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魔導王シンジ


第十話 BREAK OUT! (後編) 




リーザスの大貴族、ムスカ家の屋敷。その屋敷のとある廊下。その廊下は車がすれ違うことすら可能のような幅があり、床には真っ赤な絨毯が惹かれている。
戦うには十分な広さね・・・。そう考えながらもアスカは目の前の魔法使い、メルフェイスの動きに十分な注意を注いでいた。が、メルフェイスの方も動く気配がない。互いに実力がわからないのだ。先に動くのには勇気がいる。が・・・・、

(こうやって、ただ、睨み合ってるってのは性に合わないのよ・・・!)

先に動いたのはアスカの方だった。左手に拳を作ってぐっと後ろに引く。その拳が赤褐色の光を帯び始める。

「ファイアー・・・・・」

アスカの言葉と共に光はますます強まっていく。その光に押されて拳の輪郭が見えなくなった頃。

「レーザーーーーーー!!」

気合いのこもった言葉と共に拳がメルフェイスに向かって突き出される。そしてその拳の延長上を赤い光が一直線に伸びていく。メルフェイスはそれをよんでいたかの様に横に跳ぶ。その一瞬後には魔法は壁に当たり、この日一番の、爆音と光を辺りにまき散らす。
アスカも今のは当てる気では無かったのだろう。メルフェイスの跳んだ辺りに目を走らせる。はたしてそこに、先ほどの魔法の爆風と煙の中にメルフェイスが居た。
メルフェイスのがその繊細な左手をアスカ達の方に伸ばす。そして同時に聞こえる呪文の言葉。

「宿れ、雷・・・・。」

魔力のこもったその言葉に反応して、左手に青白い雷がまとわりつく。
自然の力に寄らない純粋な魔力のエネルギーによる現象。それは純粋さ故の美しさに彩られる。

「雷撃!」

凛とした声に反応して、メルフェイスの手にまとわりついていた雷が生き物の様にアスカに伸びてくる。それらはあらゆる方向から迫ってきて回避は不可能に思われた。が、雷はアスカに届こうかというときに弾かれたように四散する。アスカがバリアを張ったのだ。

「はん、そんな攻撃が・・・・、」

アスカが不敵なセリフを吐こうとした直後に、メルフェイスが突っ込んでくる。左手に雷を纏わせたまま、今度は直接当てようという魂胆だろう。間合いはたやすく詰められて左手が突き出される。しかし、アスカはその攻撃をしっかりと目で追い、見切ってぎりぎりでかわす。白兵戦でも尋常ではない実力を持っている証拠である。

「このあたしに通用すると・・・・。」

言葉と同時にアスカの左手がメルフェイスの腹の辺りに添えられる。危機を感じ、メルフェイスがその手を振り払うより速く、

「思ってんの!白冷激!」

アスカの左手とメルフェイスの体の間に冷気が生まれ、それがそのままメルフェイスにたたきつけられる。カウンターで、しかも至近距離で呪文を炸裂させられ、メルフェイスはなすすべなく壁まで吹き飛ばされ崩れ落ちる。アスカはそれを見届け、凱旋でもするかのように、胸を張ってシンジ達の方に戻ってくる。

パチパチパチパチ・・・・・

それを無邪気な拍手が出迎える。そして、同じく無邪気な声も。

「お見事お見事。流石やなぁ。やっぱ、リーザスのナンバー1やいうても、ネルフの魔法力からすれば足下にもおよばんか。」

素直な賞賛とは取りがたい言葉をアルは吐く。が、勝利の快感に酔っているアスカはそれの表面上だけを受け取る。

「まあね、戦いは常に華麗に美しくよ。他の人間じゃこうはいかないけど・・・。」

そう言って、アスカがシンジにウインクして見せたその時、シンジが必死の形相で叫ぶ。

「アスカ、まだ!」
「え!?」

驚愕してアスカが振り向いた瞬間、シュッと風を切る音がしてアスカの頬に赤い筋が走る。魔法がアスカの頬をかすめて、飛んでいったのだ。

「・・・・あんた、まだやる気?」

頬を拭いながら振り向いたアスカの視線の先には、呪文によって半ば凍り付いている脇腹を押さえ、よろめきつつ立っているメルフェイスの姿があった。メルフェイスはアスカの言葉に応えない。意図的に無視しているのか、聞こえてないのか・・・・。

「私は・・・・・・」

メルフェイスがそう呟いたかと思うと、彼女の魔力が一気に膨れ上がる。先ほどのものをも上回ろうかという勢いで・・・。
どこにそんな力が残っていたのかとアスカが驚愕している間に、メルフェイスは地を蹴り先ほどと同じように突っ込んできた。アスカは急いで呪文を唱える。

「火爆破!」

即座に、アスカとメルフェイスの間に赤い球体が現れそれが破裂する。同時に四散する炎と熱風。比較的遠くにいたシンジまで、それを避けるためにバリアを張らねばならないほどの威力だった。アスカの得意とする呪文の一つだ。
が、シンジは内心首を傾げる。今の呪文はどうも、慌てて唱えたように思える。メルフェイスにはおそらく致命的なダメージを与えていない。優勢なはずのアスカの方が、押され焦っているように思える。シンジはそれが自分の心配性な性格に起因していることを祈った。

(何で・・・、何で倒れないの・・・・?)

