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鳴り響くサイレンの中

少年は走った

放っておけば失ってしまう何かを守るために

少女は走った。

ただ一つの役目を果たすために

少女は走った

指の隙間から滑り落ちそうになった大切な何かを再び掴むために・・・

「おばさま!!シンジとレイは居ますか!?」

26からのストーリー

第四話:不安の歌を!(後編)


「敵の様子はどう!?」
「依然市街地に向けて進行中、このままだと後・・・30分ほどで最終ライン突破されます!!」
「そっちの様子は!!」
「零号機、初号機スタンバイOK、パイロット到着次第出撃できます!!」
「第二、第三空挺団、三次防衛ラインまで後退!!」

・・・全くこんな時に限って司令は居ないんだから・・・

葛城ミサト三佐は彼女を取り囲む無数のモニターを睨みながら矢継ぎ早に指示を出していた。
「敵のデータは出来るだけ取って!!254ラインにオプションB、セット!!富士基地に協力命令、空挺団の援護をさせて」
司令・副司令が居ない今、ここの指揮を執るのは彼女だ。決して軽くはない重さが彼女を押しつぶしそうになるが、これから送り出すであろう少年と少女に押しつけた重さに比べれば耐えることが出来た。

「ミサト、あれ一応使えるけど・・・どうするの?」
珍しく戸惑いの表情を浮かべた赤木リツコ博士がそう問いかける。
「使うわ。この際何でもいいの、役に立てば!!」
ジェットヘリが次々と攻撃を仕掛ける。が何一つ効果が上がっていないのを見て取るとミサトの心がざわつく。
ATフィールドに守られた人類の敵、通常兵器の通用しない相手、圧倒的な破壊力、
そして・・・・・・
「正体不明か。喧嘩するんにはちょっち分が悪いわね」
不安要素は幾らでもあるが、もっとも大きな要因がミサトの頭の中を埋めていた。

「パイロット到着しました」


「綾波・・・・今度も・・・勝てるよね・・・」
「・・・怖いの?・・・・」
赤い瞳がシンジを見つめる。まるで心の中に入り込んでくるような視線だった。
「怖くても・・・やらなきゃいけないんだよね・・・」
辛うじて口にした精一杯の虚勢。
「そう・・・・何のため?・・・」
「アスカを・・・母さんを・・・守りたいから・・かな」
だがその為にシンジが戦わなければならない理由はない。
他の誰かでもいいはずだ。エヴァに乗れれば・・・。
「綾波は何でエヴァに乗ってるの?」

「理由はないわ・・・あたしの役目だから・・・ただそれだけ・・・」

レイはそれだけを口にするとエレベーターに向かって歩き出していった。
一つの思いを胸の中に押し込みながら・・・

・・・あたしは・・・守って・・・くれないの?・・・あの時みたいに・・・・

「エントリープラグ挿入、LCL注水、A10神経接続開始!...ハーモニクス正常!...各部神経接続終了!」

マヤの報告は順調に進み最終段階に達した。

「シンクロ率63.2%、絶対境界線突破・・・・初号機起動!!」

・・・さてと、問題はこれからね・・・

「マヤちゃん、零号機はどう?」
「異常はありませんが・・・やっぱり出力が安定しませんね」

不安の内の一つは零号機だった。プロトタイプなので完成度が低く信頼性に乏しい。
近接戦闘においては今のところ使徒に対して歯が立たない。それ故初号機のバックアップ専門に位置づけたのだが・・・・

もう一つの、そして最大の不安要素はリツコが指摘した。
「やっぱり初号機、フィールド無展開ね」

ATフィールド。
使徒に対してエヴァで対するのは、使徒と同じATフィールドを展開出来る事だ。
ATフィールドによってATフィールドを中和。それによって物理攻撃が有効になる。でなければミサイルを撃ち込もうが、ガドリングガンを撃ち込もうが意味がない。
それは先程からモニターの中で映し出されている自衛隊や国連軍を見ればよく分かる。

