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エヴァンゲリオン パラレルステージ

EPISODE:01 / The Death and...

第1話


シンジ、





Bパート



そして…



 明かりの消えた初号機ケイジ。

 そこに、うごめく人影が、一つ。
 その人影は、暗闇の中だというのに、まるで道が見えているかのようにすたすたと進んでいく。
 その足の向く先には…出口があった。

 ピッ!

 電子ロックの開く音がして、出口が開いた。
 ケイジと外の明るさの差に、は少し目を細めた。

 「う…」

 目が慣れてくる。
 すると、そこには見知った1人の少女がいた。

 「…待ってたわ。」
 彼女が言う。

 「綾波…来てくれたんだ。」
 彼は、そう言いながらも別段驚いた様子も見せず、レイに近寄っていく。

 「呼ばれたもの…」

 「そうだね…。さ、行こうか。」

 その声に対して、

 「ええ、碇君。」
 レイは、そう言った。



 コンコン…

 扉が叩かれたとき、ミサトとリツコはただぼーっとしていた。

 ミサトはもう泣き止んでいたし、リツコも、今日の分の仕事は終え、ミサトの隣りに座っていた。

 彼女たちの間に、会話はない。

 だが、そんな沈黙は一つの物音によって破られた。
 それが、冒頭のノック音である。

 それに反応できたのは、リツコだけだった。

 「誰?」

 扉に近寄ろうとするリツコ。
 だが、その前に扉は開く。

 プシュッ!

 「!!」

 エアの音と共に開いた扉。
 リツコは、信じられないものをその向こうに見た。



 そこに立っていたのは、レイとシンジだった。

 「シンジ君…。いえ、そんなはずは…。だって、もう遺体は…」
 処分してしまったのに、が言えなかった。
 リツコの動揺は、それほどまでに激しい。

 『シンジ君』
 そんなリツコの言葉の一部に、やっとミサトが反応する。
 顔を上げたミサトの目に入ったのは、レイと、その隣りに立っているシンジ。
 一瞬見間違いかと思ったが、紛れもない、その顔、その身体…。全てがシンジであることを認識させていた。

 ミサトの目が、大きく見開かれた。

 「シンジ…君…」
 ミサトは、ふらふらと立ち上がると、シンジの方に寄っていった。

 「シンジ君…本当に…シンジ君…なの?」
 「ええ、そうですよ。」
 「シンジ君…よかった…。」
 「ただいま、ミサトさん。すみません、心配かけて。」
 「いいの…いいのよ。だって、戻ってきてくれたんだもの…」

 「で、でもどうして? 遺体はもう処分してしまったのに…」
 リツコは、やっと浮かべられるようになった驚きの表情で聞く。

 「簡単なことですよ。」
 シンジがすぐさま答える。

 「この身体は、元の僕のものじゃないんです。」
 シンジは、ちょっと表情を曇らせながらもきっぱりと言った。

 「え?」
 ミサトとリツコの声がハモる。

 「僕は、もう人間じゃないんです。つまり、僕のこの身体は…初号機なんです。」
 再び、きっぱりと言い切るシンジ。

 「・・・」
 何も言えないミサトとリツコ。

 無言で、シンジは右腕を横に突き出した。
 その先に、瞬間的に光が生まれた。
 オレンジ色、八角形の。

 「ATフィールド…なの?」
 「ええ、そうです。本物ですよ。」
 「じゃあ、なぜ初号機が…」
 「それはですね、あの覚醒したときに、僕は精神だけエヴァに取り込まれたんです。 それで、今の僕がある、と。」
 「…それじゃあ、エントリープラグのあのシンジ君は、抜け殻だった、ってこと?」
 「そういうことになりますね。」

 その部屋に、再び沈黙が訪れた。

 「ミサトさん、アスカも心配してるんでしょ? 僕、帰りますよ。」

 シンジは言うが、

 「あ、待ってシンジ君。」
 リツコが引き留めた。

 「一応、簡単な検査だけさせてくれない?」
 やっと平静に戻ったリツコ。

 「ええ、いいですよ。」

 そういうシンジを、リツコは実験室に連れていった。



 そして、検査をしてからシンジは1人で帰途につく。
 シェルターに置いた荷物を取りに行って、帰る頃には、空はもう白みはじめていた。

 「朝、か…」
 朝焼けが、彼の赤い瞳に映っている。

 唐突に聞こえ出す、蝉の声。
 だんだんと増えていく。

 「アスカ…」

 朝焼けの赤からその髪の色を連想して、シンジは思わずつぶやいた。
 そして、歩く速度を速める…。

 「早く帰ってあげないと…」

 シンジは、考えていた。
 自分の異変を、アスカに話すか話さないか。
 (どうしようか…)

 考えたあげく、彼はこういう結論を導きだした。

 (とりあえず、話さないでおこう。もしばれたら、その時全てを話そう…)