アスカには先ほどの呪文は確かに手応えがあったのだ。試合では相手は倒れ伏したまま動かず、審判が自分の勝ち名乗りを上げてくれたし、街のごろつきを相手にしたときでも、アスカが呪文を当てれば、それっきり相手が起きあがることは無かった・・。 メルフェイスの魔力がそれほど高いとは思えない。彼女を上回る相手とはいくらでも戦ってきたし、勝利も上げてきたのだ。
アスカは自分の魔法によって巻き起こった煙幕のカーテンを見つめながら、この幕が晴れたとき見える光景が、敵がうずくまって倒れない姿であることを切望した。 が、それはあっさりと裏切られた。視界が晴れたとき、真っ先に目に入ったものが未だ魔力を立ち上らせているメルフェイスの姿だった。

「なんで・・・、なんで倒れないのよ・・・・。」

今度は声に出してアスカが言う。メルフェイスはすでに満身創痍だった。着ていた魔法衣はあちこち破れ、美しかった金髪はすすにうす汚れている。そして、全身の魔法による傷・・。
ただ、目だけが先ほどより強い光を発している。そして、その口はずっと虚ろに言葉を紡いでいる。それがアスカの耳にも届いてくる。

「私は・・・・・負けられない・・・。負けられない・・・・・、エクス様のために・・・。エクス様のために・・・・、私は・・・・・・!」

その言葉がアスカをはっとさせる。

(違う・・、こいつは・・。あたしが今まで戦ってきた奴らと・・・・。)

またも、メルフェイスが向かってくる。単調な攻撃が三度も続けて。しかし、アスカは易々と間合いへの侵入を許してしまう。今度は意図してのことでないことは、アスカの表情から見て取れる。次々と攻撃を繰り出すメルフェイス。それを何とかかわしていくアスカ。だが、その表情からは焦り、困惑した様子が見て取れる。パニックになる寸前といた体だ。
メルフェイスが攻撃を仕掛けながら、アスカに向かって言う。

「どうしたの?お嬢ちゃん。そんなんじゃあ・・・・・・、」

雷を纏わせた拳で、宙にあざやかな軌跡を描きつつ言葉を続ける。

「私は死なないわ・・・・。」

その一言がアスカをその場に凍り付かせた。

(死ぬ・・・・?殺す・・・・・。誰を?この人を私が・・・・・殺す?)

「違う!ライトニング・レーザー!」

アスカが呪文を半ばやけくそ気味に放つ。だが、それは偶然か必然か、正確にメルフェイスをとらえていた。メルフェイスには避けようがなかった。そう事実、彼女は避けなかった。彼女は受け止めたのだ。とっさに張ったバリアで。雷光は敢えなく見えない壁に阻まれ消滅する。

「嘘!」

アスカの叫びと同時にメルフェイスの手がアスカの首に添えられる。彼女の唇から、呪文の言葉が勝利の雄叫びにも等しい格調で唱えられる。

「雷撃!」

瞬間、アスカの体が一瞬閃光に包まれる。アスカは声も無く、体を一度震わせるとメルフェイスの方へと崩れ落ちた。
アスカの体を受け止めながら、メルフェイスは複雑な心境になった。この少女はあの瞬間、呪文の力をかなりセーブして放った。私を殺したくないから・・・。だからこそ、自分程度のバリアで防ぐことが出来たのだ。そして、自分はそれを察しながら、それに付け入らざるをえなかった。・・・・・・情けないことだ。

「アスカ!」

シンジがアスカが倒れた瞬間、反射的に飛び出しアスカの方に駆け寄ろうとする。が・・・、

「動くな!」

メルフェイスの声にシンジはその歩みを止められる。声に恫喝されたわけではなく、声と同時にメルフェイスの行った行動を前にして、だ。メルフェイスは気絶したアスカを自分の前に盾の様にかざし、手を背中に当てている。それの意味するところはバカでもわかる。人質だ。

「くっ・・・・・。」

シンジは悔しそうにメルフェイスの顔を見やる。表情から、彼女は自分のとっている行動が本意ではない様だが、それがなんら慰めになるわけでは無かった。

「万事休すか・・・・な?」

呟きながらアルがちらりとシンジを見る。なにか手は無いか・・と思って見たのだが、シンジの表情を見るにどうやらそういうことはなさそうだ。
確かにシンジに打つ手はなかった。だが、メルフェイスはもはや気力だけで立っているような状態だ。そのうち、隙の様なものが生じるかも知れない。その隙をついて、全力で呪文を打ち込めれば・・・・彼女を倒せるだろう。が・・・・、

(僕に彼女を殺せるだろうか・・・・。)

シンジが全力で呪文を撃つということは、相手を殺す気で撃つということだ。かといって先ほどのアスカの様に手加減すれば、バリアに妨げられて呪文を打ち消されるかもしれない。
しかし、彼女に今、自分の呪文に対応するだけの力が残っているのかどうか・・・。
どちらにしろ、確実に彼女を倒す方法は・・・・・、