そしてもっとも問題視されるべきはその発生原理が分からない、と言うことだ。

しかもその分からない物をどうやってシンジに教えるのか・・・

ミサトもリツコもエヴァには乗れない。在る程度扱い方は教えられるがそれ以上のことは無理だ。
レイの場合、あっさりとフィールドを展開したがシンジに教えることは出来ないようだ。
感覚の問題、色を口で説明するように難しいらしい。

「仕方ないわ、今更。向こうからやってくるんだから」

最強の鎧にして最大の武器、それを持ちながら使い方が分からない。
実戦2回目の少年。
そして零号機は不安定・・・・・。

ミサトは思わず頭を抱えたくなる。だが逃げるわけには行かない。ミサトが言うように向こうからやってくるのだ。呼びもしないのに。

覚悟を決めるしかない。

「零号機、初号機、出撃!!!」


シンジは隣に立つ零号機を眺めていた。
「綾波。きっと勝てるよ」
初号機のモニターにレイの顔が映し出されたがシンジを見てはいない。
「分からないわ」
素っ気ない返事は、シンジを些か落胆させる。
「あの・・・・」
「作戦開始時間よ・・・」
「う・・・ん」
二体の巨大な人造人間が動き出し、辺りに重い足音が響きわたっていく。

巨人達の陰が長く伸び始める時間。
空の色が辺りの建物を赤く染め、新緑の木々を訪れる夜の安らぎのために落ち着いた色調に変えていく。

「レイ、使徒のフィールド中和よろしくね。シンジ君は中間距離からの攻撃、パレットガンの弾数に注意して・・・・来たわよ!!」

それは現れた。
シンジにいつかの恐怖、激痛が蘇りその体を震わす。

「ここで叩かないとちょっちやばいのよ、後ろはもう市街地だし。二人ともそこんとこよろしくね」
ミサトはわざと明るく振る舞った。
発令所のモニターに既に血の気の引いたシンジの虚ろな表情が映し出されたから。
彼女の言うようにまっすぐのびた片側3車線の国道は、その先の光の都へと延びている。そこにはアスカと自分の母親がいる・・・・・。
いくらか効果があったのかシンジは、パレットガンのチェックをし始めた。
だが震えが止まらない。

・・・やらなくっちゃ・・・僕が・・やらなくちゃ・・・逃げられないんだ・・・

頭の中で幾度も同じ事を繰り返す。
・・・あたしの役目・・・それだけ・・・何もない・・・他には・・・

レイは使徒をスコープの十字架につるし上げる。

零号機の持つ長距離ライフルが咆哮をあげた。


第三新東京市中央区避難所

「ちょっと待ちなさい!!アスカちゃん!!」
外へでようとする彼女をユイは腕を掴み、なんとか阻止した。
「だってシンジもレイもまだ来て無いじゃない!!探しに行かなきゃ!!」
「大丈夫よ。きっとどこかに入ってるから!!」
だがアスカを納得させることは出来ない。
普通ならシンジもレイもどこかの避難所に入っている、と考えるが今のアスカにそんな事は思いつかない。

「アスカちゃん!!」
ユイの腕を振りきって走り出そうとするがどうしても彼女を振りほどけない。
「おばさま離して!!離してよ!!探さなきゃ!!二人を捜さなきゃ!!」
それはもはや絶叫だった。既に判断力はない。
普段で在ればここまで取り乱さないがシンジ達が側に居ない事、今日一日中シンジ達と喧嘩していた事、

そして・・・・・・・・

・・・未だ、レイにもシンジにも謝って無いじゃない・・・

そしてこのまま逢えなくなる・・・・過大な負荷のかかったアスカの思考は、そう直結した結論を導き出し、彼女の心をがんじがらめにしたのだ。

「離しなさいよ!!」

パチン!!

