振り上げた。

 瞬時にその手が再生する。
 ぶらぶらしていたのが嘘のようだ。
 良く見ると、貫かれた右目にも、うっすら光が戻ってきつつある。

 初号機は、それを確認すると再びサキエルのATフィールドに手をかけた。
 中心に爪を立てるようにしている。
 だんだんと、その手が食い込んでいく。

 ある程度まできた時、初号機は一気にフィールドを引き裂いた。

 何人にも侵されざるはずのその領域。
 その領域は、いま初号機によって破られた。
 2行上の定義と共に。



 「な、なんて奴だ!」
 サキエルは、驚きを隠せない。

 そんなことお構いなしに、初号機は侵入してくる。

 「くっ!」
 サキエルの目が光り、再びビームが放たれる。
 だが、それもまた初号機にはじかれてしまっていた。

 ついにサキエルは、初号機に捕まった。

 お返しとばかりに、サキエルの両腕を引きちぎる初号機。
 その切断部からは、青い体液が漏れた。
 その体液は、地面に青いシミを作る。

 「・・・」
 驚きで何も言うことが出来ないサキエル。

 初号機は、再びサキエルにキックを食らわした。
 サキエルは、地面に倒れ込んだ。



 初号機が、ゆっくりと寄ってくる。
 その右目はほとんど復活しているようだ。

 初号機は、サキエルに馬乗りになると、その肋骨とおぼしきものを引きちぎった。
 再び、サキエルの身体から体液が溢れ出す。

 その骨(?)を両手でしっかりと持ち、初号機はサキエルの光球(コア)に突き刺し始めた。

 何度か叩いて、ようやくひびが入る。
 次の攻撃で、かけらが周囲に飛び散った。

 (…もはやこれまで)
 そう思ったサキエルは、初号機の頭にとりつく。

 身体を丸め、サキエルは、自爆した。



 「う…」
 爆発のまぶしさで、シンジは気づいた。

 (シンジ君! 大丈夫!?)
 (あ、うん。多分…)
 (良かった…)
 (でも、僕どうしちゃったのかな。あの後、なにかこう身体がふわっとなるような感じが…)
 (あなたの力が目覚めたのよ、きっと)
 (僕の…)
 (そう。詳しくは後で話すわ。早くみんなのところに戻らないと)
 (そうだね)

 シンジは、爆炎立ちこめる中、人間の姿に戻ると、再び山の方へと走っていった。



一難去って…


 「ふぅ…終わったんだな。」
 シンジは、安堵の表情を浮かべた。

 「…早くしないと。」
 自分が出てきたシェルターの出口を見つけたシンジは、歩く速度を速める。

 あれだけの大爆発の後よくまあバレないで…と言いたい人がいる(本当か?)と思うので一応説明しておく。
 爆発と同時にATフィールドを展開、それに包まれたまま元に戻れば爆発でカムフラージュできる、というワケ。

…とそんなこんなの内に(?)入り口に着いた。

 電子ロックに視線を滑らせる。
 「ピッ」という電子音と共に、表示が「OPEN」になった。
 ハンドルを回して…周囲にだれもいないことを確認してサッと潜り込む。

 「…なんでこんなことしなきゃならないのかな…」
 一連の作業を行いながら、シンジはつぶやいた。

…とは言いながらも、シンジの手は作業を続けている。
 「カチッ」という音と共にドアが閉まり、鍵がかかる。

 これでOKだ。

 シンジは、ホールへと急いだ。



 ホールに帰ってくると、ヒカリ・ケンスケ・トウジ・ユイ・ゲンドウ・レイ・アスカが待ちかまえていた。
 彼ら(レイ・アスカは除く)は、シンジを見つけると質問責めにする。

 碇君! 一体どこに行ってたの!?
 「そうだよ。心配したんだぜ」
 「便所にしては…長すぎるで」
 「シンジ、まさか外に出てたんじゃ…」
 「ふっ、問題ない」
…ゲンドウはやっぱり何を言ってるのか分からない。