(これしかない・・・・・・・か。)

そう呟くと、シンジはメルフェイスに気づかれぬ様に魔力を貯め始めた・・・。来るかどうか解らないチャンスに備えて・・・。






(アスカ達は大丈夫かしら・・・・。)

そんな言葉が頭に浮かんで、マナは思わず自嘲する。

(大丈夫・・・か。今その言葉から一番縁遠いのは私じゃない・・・・。)

自分の目の前には冷酷な暗殺者が二人・・・・・。彼らはもはや無理にマナをしとめようとせず、その体力を奪っていくことに狙いを絞っていた。それは、今のところ成功しているといえよう。脇腹から流れる血は確実に刻々と、マナの意識を削っていった。呪文は完全に見切られかわされる。そして、一瞬でも気を抜けばその瞬間、自分の首は胴体から離れることになるだろう。すでに限界などはとっくに越えていた・・・・。未だに地に足がついているのは自身の実戦経験の豊富さとケンスケのサポートのおかげだろう。

(何か打つ手は・・・・・。)

そう考えだした時、微かな振動と音と共に、天井からかけらがパラパラと落ちてくる・・。アスカやマナが所かまわず呪文を打ち込んだおかげで、建物全体に「がた」がき始めているのだろう。天井のあちこちにひびが見える。

「何?ひょっとしたら崩れてきてるのかしら?安普請ね、この屋敷。金もってんだからもっと頑丈に作っとけばいいのに・・・。」
「・・・・安普請であろうが無かろうが、「獰猛な魔法使い達が乱入してきて呪文を乱発する。」という不測事態に備えてる屋敷は存在しないと思うが・・・。」

マナとケンスケは窮地にあってもこんな減らず口を叩いている。それはお互いがまだ大丈夫だという証を見せあうためでもあった。
そんな会話を交わした後、ふとマナの頭に一つの考えが浮かんだ。それは今の状況では唯一の光明と呼べる物だった。

(そうだ!あの手が・・・・・。でも、あんまり気は進まないなぁ・・・。)

マナは自分を守るように横に立っているケンスケを肘でつつくと小声で話しかける。

「相田君・・・。あなた、一人で何秒、前の二人をくい止められる?」

ケンスケは懐に手を入れ、少し考えてから答えた

「5秒ってとこだな・・・・。」
「短いわ、10秒何とかして!」
「・・・・もって8秒。」
「仕方ないわ。それで手を打つから頼むわよ!」

そう言うと、マナはすっと両腕を顔の前で交差させて目を閉じ、呪文に集中する。神経を集中させると前以上に傷が痛み出すが、そんなことにかまってられなかった。
マナが呪文の集中に入った瞬間、二人のアサシンがマナに向かって飛び出す。

「ったく人使いが荒いんだからな・・・・・っと!」

ケンスケは懐から取りだした手を、手品師の様な動作でアサシンに向かって振る。瞬間、アサシンの目の前で鉄をはじいた音と共にギザギザの小型の円盤の様な物が床にいくつか落ちる。ケンスケが手裏剣と呼ばれる飛び道具を投げて、それをアサシンが弾いたのだ。命中こそしなかったが、アサシン達の足止めるには十分だった。その隙にケンスケは刀を抜き、アサシン達に向かって特攻する。
床を蹴る音、刀のぶつかり合う音・・・・それらの音が耳に入って無いかの様に、マナはただ交差させた両腕を前にかざし、目を瞑っている。しかし、変化はあった。マナの両腕が白く発光していくのだ。その光は徐々に強く、強く。

「霧島、まだかよ!もう8秒経ったぞ!」

ケンスケが首筋にアサシンのナイフをかすらせながら叫んだ瞬間、マナの目が開かれる。

「相田君、こっちに寄ってきて!・・・・・白色破壊光線!」

マナが交差した両腕の内、右腕を正拳を打つように突き出す。その腕から拳の形をした純白の光が放たれる。白色破壊光線・・・・限られた魔法使いのみが扱うことのできる聖なる光・・・。
だが、アサシンはすでに回避の体勢に入っている。多少のダメージは与えても致命傷には遠いだろう。ケンスケはそう考えたが、呪文はそもそもアサシンに向かっていなかった。呪文はまっすぐ天井に向かっていく。 外した!とその場の誰そう思った・・・。・・・マナを除いて。

マナの呪文は天井を突き破り、爆発する。天井に開いた穴は亀裂を走らせる。亀裂はツタのように柱を伝わり、床にまでその触手を伸ばす。当然、マナやアサシンの頭上の天井、足下の床も例外ではなかった。