アスカの頬が乾いた音を立てた。
「落ち着きなさい!!アスカ!!」
そこにはユイの厳しい表情があった。
「おば・・・さま・・・」
「いい、落ち着きなさい、アスカ。あの子達は大丈夫よ。どこかの避難所にきっと隠れているから、それに未だ市街地は何にも起きてないでしょ。ね」
「・・・・・・・・・・・・」

ようやく落ち着きを取り戻したアスカはユイを見つめた。
さっきとは違った優しい顔。
「・・・はい・・・・」
「待ちましょ、きっと帰ってくるから、アスカちゃんの所に・・・・」


「うあああああああああああ!!」
使徒の持つ『光の鞭』を避けきれなかったシンジは直撃こそ受けなかったもののその衝撃で後方に大きく吹き飛ばされていた。
「レイ!!援護!!」
ミサトの指示が飛びレイのライフルが幾度目かの咆哮をあげるが今のところ絶対的な効果は出ていない。
「使徒のフィールドはどう」
「いくらかは零号機に中和されていますが・・・まだ有効値には達していません」
「ちっ・・・やっぱまずいわ・・・」

初号機の中間距離からのパレットガン斉射、零号機による遠距離からのライフルの狙撃、いずれも命中はするが効果は上がっていない。すべてATフィールドに阻まれ使徒には達していない。
「どうするのミサト・・・ポジトロンライフル使う?試作品だけど」
「無駄よ・・フィールド何とかしなくっちゃ・・・」
「教えようがないわね、あればっかりは。エヴァに乗れない身としては」
「!!」

初号機に『光の鞭』が襲いかかりエントリープラグ内のシンジに激痛を与えた。
「危険です!!フィールド展開してないから直接ダメージがパイロットに!!」
マコトの悲痛な報告はミサトの血の気を引かせる。
スクリーンの中に二度三度攻撃を受ける初号機の姿があった。
「フィードバック限界値に達します!!」

「碇君!・・・」
突撃した零号機が使徒の巨体に体当たりし、辛うじてそれ以上の攻撃をくい止めた。
「・・・綾波・・」

・・・情けないよ、これじゃあ誰も守れ無いじゃないか!!僕じゃ駄目なの・・・

「きゃあ!!」
使徒は零号機を一撃ではじき飛ばすと再び初号機に向かい前進する。
「きた・・・・」
「シンジ君!!逃げなさい!!」

・・・逃げろって・・・何処へ・・・それに逃げたら守れないよ・・・誰も・・・

シンジの目にこの戦闘で潰された民家が映された。
そしてシンジはその家の中にアスカと彼の母親の姿を見たような気がした。
もっとも最悪な姿の・・・

・・・戦わなきゃ・・・守らなきゃ・・・守る・・守る・守る守る!!

「あああああああああああああああああああああああああ!!」
初号機は突進した。

「シンジ君!!バカ!!逃げろって言ってんでしょ!!」

・・・守らなきゃ駄目だ!!逃げない!!・・・

何かが噛み合ったような気がした。

・・・そうだ、僕じゃなきゃ駄目なんだ・・・

動かなかった歯車が回りだしたように、組上がらなかったパズルが完成したように、在るべき物が在るべき場所に収まった、そんな感じがする。

・・・倒さなきゃ・・・僕らが!!・・・

突進する初号機目がけて光の鞭が唸りをあげ、まるで光る蛇のように襲いかかってくる。が・・・・

「初号機フィールド展開しました!!各ゲインも上昇中!!凄いっすね・・・この数値」
「なによこれ・・・」
ミサトとリツコは信じられない様子でモニターを見つめた。
だがそれが計測ミスではないことは、スクリーンに映し出された初号機が使徒の攻撃を直前ではじき返し、はね飛ばした事で証明されていた。