 いつばれるか、彼はまだ知る由もない。



 「で、どう?」
 ミサトが聞く。

 今、先の実験の結果がやっとまとまったところだ。
 MAGIの処理能力を持ってしても、その解析は困難を究めたという。

 「見ての通りよ。」
 リツコがキーボードを操作すると、二つの固有波形パターングラフが表示された。

 再びキーボード上を指が走る。
 と、二つのグラフは重なり合っていく。

 「…ぴったり重なったわね。」
 「ええ。確かに、あの身体は初号機だわ。」

 2人は、しばし無言のままその画面を見つめていた。



 「他のデータは?」
 「とりあえず、あとはシンクロ率のデータだけ。」
 「一応見せて。」
 「いいわよ。」

 リツコがキーボードを叩く。
 すると、今度は折れ線グラフが表示された。

 「あら、いつものと違うわね。」
 「時間経過とシンクロ率の変動を示したグラフよ。」
 「ずいぶんときれいね。」

 ミサトの言葉通り、そのグラフはひどく単調なものであった。
 変わらないときはずっと変わらない。
 そして、変化するときは、一直線だ。

 それは、一つの事実を示している。

 「そうね。…シンクロ率が自由自在なのよ、彼にとっては。」
 「嘘!?」
 「本当よ。そうでもなければ、こんなグラフ、出せないわ。」

 「でも、そんな能力…」
 「ありえない、と言いたいところね。」
 ミサトの言葉を先取りして言うリツコに、ミサトはただ小さく頷いた。



 コン、コン。

 「誰だ?」
 「私です、司令。」
 「入りたまえ。」

 NERV司令執務室。

 その扉が開き、リツコが入ってきた。

 「何だね、赤木君。」
 「サードチルドレン、生還しました。」
 「何?」
 ゲンドウは、信じられないといった風で聞き返す。

 「今、何と言った。」
 「サードチルドレンが、生還しました。」
 本当か!?
 「はい。」

 いつの間にか立ち上がっていたゲンドウ。
 シンジの死亡連絡が来ていたので新たにフィフスを選ばなくてはならないと思っていたところ、そのシンジが生きていたという。
 そんなことを聞いて驚かないわけがない。

 「…本当なのだな?」
 「はい。…検査結果は、ここに。」
 そう言って、リツコは書類を差し出す。
 ゲンドウはそれを受け取ると、しばし眺めた。

 その目が、DNAパターンらしきグラフのところで止まった。
 太い眉がピクッと動く。

 「これは…」
 明らかに動揺している声。
 そのパターンは、確かにどこかで見たものであった。

 「これは…本当にシンジのものなのだな?」
 「はい。サードチルドレンの身体はエヴァ初号機のものであると確認されました。」
 「初号機はどうなった?」
 「消えました。」

 リツコが写真を取り出す。
 その写真には、何もない空のケイジが映っていた。

 「そうか…」
 ゲンドウは、再び椅子に深々とかけなおした。

 「では、報告を終わります。」
 「分かった。ご苦労だったな。」
 「失礼します。」

 退出していくリツコ。

 入れ替わりに、冬月が入ってきた。

 「どうした、碇。」



 「何、本当なのか!?」

 冬月もまた、あの時のゲンドウと同じように驚いた。

 「シンジ君は、死んだのではなかったのか?」
 「初号機と精神融合したそうだ。」
 「と言うことは…」
 「ああ、今のシンジの身体は初号機のものだそうだ。」

 無言…

 その無言は、しばらく破れなかった。



 その頃、シンジは。

 「・・・」

 葛城家の扉の前で、右往左往していた。

 「ミサトさん、恐らく僕のこと『死んじゃった』とか言っただろうからな…」

 「…よし。」
 やっと覚悟を決めたらしく、シンジは扉を開くスイッチを押した。

 ピッ

 電子音の後に、エア音が響く。

 バシュッ…



第2話につづく

ver.-1.00 1997- 06/03公開
ご意見・感想・誤字情報などは Tossy-2@nerv.to まで。



 次回予告

 葛城家へと帰ってきたシンジは、アスカとの涙の再会を果たす。
 翌日、幸せの中に割り込んでくる不幸。
 居眠り運転の車が登校中の2人を襲う…。

 次回、「守ること」 さて、この次も、サービス・サービスぅ!


 あとがき

 これで第1話、終わりです。
 第2話は、シンジが部屋にはいるところから始まります。終わり方が唐突だからと言って、決して失敗したワケじゃないんですよ。(^^;

 では、2話お楽しみに!(^^)/



 Tossy-2さんの連載『エヴァンゲリオン パラレルステージ』第1話Bパート、公開です。

 シンジ、無事帰還!
 しかも、初号機の体を持って!!

 この先ただでは済まないこと確実ですね。
 「シリアス」ということなので委員会なども出て来るんでしょうか?

 予告からでは次回、アスカと絡むんでしょうが・・・・

 そう、
 次回のストーリが丸分かりの『予告』・・・・・これは何かの罠なのか(笑)
 

 訪問者の皆さんはどうなると思いますか?
 貴方の予想をTossy-2さんに送ってみてはいかがですか?
 ・・・・あまり鋭いのが来ると困ることもありますが(笑)


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