「な・・・・何のつもりだ・・・・?」

狼狽の声が冷静怜悧なはずのアサシン達から漏れる。マナはそれにかまわず、今度は左腕を同じように天井に突き出す。

「もう一発・・・・・!ぶっ壊れなさい!白色破壊光線!!」

輝く拳が天井の、ひびが多く入り今にも崩れそうなところにくさびを打つかの様に突き刺さる。そのとたん、建物の振動やひびが数倍に膨れ上がる。

「崩れる・・・・・・!」

悲鳴めいた誰かの声はその主を明らかにする前に、土砂と瓦礫にかき消されていった。




そして、全ては崩壊していく・・・・・・・・・・。






ゴオオオオオォォォォォ・・・・・・・・・・・・ン・・・・・・・。

「こ・・・これはいったい?」

突如、轟音と共に激しい揺れがシンジ達の立っている場所を襲う。その揺れは、別の場所で戦っていたマナの引き起こしたものだったが、シンジ達は知る由もない。しかし、その揺れは離れた場所に居たシンジ達に幸運をもたらした。アスカを担いでいたメルフェイスがその揺れによる、物理的なものと精神的なもの、両方のショックにより、バランスを大きく崩す。彼女に担がれていたアスカの体は糸の切れた人形の様に地面に崩れ落ちる。

「今や!呪文を・・・・・。」

必死に倒れないようにバランスをとっていたアルが叫ぶより速く、シンジは右手をメルフェイスに向ける。メルフェイスもシンジに気づき、体勢を必死で立て直そうとする。

「チャンスは一度、殺す気で撃てや!」

建物の崩れる轟音と、天井から落ちる破片の中、アルが叫ぶ。殺したくないと手加減しているようでは彼女は倒せない、その事を言っているのだろう。 シンジがその言葉を受けてかどうかは知らないが、右腕に魔力を巡らせ、掌に力を貯める。掌の指の隙間からメルフェイスが見える。

(敵・・・・、そう、彼女は敵だ。僕の守るべきものを脅かす・・・・・。だから、殺してもいいのか・・?)

一瞬、メルフェイスの姿がある人間と重なる。半年前、シンジが初めて殺したあの盗賊。初めて殺した敵。

(違う、僕は決めたんだ・・・・。)
「ファイアー・・・・・」

シンジの掌に赤い光が収束し宝石の様にきらめく。

(もう逃げないって・・・・。)
「レーザーーー!」

手の中の赤い宝石が弾け、閃光となり、メルフェイスへ向かう。メルフェイスは目を閉じ、目の前に目に見えない壁があるのをイメージする。はたしてそれが具象化され、シンジの呪文とぶつかる。

キィィィィィィィィ・・・・・・・・ン

辺りは崩れ始め未だに轟音は響いている。が、それにも勝る身をちぎるような甲高い音が辺りを支配する。シンジの呪文とメルフェイスのバリアが全力でせめぎ合っている。が、そのうちシンジの呪文の光が弱くなっていく・・・。

「馬鹿が、やっぱり手加減しよったな・・・。」

アルが閃光に目を背けながら呟く。その呟きを耳にするまでもなく、勝利を確信してメルフェイスが唇の端をつり上げ、微かに笑った、がその表情が一瞬後に凍り付く。メルフェイスのバリアに亀裂が走ったのだ。それは次第にバリア全体へと広がる。

「くっ・・・・?」

メルフェイスが驚きの声を上げたと同時に、バリアは一瞬鈍く光を発した後、音もなく砕け散る。が・・・・、シンジの呪文もまた、それと同時に消滅していた。メルフェイスが勝利を確信した表情を見せる。

(危うかったが、これで・・・勝った。後は足下の王女を人質にこいつらを追い返せばいい。のちの処理はラファエルがうまくやるだろう。これで、エクス様の使命を果たせたことになる。あの人もきっと喜んで・・・・・。)

瞬間、彼女の五感の感覚、頭に描かれていた勝利の世界。それらが一瞬に真っ白になって消え去る。

ガシィィィィィィン・・・・・・・・

「がっ・・・・・・・・・。」

最初何が起こったのか彼女はわからなかった。全身の感覚を一気に失ったような衝撃。そして自分が壁に吹き飛ばされる・・・・。

「な・・・何が・・・・・。いったい・・・・。」

薄れゆく意識の中、メルフェイスの瞼に少年の姿が浮かぶ。左手を自分に向けている少年・・・。彼が呪文を放ち、自分が吹き飛ばされた。それしか考えられない。が、たった今、彼の呪文は防ぎきったはずだ。何故あの左手から魔法が・・・・・・?

(左手?彼は右手で魔法を放ったはず・・・・。・・・・・・まさか、魔法を左右の手で撃ち分けて連射したというのか?最初の呪文が弱かったのは手加減したわけではないと・・・・。しかし、そんなことが・・・・・普通の魔法使いに・・・・?いや、あの少年は見たことがある。そう確か彼は・・・・。)