 「あ、あの…」
 うつむいてしまうシンジ。

 やっぱり外に出てたの!?ヒカリが詰め寄る。
 「あ、あの…それは…」たじたじするシンジ。

 「待って」
 そこにレイが割り込んできた。
 「碇君は、あの使徒と…モゴモゴ」
 言われちゃまずいというわけで、シンジはレイの口をあわててふさぐ。

 (だ、だめじゃない。秘密だよ、って…)
 (ご、ごめんなさい…)
 2人の心の中の会話。

 「い〜か〜り〜く〜ん! やっぱり何かやましいことがあるのね!?」
 「シンジ!やっぱり外に出てたのか!?」
 ヒカリ&ケンスケが再び詰め寄る。

 「あ、あの…」
 またもやうろたえるシンジ。

 と、そこへ、

 「あんたらバカぁ!?」
 との声。

 アスカがヒカリ達の後ろに立っていた。
 「おおかた迷ってでもいたんでしょ! 第一、危ないのに外に出て見に行く、なんて根性のある奴だとも思えないわ!」
 「ま、まあそう言われてみれば…」
 「ひ、ひどい…」
 「何よ、ホントのことでしょ!?」
 「う…うん…」
 一応この辺で妥協しておかないと…と感じたシンジはとりあえず返事をした。

 「あれ、惣流。なんで外のこと知ってるんだ?」
 ケンスケが聞く。

 ギク

 「あ、あれだけドカンドカン聞こえてれば危ないと思うのは当たり前よ!」
 「ま、それもそうだな」

 帰り際、アスカが「感謝しなさいよ」と他の人に聞こえないように言う。
 「あ、ありがとう…」
 シンジはちょっと照れながらも小さい声で言った。
 アスカは、聞いたのか聞いてないのか、止まらずに進んでいった。



 さて、とりあえずほとぼりが冷めたところで、ユイが切り出した。

 「ねえシンジ。」
 「何?」
 「さっきねぇ、外にね…」

 ギク

 (まずい…見られたかな?)
 何とか平静を装ってシンジは言う。
 「な、何。」

 「非現実的なんだけどね…シンジにも見せたかったわ…。ねぇ、あなた」
 「そうだな。」
 「…そ、それで、何がいたの?」
 冷や汗だらだらながら笑顔を作って言うシンジ。

 「そうそう。非現実的なことに、表に訳分からない生き物らしき物と、紫色の巨大ロボットがいたのよ。」
 「み、見間違いじゃ…ないの?」  (← 『紫色の巨大ロボット』の正体)
 「あら、本当よ。相田君と鈴原君も見たって言うし。」
 「そ、そう。」
 「はぁ…あんな生き物見たの初めて。研究材料にしたかったわ…フフフ…」
 「か…母さん?」
 ユイは半分自分の世界にイっちゃっている。

 「ふむ、あまり驚かないな。もしや…」
 ゲンドウが冷静に言う。

 そ、そんなことないよ!
 あわてて力一杯否定する。

 「お前、本当に何も知らないんか?」
 トウジがいつの間にか来ていた。

 し、知らないよ!
 思いっきりあわてて否定するシンジ。

 「…怪しいな」
 「そうやな」
 2人の目が鋭くなる。

 (ひー、誰か助けてぇ!)
 心の中で叫んでみるが、誰も助けてくれる気配はない。

 と、その時。

 シンジの手を引く者有り。

 「誰?」
 後ろで手を引いていたのはレイだった。

 「綾波…」
 「碇君、ごくろうさま…」
 そういってレイは微笑んだ。

 「うん…」
 シンジは少し赤くなったが、微笑み返す。

 「やっぱりできてたんだな、あの2人」
 「そうみたいやな」
 トウジとケンスケ他クラスメートが、2人の世界を作っているシンジとレイを冷ややかに見つめていた。

 「碇君と綾波さん…。私と鈴原もあんな感じで…あぁ、いいわぁ…」
 ヒカリは、1人の世界に入っている。

…その後、結局否定も空しくシンジが叱られたのは言うまでもない…かも。



 シェルターから出た後。

 学校に一旦寄って荷物を持ち、すぐ下校となったわけだが、3人は近くの公園に来ていた。
 公園に、人影は他にない。

 シンジが、今日の事を話している。

 「…で?」
 「それで、右目を貫かれてさ…。」
 「ふーん、でももう何ともないじゃない。」
 「そうみたいだね。」
 「碇君…無事で良かった…」
 レイの目が潤んでいる。

 「あ、綾波…」
 「碇君…!」
 レイがシンジに抱きつく。

 「大丈夫だった、碇君?」
 「う、うん…」
 「そう…よかった…」

 「あらあら、見せつけてくれるわねぇ…」
 脳内で核融合が起きようとしているシンジを見て、アスカは笑った。
 だが、同時に心にもやもやした何かが広がる。

 (やだ…アタシ、妬いてるの?)

