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エヴァンゲリオン パラレルステージ

EPISODE:04 / Keep alive as a human being.

第4話


生きていく






Cパート



決意


 「これは…私の心?」
 零号機を、そして自分の身体を浸食されていく苦しみにありながら、レイは言葉をしぼりだす。
 その視線は、シンジ=初号機にのみ向けられていた。

 (私は…私の心は、碇君を求めている)

 レイは、表情を暗くした。
 今、そのせいでシンジが困っているのを知っているから。

 (この使徒には、私の心が伝わっているのね…。私が碇君を求めるから、使徒は碇君ばかりを襲うのね…きっと…)

 レイの心が、またずきん、と痛んだ。
 同時に使徒の攻撃が繰り出される。

 (碇君…っ!)

 心の中でだけ叫ぶレイ。
 言葉が思うように出ない。
 それでなくとも、もう全身の感覚がしびれてきつつある。

 辛うじて避ける初号機に、間髪を入れず使徒は再び攻撃した。

 (碇、君…っ!!)
 その叫びと共に襲ってきた今までにない心の痛みに、レイの意識は知らない場所へと飛ばされた。

 (碇君……碇…く…)



 「うわっ!」
 さっきからたびたび襲ってくる使徒の先端を、シンジはほとんど神業的な才能(?)で避け続けている。

 零号機は浸食を受けて危険な状態。
 弐号機は電池切れ。
 残った初号機だけで、なんとか使徒を倒し、そしてレイを助けなければならない。

 その方法は、全く浮かばない。
 使徒が考える時間をも奪っている。

…と、また考えているところに、使徒が攻撃を仕掛けてきた。

 ビシュルッ!

 いつぞやの使徒の「光の鞭」のごとくしなやかに、使徒が襲ってくる。

 初号機は…シンジは、ただひたすら避ける。
 その考えていることはただ一つ。

 (使徒が精神浸食を始めた…。早くしないと、綾波が使徒に乗っ取られちゃう…)

 シンジは真実を既に知っている。
 レイの身体が人間のものとは違うこと。
 そしてそれが使徒と同じものであること。
 シンジは知り、そして受けとめた。自分が変わってしまったあの日から。

 だが、シンジはレイを完全に1人の「人間」として認識していた。
 レイにとってそれが幸せであろうということもある。
 他人とは違うモノの哀しさをも知っているシンジにとっても、それは望むべきことであった。

 人間に戻りたいとは感じている。
 ただ、それはもう無理な話だ。この身体に定着してしまった魂は、他の器にはもう戻れない。
 だいたい、元の自分の身体はもう無い。
 一生人間とは違うモノとして暮らしていかなければならない、その落胆。
 だが、それは乗り越えていかなければならないものだ。自分が自分として存在するためには。

 だからこそ、たとえ事実に反していても、シンジは、レイはそれを疑う余地はなかったのだ。
 第一、レイには心がある。使徒にはない、「心」というものが。

 だが、使徒にとってこれは好都合以外の何者でもない。
 使徒が精神に干渉するには、干渉対象が自分たちと同じ仲間であるか、またはそれに類する物と意志疎通が可能なモノに限られる。
 まして、自分たちと同じからだの持ち主であれば、使徒がそれに住み着くことも可能なのだ。

 だから、今使徒はレイの精神を乗っ取り、あわよくば身体をも乗っ取ろうとしているのだ。

 (綾波…!)
 シンジは、心の中で静かに叫んだ。

 ふと、先日の事が甦ってくる。
 『僕は、いつも綾波と一緒にいるから…』
 あの時レイが見せた微笑みを、シンジは思い出した。
 その微笑みが崩れることが、いやだった。

 だから。

 (綾波は、僕が守る。絶対に、守ってみせる!)