「ネルフの・・・・・・残酷な・・・・・天使・・・・・。」

そう呟くとメルフェイスは意識を失った。シンジはそれを確認するとアスカの方に駆け寄る。そして体を揺さぶり声をかける。

「アスカ・・・・アスカ!」
「う・・・・・・・・。」

アスカが微かに呻く。そのことでどうやら気絶しているだけらしいことを悟ると、シンジはメルフェイスの方に目を向ける。だが、そちらはアルが様子を見ていたようだ。

「大丈夫、こっちの姉ちゃんも気絶しとるだけや。まあ、しかし・・・・・。」

アルが感心したようにシンジを見る。

「よくもまあ、あんな器用なまねができるもんや・・・・。魔法をはなから両手に分けといて、時間差で放って敵を倒すとは・・・。確かにそうすれば一撃目を仮に防がれても二撃目で倒せる。どっちが当たろうが、相手は死ぬことはないような威力でな・・・。」
「うまくいくかどうか自信なかったんですけど。前に綾波が僕との試合で使って見せた技なんです。だから・・・。」
「使って見せた・・・・って?まさかぶっつけ本番で?」
「はい。なんか盗作みたいで申し訳ないですけど。・・・あとで綾波に謝っておこうかな・・・。」

あきれ返るアルを尻目にシンジはヒカリが捕まっているであろう地下室へと向かっていった。

「・・・・なんやらと天才は紙一重・・・・か?まーええわ。さ・て・と、とらわれの少女の救出は騎士殿に任せるとして、俺は後始末の方をしとくことにしようか。」

アルはくるりと向きを変えると、屋敷の奥の方へ進んで行った。






雷鳴の様な音と衝撃が屋敷を揺らしている。ほんの半刻程前までは、この屋敷は外装、内装、共にリーザスの大貴族の屋敷にふさわしい様だった。だが、今ではそれは見る影もなく、東側半分は完全に崩れ落ちており、没落貴族の屋敷といった呼称が相応しかった。
事実、このリーザスの名門、ムスカ家は没落しかかっているのかも知れない。地面に無惨に落ち、逃げ出した兵士に次々と踏まれていく紋章がそれを生々しく語っていた。

「こんなことが・・・・、こんなことが・・・・・。」

当主ラファエル・ムスカはただその言葉を、部屋の中央の辺りで動物園の熊の様にいったり来たりしながら呟いていた。
こんなはずではなかった。どこぞの馬の骨がいきなりこの国にやってきて、王となった。その男が事もあろうに、自分たち高貴な者をないがしろにするような政策を打ち立てようとする。当然、そのような者には罰を下さねばならないはずだった。アサシンを使ってランス王を暗殺させ、罪は民を救うためだのと寝言をほざくロマンチシズムの馬鹿共に被ってもらう。あとは、王無き後のリーザスの覇権を握りそうな人物に取り入ってしまえば、自分は安泰のはずだった。そう、一年前ヘルマンが攻め込んで来たときも自分はうまく、リーザスからヘルマン、そしてまたリーザスとうまく取り入ってきたではないか。今回もそうなるはずだった。なのに・・・なのに・・・・。

「どうしてだ!どうしてこんなことに・・・・。」
「日頃の行いの差やな。」

その問いの答えは唐突に意外なところから返ってきた。ラファエルは驚いてその声の方を振り返る。そしてその姿を認めた瞬間、ラファエルの驚きは倍に膨れ上がる。

「き、貴様・・・・アル・ウェポンか?!そうか、貴様が・・・・、貴様の仕業だな、これは!」

アルはその問いに答えず、ゆっくりと部屋に進入してきて窓の方へ歩み寄る。窓にはなにやら模様が織り込んであるカーテンが掛かっており、外の様子は見えない。だが、アルは窓の方を向いたまま呟く。

「お前さんをつぶそうと考えとったことは事実やけど、俺はなんもしとらんよ。強いて言うなら神罰やな。」
「神罰だと!?ゼーレとやらに逆らった報いだというのか!」
「どうだかねぇ・・・・・・。」

アルの態度が感に触ったのか、目に見えない破滅の足音への怯えのなせる業か、ラファエルが憤激してわめき散らす。

「き、貴様、俺がこのままで終わると思うな!ふん、ネルフのガキ共が何を喋ろうが、なんにもなりやせん。俺の力をもってすれば、こんなことはどうにでもなるんだ。そして、いずれ思い知らせてやるぞ、貴様にも、あのガキ共にも!」

ラファエルは一息にそこまで言い切ると、ぜぇぜぇと息を切りながらアルを睨み付ける。アルは震えている・・・・。それは怒りからでも、恐怖からでもなく・・・・・。

「き、貴様?」
「ククククク・・・・・・・・」

アルは笑っていた。心の底からおかしいといった風に。それは無邪気な笑い声ではない。
邪悪・・・・・・。哀れみ、蔑み、見下しを含んだ・・・・・。それは邪悪な笑いだった。

「アハハハハハハハ・・・・・・・」
「な、何がおかしい!」

ラファエルの声はか細かった。目の前の男・・・、この男が恐ろしくなったのだ。これから起こる破滅よりも、何よりも・・・・・。

「ふふふ・・・、おかしいではないか・・・・・・。どうにでもなるだのと・・・・、思い知らせるだのと・・・できるわけがない。」
「な・・・、どういう意味・・・・。」

アルがゆっくりと振り返る。その目ははっきりと開けられ鋭い眼光がラファエルを指した。

「何故なら、お前はこれから「自殺」するんだからな・・・・・。」






アスカは夢を見ていた。

幼い頃の夢を・・・・・。

暖かい背中・・・・・。広くて大きい背中・・・・。自分を背負う、その背中は全てを受け止めていてくれた。その重みも、苦しみも、孤独感も・・・・全てを。アスカは唯、その背中にしがみついているだけでよかった。それだけで、愛も自分の存在する価値も、全てが与えられた。