「・・・これが・・・」
目の前で八角形の光が浮かび上がり攻撃を防ぐのを見て、シンジはむしろ驚いていた。
「僕に・・・出来たんだ」
だが感激している場合ではない。まだ攻撃を防いだだけなのだ。
「綾波!!そこから離れて!!」
シンジはまずレイに呼びかけ、彼女を後方に下がらせた。越権行為ではあったが仕方ない。
「ミサトさん!!フィールドが無くなれば普通の武器でもいけるでしょ!!」
「そりゃ、まあ・・・でも中和できるの?」
シンジの変わり様に呆気に捕らわれながらもミサトは答えた。
「やれます!!だから綾波がとどめさして!!」

実際の所、零号機の不安定な出力ではフィールドを中和しきれない。そしてシンジは接近戦闘の仕方など分かっていない。
だとしたら初号機でフィールドを中和、しかる後に零号機による狙撃で使徒を殲滅。

「・・・・よし乗ったその話!!リツコ、ポジトロン・ライフル借りるわよ!! マヤ、254ラインにライフル設置、射出35番に出して!!レイ、聞いたでしょそう言うことだから35番でライフル受け取って!!」

ミサトにようやく一筋の光が見えてきた。
さして明るくも太くもないが。


「レイ、そのライフル試作だから三発しか装填されてないの。落ち着いて良くねらってね」
リツコの説明はごく簡単で
「今までのライフルと使い方は同じよ」
で済ませた。

「・・・・」
「綾波なら大丈夫だよ」
「どうして?」
「よく分からないけどそう思う・・・」
「碇君は怖くないの?」
「うん・・・綾波が居てくれるから・・・ほらさっき助けて貰ったし」
「・・・・・・・」
「信じてるからかな・・・綾波のこと・・・・・・」

・・・信じてる?・・・あたしのこと・・・

「やるわ・・・あたしの・・・・」
役目・・・とは言わなかった。それとは違う気がしたからだ。

国道の中央にレイが配置されライフルを持って待機している頃、シンジは再び使徒へ向かって突進していた。
「このおおおおおお!!」

ガキン!!

甲高い衝撃音が響きわたる。使徒は八角形の光を浮かび上がらせたがそれに構うことなく再び殴りつけた。

ガキン!!

「どう。中和できてる?」
「全然同調してませんよ。葛城さん、他の方法考えた方がいいんじゃないんですか」

マコトの問いかけにミサトは首を振った。
「信じなきゃ。あたし達が信じなきゃ辛すぎるもの、あの子達」

おそらく戦っても誰も誉めてはくれない。
公表されない組織だから。
それに押しつけた以上最後まで信じなきゃ申し訳ない・・・。

まるで子供の喧嘩のようにシンジはむやみやたらと殴りつけていた。その度に甲高い音が鳴り響く。
シンジには中和の方法が分からない。知っているわけがない。ついさっきフィールドを展開できたばかりなのだ。
だから・・・フィールドを破壊する。

「このおお!邪魔だああ!!!」
大きく叫びながら初号機の腕を振りおろした。

ビキン!!

「消えろ!!消えろ!!消えろ!!きえろおおおお!!」

ベキン!!

「そんな・・・フィールドを叩き壊すつもりなの?あの子・・・」
「先輩、でもフィールドに変化がでてきました・・・・これ・・・初号機から一方的に浸食してます!!中和してるのとは違います!!」
「何なのよ・・・・一体・・・」
自分で初号機を作ったのだが全く予想しない事になっているのを見ると、何やら寒気のような物をリツコは感じていた。

何かが飛び散った。
まるで電球が砕けたような音をさせ、光の玉を飛び散らせたようにフィールドは砕け散った。
「!!」
「んなバカな!!フィールドをたたき壊したあ!?」

「あやなみいい!!」

シンジは使徒の光の鞭を掴むとそのまま国道に放り投げた。
戦い方を知らないシンジの最後の仕事。
ねらいを付けたレイの前に使徒を引きずり出す!!。

「レイ!!」

試作品のポジトロン・ライフルから三本の光の筋が一瞬だけ伸びていく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おっつかれーーーーこれでも飲んでてーー」
ポーンと缶コーヒーをトレーラーの荷台に座って一息ついていた二人に渡すとミサトは後片づけへと向かっていった。