 シンジが次に思いだしたのは、「ヤシマ作戦」の時のこと。
 あの時、レイは身を挺してシンジを守った。

 (今度は、僕が守ってあげる番だ。あの時みたいに…)

 使徒の眩い光からシンジを守ったレイ。
 溶けていく零号機。
 叫んだ記憶。
 そして…あの時始めて見たレイの笑顔。

 (綾波を…綾波を、使徒のモノになんかしてたまるもんか!)
 固く決意したシンジだった。



 気づくと、レイは静かな空間の中にいた。
 闇。それだけが、その空間を支配している。
 だが、まるでスポットライトが当たっているようにレイの姿だけはくっきりと浮かんで見える。
 レイは、少しうつむいた姿勢で力無くそこに立ち尽くしていた。

 そんなところに、声が響きわたる。

 『私と、ひとつにならない?』

 その声を聞いたレイは、顔を上げる。
 真っ直ぐ前の方に、もう1人レイの姿をした何かが立っていた。

 同じ姿、同じ声。
 4つの赤い瞳の視線が、空中で交差する。

 レイは、口を開いた。

 「あなた、だれ?」

 もう1人のレイが繰り返す。

 『私と、ひとつにならない?』

 「あなた、だれ?」
 再びレイが問い返す。
 そしてつけ加える。

 「…私たちが使徒と呼んでいるヒト?」

 それに答えず、レイの姿をしたモノが言う。

 『私と、ひとつにならない?』

 「いやよ。」
 レイは、それを毅然たる態度で突っぱねた。



 零号機の防壁、全て突破されました!
 パイロットにも、浸食進みます!
 オペレータ達が報告した。

 「…レイ…」
 ミサトは、それをきっと睨んだまま立ち尽くしていた。

 (自分たちに、何か出来ることがないだろうか…?)

 必死に考えるミサトだったが、何も浮かんでは来ない。つくづく自らの非力を思い知らされるのだった。
 だがそれは、発令所の人間ほとんどに言えることだ。

 沈黙が辺りを埋め尽くす。
 後に残るのは、定期的に響く電子音と、コンピュータの作動音のみだった。

 発令所を、絶望が今まさに飲み込もうとしていた。



 「いや、あなたとなんかひとつになりたくない。」
 使徒に対しはっきりと嫌悪を表すレイ。

 『…どうして?』

 「あなたは私じゃないもの。」

 『そう…でも残念ね。もうすぐ私とあなたはひとつになる』

 「・・・」

 『もう、止められないわ』
 そう言うと、使徒は口元を怪しく歪めた。
 レイの微笑みとはかけ離れた、いやな笑み。

 「いや…」
 それに怯えたように後ずさるレイ。
 だんだんと追いつめる使徒。

 「碇君…」
 レイは、その名前を口にした。



 ポタッ…

 水滴がはねる音。
 その音に意識を取り戻すレイ。

 目の辺りがなぜか熱い。
 頬を水滴が伝わっている。
 汗などではなく、それは…

 「これは…涙?」
 再び落ちる滴を手で受けとめながら、レイは驚いていた。

 「…泣いているのは、私なの?」
 それでも止めどなく、涙は溢れてくる。

 ずきん…

 また、心が痛んだ。
 ずっと向こうで、初号機がまだ使徒に苦戦しているのが見えた。

 初号機の反応速度は目に見えて遅くなっているようだ。
 今までは、危なっかしくはあったが、ある程度余裕があった。
 しかし、今は。もう、余裕と言うよりほとんど間一髪。紙一重。

 (このままでは、いつかきっと碇君も…)
 レイは、そう思って悲しくなった。

 (私のせいなのね、全部。私が碇君を想うから、碇君は今こんな目に遭っている。いつも、私は碇君に迷惑ばかり…)
 あふれる涙。
 心の痛み。
 そして、レイはある決意をした。

 (碇君を…助けたい。私なんか死んだって構わない。かわりは、いるもの…いくらでも…)

 レイは、すぐ行動を起こした。




行動


 零号機のATフィールドが、反転しました!

 発令所は、再び活気を取り戻していた。
 しかし、その先に見えるのは喜びや幸せではない。

 「なんですって!?」
 「使徒を押さえ込むつもり…?」
 「まさか、レイ…」

 その不安は、現実のものとなる。

 「イマージェンシー・システムをセットアップしている模様です。」
 「零号機、システムが独立しました!」



 レイは、座席の腰の辺りにあるパーツを回転させた。
 するとそこには、小さなキーボードが現れる。

 ピッ、ピッ…

 確実に、一つ一つキーを押していくレイ。

 ピーッ!