「お別れだ・・・・・アスカ・・・・。」

その背中がそう言った。その言葉をアスカは最初、理解できなかった。その背中が自分に別れを告げようとしている。自分の前から消えようとしている。

「いやだ・・・・・・・・。」

アスカはそう呟くとその背中にますます強くしがみついた。失いたくなかった。自分を愛してくれる存在を。無条件の愛を与えてくれる存在を・・・。

「だめなんだ。僕がこれから行く道はアスカを背負っては行けはしない。だからお別れなんだ。」
「いやだ、いやだ、私も行く。もう私、一人で歩けるから。ついていけるから・・・。」
「さよなら・・・・・アスカ・・・・。」
「いやだ、行かないで、私強くなるから、大人になるから・・・・。行かないで、お兄ちゃん!」






はっとアスカは我に返る。今まで自分のいた世界が霧散して、無理矢理今の世界に引きずりこまれた感覚。夢から覚めたのだ、と自覚したのはしばらく経ってからだった。 どうして今頃あんな夢を・・・・・。
その問いの答えはあっさり見つかった。現実に自分が背負われているからだ・・。背負ってくれている人物はアスカのよく知る人間。

「シンジ・・・・・・?どうして・・・・・・?あたし・・?」

アスカの問いにシンジは無言だった。ただ、アスカをその背中に担いで、前を歩いていた。仕方なく、アスカは一つ一つ記憶を探っている。そして出た結論はアスカにとって最もたどり着きたくない結論だった。

「そうか・・・・。あたし・・・、負けちゃったんだ・・・・。」
「・・・・・うん。」
「で、あんたが助けてくれたの?」
「・・・・うん。」

シンジは頷くことしかできなかった。あのプライドの高いアスカが戦って負けたのだ。何と言葉をかけていいものか、アスカの目覚める前から考えていたのだが、答えは出なかった。
しかし、アスカの口調は予想に反して明るいものだった。背負われたままぽんとシンジの頭を叩いて憎まれ口をたたく。

「まーたあんたに借りを作っちゃったわね。」
「うん。」
「この借りは十倍にして返してあげるからね。楽しみにして待ってんのよ。」
「・・うん。」
「あんたバカ?さっきから「うん」しか言ってないじゃない。ちゃんと人の話を聞いてんでしょうね?」
「うん。・・・って、あ、あれ?ご、ごめん、アスカ。」

シンジが慌てるのを見ながらアスカがくすくすと笑う。そのうち、何か思いついたらしく、小悪魔的な表情になってシンジの耳元に顔を寄せ囁く。

「まあいいわ。そのかわり、あんたは今から、「うん」としか言っていけないからね。いい?」
「?・・・う、うん。」
「ふふ・・・。じゃあ、ねぇ・・・シンジ・・・・・。あたしのこと・・・好き?」
「え!?」

シンジは驚きのあまりアスカを落としてしまうところだった。それから、質問の意図を理解し、顔が耳まで赤くなる。それでもシンジはアスカを背負って歩きながら、質問に答える。

「・・・・・う、うん。」

シンジは答えながらアスカの表情を知りたいと思ったが、背負っていてはそれもかなわなかった。さらに耳元でアスカの声が、先ほどより幾分弾んで聞こえてきた。

「それじゃあ・・・、ずっとあたしの側に居てくれる?」
「・・・・うん。」

シンジの返事にも今度は力がこもっていた。アスカはそれを聞いて嬉しそうにシンジの背中に顔をうずめた。アスカのそんな仕草にシンジは赤かった顔をますます赤くして、歩調を心なし緩めた。 と、とたんにわざとらしい咳払いの音が聞こえていた。

「こほん、こほん。二人とも私が居るって事忘れてない?」
「え?!、ヒ、ヒカリ?やだ、居たの?」
「居たのって・・・・。あなた達、私を助けに来てくれたんでしょう?まったく。」

シンジ達から、十歩ほど離れて(最初は三歩ほど後ろだったのだが・・・・)、ヒカリがため息を吐く。別にラファエルにさらわれてから、酷い目に遭ったわけでもなく無事な姿を見せている。

「あ、あのえせ商売人はどこ行ったのよ。あいつまでどっかで見てたんじゃあ・・。」
「アルさん?そういえば、さっきから姿が見えないや・・・。どこ行ったんだろう?」
「まあいいわ。あれはほっとくとして、マナやケンスケの所に向かうわよ。・・・・・と、その前に降ろしてくれない?シンジ。流石にマナに見つかるとうるさいしね。」