「・・・・何とか倒せたね」
シンジは缶コーヒーを一口飲むとそう話しかける。
「そうね・・・・・碇君・・・」
「?」
「あたしの事・・・信じてるって・・さっき言ってた・・・」
「うん・・・・・」
「なぜ?・・・・」
レイは下を向いたままシンジの言葉を待った。
「よく分からないけど・・・綾波だからだと思う」
「・・・・・・・」
レイの望んだ答えを出したか少し不安だったがレイの表情は下を向いたままだったのでよく分からない。

・・・・あたしだから・・・・信じた・・・・

まるでレイはその掌に何かを受け取ったような仕草をしていた。

今まで彼女には何もなかった。エヴァに乗る理由すら・・・。
いつの頃か“役目”と言う理由をゲンドウから貰った。それが生きる理由でもあった。
だが他には何もなかった。ただエヴァに乗るためのみの存在だった。

そして・・・

「あたしは・・・碇君に・・・貰ったの・・・・・・」

聞こえない声、伝わらない言葉、それでも良かった。
たった今、掌に入れた物が何か分かったと思う。

・・・とても大切な物・・・

レイは宝物をその白い掌で守るように包んだ。

まだとても脆く、とても小さいから・・・

誰かが触って壊さないように、突然の風で飛ばされないように・・・・


「しっかしねえ、まさかATフィールド壊しちゃうなんて呆れたわ」
ミサトはトレーラーの荷台にいるシンジ達を眺めながらリツコに問いかけた。
「ああなると思った?」
リツコの返答はごく簡単だ。
「いいえ」
彼女の表情は険しい。
設計上の範囲外の動きをしたエヴァ初号機。その事実は決して軽いものではない。
ミサトの表情に暗い陰が落ち始めた。
「我ながらとんでもない物・・・作り出したのかも知れないわね・・・」
リツコの言葉は重い。

「母さん・・・貴方何を作ろうとしたの?・・・・」


月が出た。
第三新東京市の住宅地の中に在るシンジ達の家の玄関先からもよく見えている。
「じゃあ、ゆっくり休んでね。お疲れさまー」
ダミーノイズを響かせ青いルノーは走り去り、シンジは玄関を開けた。

「ただいまー」
「・・・ただいま」
「お帰りなさい。さ、お腹空いたでしょ」

そこにアスカの姿はない。

・・・まだ、怒ってるのかな・・・

学校から帰る時『自分から話しかける』と決心していたが、既にぐらついていた。

・・・出てこないって事は相当怒ってるよな・・・

と言うのが理由だ。
だからと言ってこのままと言う訳には行かない。それに遅くなった言い訳もしなければならない。
「何してるの?早く手を洗って夕飯にしなさい」
「分かってるよ・・・行こう綾波」
食堂から聞こえる母親の催促にシンジとレイはドアを開けた。

アスカが居た。

「あ・・・・・・・・・・・・ただいま」
「何よ!!その態度!!あんた達ね何処ほっつき歩いてたのか知らないけど何時だと思ってんのよ!!」
「何時って・・・・・・・・・・・9:00だと思うけど・・・時計も・・・・」
「あんたね・・・・・」
そこでユイが割って入った。
「ほらほら二人とも、お料理冷めちゃうでしょ。せっかくアスカちゃんが作ったのに」
改めてテーブルをみるとそこにはサラダにコンソメスープ、メインがハンバーグという基本的な洋食が人数分並んでいる。
「アスカが・・・・」
「何よ・・・・何か文句あんの・・・」
僅かに顔を背けながら一応シンジに詰め寄った。ほんの少し顔が赤い。
「無いよそんなの。美味しそうだなって思っただけで」
「美味しいのよ。あたしが作ったんだもん」