 最後にエンターキーを押すと、「EMERGENCY SYSTEM」という文字列が、ディスプレイに小さく表示された。
 レイは、続いてコマンドを入力する。

 「MODE D」と。
 イマージェンシー・システム、モードDは、「自爆」を意味する。
 簡潔でありながら重い判断。

 しばしの迷いがあって、再びエンターキーが押される。
 すぐさま、ディスプレイには「MODE:D READY」と文字が出た。
 そして、傍らにレバーが出てくる。

 (これを引けば…)

 零号機のコアが暴走、零号機は爆発する。
 そして、使徒も。

 (碇君、ごめんなさい…)
 レバーに手をかける前に、レイはうなだれながらそう思った。
 再び、涙が頬を伝う。

 ごめんなさい、碇君…
 約束、守れない…
 私のために、この間したばかりの約束だったのに…
 碇君とした、初めての約束だったのに…

 でも、私は、私のせいで碇君は危険な目に遭った。
 だから、私は悲しいの。
 碇君には、生きていて欲しい。
 碇君を、助けたい。
 私は、代わりがいるもの。死んでも、代わりはいくらでも…

 だから、碇君は生きていって。

 碇君…
 私の、大切な…



 使徒にばかり気を取られていたシンジだが、零号機の異変にはすぐ気づいた。

 (ATフィールド反転? …まさか…)
 思いつつも、避け続けなければならない。

 (まさか…綾波、自爆する気…?)
 思っている間も、使徒は襲ってくる。

 (いや、「まさか」じゃない。綾波は、自爆する気なんだ。僕のために…)

 「でも、そんなことやめさせなくちゃ…」
 思わずシンジはつぶやいた。

 (綾波…!)



 レイがレバーに手をかけたまま引こうか引くまいか思案しているところに、突然初号機から通信が入った。

 ヴンッ

 突然出現したウィンドウにとまどうレイ。
 その身体には全身葉脈模様が出ており、残っているのは頭だけだ。
 頭も、ゆっくりとではあるが、浸食を受けている。

 ウィンドウが、これまた突然声を発する。
 今の自分の行動を一番知られたくない人の、そして今自分が一番大切に思っている人の声を。

 『やめてよ、綾波。自爆なんて。』

 「碇君…」



 シンジは走りながら、しかしなるべくいつもの口調を保って言う。

 「ねえ、やめて。お願いだよ。」

 しばしの沈黙、そして。

 『私は、碇君を助けたいの。』
 「・・・」
 『今も、私のせいで碇君は危ない目に遭ってるから、だから…』
 「・・・」
 『私は、碇君が好きよ。…だから、碇君が困っているのはいやなの。』
 「そんな…迷惑なんて…」
 『私は、碇君を助けたい。その為には、これしか…』
 「・・・」

 『私には、代わりはいるから…。だから…さよなら、碇君…』
 「…綾波? 綾波!?

 そう呼びかけるシンジだが、無情にもその通信は途絶えた。



 「さよなら…」
 そうつぶやきながら、レイは回線を切った。
 たとえそれが本心でなかったとしても。

 (心が、痛い…寂しいのね、私は)
 レイは、座席に顔を押しつけた。
 今まで抑えていた感情が、高まってくる。
 それを再び抑えず、ただそれに従っているレイ。

 レイは、声を立てて泣いていた。
 シンジとの離別の悲しみに。
 シンジに迷惑をかけてしまう自分という存在の哀しさに。

 いっそのこと涙が全部洗い流してくれたらいいのに、と。
 涙と一緒に全て哀しいことは忘れられたらいいのに、と。

 ピピーッ!

 しかし、そんなところに高エネルギー体の接近を示すアラームが鳴った。
 驚き、その顔のままモニターへと顔を戻すレイ。

 「!」
 そこに映るものを見た瞬間、声にならない驚きを、レイは発した。



Dパートに続く

ver.-1.00 1997-06/26公開
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 次回予告

 使徒の浸食は進む。
 果たして、シンジはそれを止められるのか。
 そしてレイが見たモノとは?


 あとがき

 さて、いよいよやってまいりましたクライマックス。
 風邪もやっと治りました。調子も元通りです。
 さぁ、これからどうなるか、お楽しみに。

 感想など、いつでも待ってますよ。 (^^)


 Tossy-2さんの『エヴァンゲリオン パラレルステージ』第4話Cパート公開です。
 

 シンジのために死を決意するレイ。
 その行動は本当にシンジのためになる?
 答えを出す時間は二人に残っているのでしょうか・・・・
 

 アスカを救った様にレイを救って欲しいです。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 Tossy-2さんに感想メールを、簡単な言葉で良いんですよ!


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