シンジが来たとき、そこは瓦礫の山だった。もはや建築物だったという面影は何一つ残っていない。当然、人影も一つもなかった。

「やっぱり、さっきの爆発はここだったんだ・・・。マナとケンスケは・・・・・・・。」

シンジが呆然として呟いたとき、瓦礫の山の一角が派手な音を立てて崩れ落ちた。もしやと思い駆け寄ると、はたしてマナとケンスケがいた。マナはケンスケを瓦礫から庇うように覆い被さっている。マナのドレスはあちらこちら破れたり、汚れたりしていて、浮浪者の様な格好になっていた。

「マナ、ケンスケ!」

シンジの呼び声にマナは気が付いたようで、ふらふらと起きあがって無事であることを示すように手を振る。

「やっほー、シンジ君。ヒカリはうまく助け出せたみたいね。」
「マナ、どうしたの、この有様?」
「あはは・・・、あのアサシン達、ちょこまかちょこまかしてなかなか魔法あたんないから・・・。」
「だからって、建物ごと破壊するなんて無茶苦茶だ!おかげで俺の宝物が・・・・。」

叫んだのはケンスケだ。起きあがってすぐ心配したのが、自分の身ではなくカメラだというのは見上げたものである。

「文句言わない。瓦礫から身を挺して助けて上げたのは誰だと思ってるの。しかも、こーーんな美少女に抱きすくめられるなんて、天にも昇らんばかりに喜んだっていいはずよ。」
「・・・・ホントに天に召されるかと思ったよ。霧島がベゼルアイの「鋼化」を使ったまま抱きしめられたんで、体中が痛い・・・・。」

ケンスケとマナのやりとりにその場の空気がふっとゆるむ。やがて、誰ともなしに笑い出した。それと同時に、どこからか鐘が鳴り響いた。夜明けを告げる鐘の音が・・・。それはリーザス新王が誕生して最初の鐘の音であり、少年達の戦いの終わりを告げる鐘でもあった・・・・・。






その数時間後、リーザス兵がムスカ家の屋敷に突入。そして、書斎にて短剣で胸を刺し、絶命しているラファエルが発見された。誰もが追いつめられての覚悟の自殺と見て、その事実を疑う者はいなかった。なお、その場に居たと思われる紫の将・メルフェイスの姿はどこにも見あたらなかった。
シンジ達においては一時身柄を拘束されたが(あれだけやれば当然だが・・)、ラファエルの方に全責任があるとして、なんら詰問されるでもなく解放された。こうもあっさりと処理されたのはアルの力が背景にあったらしく、アルはそれを誇るように、

「シャングリラの商人はどんなものもただで人にやる、ゆうことはないんや。恩も当然然り。これは貸しなんやから後で倍にして俺に返したってや。」

いちいち言い残すと、アルはシンジ達に手をひらひらと振りながらとっとと故郷に帰っていった・・。

そして、そのさらに数時間後、白の将・エクス・バンケットがオークスの街にて反乱を起こす。周辺の街は瞬く間に占拠。参加者の数はリーザス軍の半分にも至ったという。

こうして・・・、リーザスはヘルマンとの前戦役からわずか一年で再び戦火に巻き込まれることとなった。

そして、シンジ達は・・・・、

「いろいろ、迷惑かけて済まなかったな。」

シンジは帰りの車に乗り込もうとしていた。その時、ふとリーザスの将軍らしき人物に呼び止められたのだ。その第一声がそれだった。
全身が真っ赤な鎧をつけた戦士だ。頭部もヘルメットですっぽりと覆っている。それだけになおさら誰であるかわからない。

「あの・・・・すいませんけど。」
「?ああ、これは失礼した。」

そう言って男はヘルメットを取った。その中から現れた顔にはシンジは見覚えがあった。結婚式の夜、中庭で出会ったリックとかいう将軍だ。

「あなたは・・・・、リック将軍・・・ですよね。」
「覚えていただいて幸いだ。いや、本当に自国のいざこざに君や君の友人達を巻き込んでしまったことを深くお詫びする。」
「いえ、いいんです。こちらこそなんだか無茶苦茶やってしまって・・・。」

そこで、ふと会話がとぎれる。シンジとしてはこの際、聞いておきたいことがあったのだがなかなか言い出せない。

「結局、答えは出なかったよ。」

リックが唐突に、ぽつりと話し始めた。最初、何のことを言っているのかわからなかったが、次第にあの夜の中庭での会話のことを言っているのだとわかった。リックはうつむきながら独白するように話す。

「これから、僕らの国に起こる戦いは、本当に無意味でばからしいものだ。リーザスの兵は今まで、一年前の戦争の時も、皆、国を守るため一丸となって戦ってきた。その仲間達が、今度はお互いに本気で戦い血を流すことになる。殺し合うことになる。どう考えてもそうすることに正当な理由などは見つけられなかった。だが・・・・、」
「逃げちゃだめなんですよね・・・・。」

シンジがリックの言葉を継いだ。リックははっとしてシンジの方を見る。

「・・・・・人を、仲間を殺すことからか?」
「いえ、戦うことから・・・。人を傷つけるのも、人から傷つけられるのも怖いですけど、逃げちゃいけないような気がするんです・・・。」
「それが、君の出した答えか・・・・・。」