レイはしげしげと料理を見つめ、早速席に座った。シンジもそれに習い席に座る。
「いただきましょ」
「いただきます」
緊張した面もちでシンジとレイを見つめるアスカ。
「・・・・・美味しいや」
「アスカちゃん、美味しいわよ。苦労した甲斐があったわね」
レイは何も言わなかったがその食べる様子から見ると美味しいらしい。
ようやく緊張が解けアスカは自らの手料理を口に運んだ。

食事も終わりユイは台所で後片づけをはじめた。アスカが手伝いに名乗りを上げたが
「いいのよ、そっちで休んでて」
の一言でリビングへ移動する。そこには手伝いから逃れるべく真っ先に逃げ出したシンジが、さして面白くもないドラマを見ていた。

「あのさ・・・・その・・・・朝の・・・」
「何よ。料理つくって上げたのにまだ何か文句あるの」
シンジは悟った。

・・・あれがアスカの「ご免なさい」だったんだ・・・

「ううん、美味しかった。その・・・・ありがと」

さっきより赤くなったアスカの顔を眺めシンジは少し微笑んだ。
入浴中のレイには後でそう話そう。

それでたぶん明日はいつもと同じ朝が来る。そしていつもと同じ一日が始まるだろう。
その事はこの三人の少年少女にとって、とりあえず良いことの筈だ。

アスカがシンジの顔を見るとおもむろに自分のハンカチを取り出した。
シンジの口の端が赤い。ケチャップが付いている様だ。
アスカの手に握られたハンカチが優しくシンジの唇に触れた。

「ほらみっともない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ・・・」


次もサービスってやつです

ver.-1.00 1997-04/06

ご意見・感想・誤字情報などは dionaea@ps.ksky.ne.jpまで。


ふらいーみーとーざむーーーーんっと あ、どうも失礼しました。
今回もお読みいただき有り難うございます。作者のディオネアでございます。
26ストーリ第4話『不安の歌を!』前後編お楽しみいただけたでしょうか。
ラブコメとは少し違った雰囲気を出してみたのですがって今までラブコメらしいモノは書いてなかったかな・・・(^^;

さて少し補足させていただきます。レイがハンバーグを食べるシーンがありましたが、TVでは肉を嫌いとか言っていたのでどうしようかと思いましたがこうしました。
理由は肉を食べない理由が見当つかなかったからです。まあ宗教上の事とか色々在るんでしょうがそっちの方は詳しくないんで。(大体ラーメン食えるんだから大丈夫だろうに)

それとATフィールド云々は適当です。光の壁って事しか知らないんで別に良いと思ったんですけど誰か詳しいことご存じでしょうか(^^;

それと今回からバックを変えてみましたがいかがでしょうか?見づらい、もっと良い色があるよなど在りましたら是非ご教授下さいませ。
とまあ、色々苦労しながらですが何とかやってますのでどうか末永くお付き合いのほどを・・・。
では次回26ストーリー『まだ決まってないけどラブコメだー(仮題)』でお逢いしましょう。

お読みいただき有り難うございました。

ディオネアm(__)m


 ディオネアさんの 『26からのストーリー』第4話 第4話:不安の歌を!(後編)発表です!

 アスカを、母を、みんなを守る。
 それがシンジのEVAに乗る理由。
 それがシンジに力を与える・・・・。

 シンジは綾波を「信じる」、
 レイはその行動、その言葉に「何か」を得る・・・・
 レイの「何か」が変わる・・・

 第4は後編は前編戦闘でした。
 しかしそれはシンジ、レイの心の物語でしたね。

 戦闘シーンで「心」を描く。これこそEVA!!

 ラストシーンでアスカはやっとハンカチを使えました・・・・いいですね・・・

 さあ、ディオネアさんにメールを送って下さい。
 貴方の言葉をディオネアさんに伝えて下さい。


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