 「で、そのあとなんか身体が軽くなるような感じがして…」
 「なにそれ?」
 「知らないけど、気がついたら倒してたんだ。」
 「ふーん。」
 「初号機はね、『僕の力が目覚めたんだろう』って言ってるけど…」
 「力?…ああ、そういえばそんなこと言ってたわねぇ…」
 アスカは、弐号機の言葉を思い出した。

 『あなたの隠れた能力を、貸して欲しいのよ…』

 「で? その力ってどんなの?」
 「さあ、わからないよ。でも、多分…」
 シンジは、そういって手を前に突き出す。

 「?」
 アスカは、何をするのかと真剣に見ている。

 次の瞬間、アスカとレイは見た。
 突き出されたシンジの手から10センチほど離れたところに、オレンジ色の八角形の光が発生していることを。

 「…それは?」
 「壁…みたいなものらしいけど…」
 「ふーん…てことは、いつかアタシ達も出来るようになるのかな?」
 「多分ね。」

 シンジとアスカがそんな会話をしている間。レイはずっとシンジに寄り添っていた。
 (碇君…)



 その夜。
 シンジは、布団の中でこの間の事を思い出していた。
 目がさえて、眠れない。

 『戦って。私と一緒に。』
 『あなた達にしか出来ないの。』

 (…ホントに良かったんだろうか?)

 ふと、そんなことを考えてみた。
 もしあの時「戦うなんて、いやだ」と言っていたら…。

 その先を考えてみる。

 『ま、まあそういうことよ。それで、使徒がまたこの星を狙ってるのよ』
 『また、爆発を起こすの?』
 『まあ…、そうなるわね。最終的には』

 (…きっと、人間はみんな死んじゃうんだろうな。自分も、そして母さんや父さん、綾波も、トウジやケンスケも…)

 シンジの思考は、更に進む。

 (死ぬ? 死んでどこへ行くんだろう?)

 死、それは無へと帰ること。
 し、それはその肉体を浮かべていた時の流れから解放されること。
 シ、それは存在が消えて無くなること。 
 Shi、そしてそれは…みんなと別れること…永遠に。

 そこまで考えて、恐ろしくなった。

 (そんなのはイヤだ! 死にたくなんか…ないよ…)

 確かに、こういう生活は危険だ。いつ死ぬか分からない。
 でも、あの時拒絶していたなら、確実に人類全ては滅びるだろう。苦しみと共に。

 (死ぬなんて…そんなのは…イヤだよ…)

 この生活を続ける限り、シンジが死ぬ確率は非常に高い。
 だが…そうしなければ…恐らく100%だろう。
 だからこそ、あの時シンジは少しでも状況を変えようと努力した。
 それは、今まで流されるまま生きてきたシンジが、初めて自分で重要な判断をした瞬間だった。

 精いっぱい考えた後自分が言った言葉を、シンジは思い出した。

 『…わかった。手伝うよ。』

 その口調は、いつになく真剣なものだったことも、よく覚えている。

 (…きっと、あれで正しかったんだ、って思える日が…いつか来るよね…)
 そんなことを考えながら、シンジの意識はいつしかまどろみの中へと落ちていく…。

 次回予告

 再び使徒が襲来する。
 よく見ようと外に出てくるケンスケ・トウジ。
 そして、シンジの秘密は…。

 次回「友達の価値」。 この次もサービス…できればいいな…。


第三話に続く ver.-1.00 1997- 5/27公開

ご意見・感想・誤字情報などは VFE02615@niftyserve.or.jp まで。




 あとがき

 さて、第2話が完成しました。ひー、つかれた。

 戦う理由がちょっと1話で不明瞭だったので、おしまいに入れてみました。シンジ以外は、もうちょっと後で書きます。
 コアを壊されかけての自爆という点で同情を買い、まばたきがかわいいと言われたサキエルですが、やっぱり最期はこんなモンでしょう(^^;。ああ、哀れ。

 第2話が「使徒、襲来」と「見知らぬ、天井」相当ですから、第3話は「鳴らない、電話」と「雨、逃げ出した後」相当となりますね、多分。
 では、お楽しみに! (^^)/ 。



 Tossy-2さん『の新戦士 エヴァンゲリオン』第2話Cパート公開です(^^)/
 

 最初の戦いはシンジの暴走(覚醒?)によって決着が付きました。
 戦闘の流れはTVと同じなんですが、その中身は大きく違いますね。
 サキエルが『考えている』事とかの部分が興味深かったです(^^)

 シンジの決意、
 彼の周りの人々の思い・・・・

 次回以降にも連なっていきますね。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 一つの戦いを書ききったTossy-2さんをメールでねぎらって下さいね!


TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Tossy-2]の部屋