リックはシンジの言葉を聞いて、その言葉を頭の中に巡らすように目を閉じて考えていた。
やがて遠くからシンジを呼ぶ声が聞こえてきた・・・。

「シンジー。何ぐずぐずしてるのよ。置いてくわよー。」

その声にシンジははっとして、リックの方に軽くお辞儀をして、アスカの方を駆け寄ろうとした。

「シンジ君。」

リックがその背に声をかける。その後、リックは何かを言おうとして、言いよどんだ。代わりにフッと微笑んで言葉を続ける。

「また・・・・、会おう。」

この国では、別れるときに「さよなら」とはあまり言わない。別れるときは次の再会を期待してこの言葉を言う。いつか再び出会うことを祈って・・・・・。リックはこの戦乱を生き抜くことを、シンジは成長し再びこの地を踏むことを願って・・・・。

「はい!」

シンジの声がそのことを約束する、何よりも力強い証だった。






空間・・・・・・・。そこは空間だった。部屋と言うには広すぎる。広間と言うには簡素すぎる。
そこにあるのは、ただ、一対の机と椅子。明かりすらも最小限にしかないその空間において、無駄といえるものはその広さだけだった。

一人の男が椅子に腰掛けている。年齢は40前後だろうか。黒い魔導衣に身を包み、顔は髭と眼鏡で覆われている。
彼は机に肘を置き、手を組んだまま身動き一つしていなかった。が、それにも関わらず、彼はこの広い空間を支配しているかのような、存在感を発していた。

ふと、今まで音の無かったこの空間に、扉の開く、不愛想な音が乱入してきた。音はとある人物を伴ってきた。髪がすでに白髪がかっている初老の男だ・・・・。衣装から魔法使い、しかも将軍クラスだとわかる。

「六分儀、今、アル・ウェポンから報告が入った・・・・・。」

初老の男が話し始める。が、六分儀と呼ばれた男からはなんの返答も返ってこない。それがいつものことなのか、初老の男は気にするでもなく、言葉を続ける。それは手元の書類を読んでいるかの様な、事務的な簡素なしゃべり方だった。

「リーザスにおいて、エクス・バンケットによる、反ランス王の反乱が起こった。が、反乱は軍部の一部のみで、貴族、商人などの加入はない。鎮圧されるのは時間の問題だということだ・・・。どうやらアルがうまく、ムスカ家の方を始末してくれたようだな・・。」
「多少のハプニングは付き物だよ。全ての物事がゼーレの思惑通りに運ぶわけではない。」

男が初めて口を開いた。もっとも口元は、組んだ両手に隠されてはいるが・・・・。

「お前が運ばせないのだろう?まったくお前といい、アルといい、ゼーレに対して、忠実な者がどれだけ居ることやら・・・。」
「忠実だよ。これまでゼーレのシナリオ通り運んでいる。老人達に不満はないはずだ・・・。」

男はあざ笑うかの様に唇の端をつり上げる。それは、男の組んだ両手の影になっており見えることはなかったが、それでも初老の男は薄気味悪さを感じざるを得なかった。

「そう、全ては予定通りだ。・・・・・・何事も問題はない・・・・・。」





第十話 終わり


第十話に続く

ver.-1.001997-12/11公開

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あとがき

YOU「ふう、なんとか中編を作らずに済みましたね。しかし、長かったリーザス編も終わり、やっと一段落つきました。」
ヒカリ「ちょっと待って、一つ聞きたいんだけど、あなた一週間って何日間あるか知ってる?」
YOU「えーと、たしか十日間ほどありませんでしたっけ。」
ヒカリ「ふーん、それじゃあ、あなたの「週刊ペースで投稿しよう」って前言も守られてるわね。」
YOU「その通りですね、よかったよかった。」
ヒカリ「・・・・・・ってそんなわけないでしょう。なんで、すでに出来ていた物を投稿するのにこんなに時間がかかるの!?」
YOU「不思議ですねぇ・・・。まあ、それはともかく、魔導王に区切りもついたし、もう一個の連載の方(催促してくださった方々、申し訳ありません)やら、めぞんの500k記念やらに取りかからねば・・。」
ヒカリ「もう一つの連載はいいとして、500k記念?祝うなら400k記念じゃないの?」
YOU「ふっ・・・・、そんなの間に合うわけないじゃないですか。だてにお部屋の10k記念を書こうとしてものの見事に失敗したり、魔導王のここまでを十話で終わらすはずが予想以上に膨らんでこのざまになったわけではありませんよ。」
ヒカリ「・・・何故、そういうことを自慢げに話せるのかしら、この人は・・・ ・・・。」


 YOUさんの『魔導王シンジ』第10話後編、公開です。
 

 トラブルを起こす立場であったアスカ達、
 今回は逆に思いっ切り巻き込まれましたね。
 

 強引であったり、
 繊細であったり、
 真っ直ぐであったり、
 搦め手であったり、
 

 様々な形容詞が浮かぶ戦闘でした!
 

 

 戦うと言うことは、”命”を賭けること・・。

 シンジが悩んだこのことに
 今回アスカも・・。

 +何かのために戦う者の強さ。
 

 戦いの後の成長も見えましたね(^^)
 

 

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