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彼女がかわった理由
コ・ド・モ 〜 baby 〜






ちゅん、ちゅん

雀の鳴き声の聞こえる穏やかな朝・・・・・それは、いつもの朝のようでいて、ちっともそうではなかった・・・。
シンジがいつものように軽く欠伸をしながらキッチンに向かうと、アスカが彼より早くそこにたっていたのだ。

「・・・?な、何で・・ア、アスカが?・・」

「あら、シンジ様おはようございます」
「へ?・・・シンジ様って・・・?」
「もうすぐ朝食ができますから、お座りになってお待ちください」
「え?、ううん・・・」

どういうことか戸惑っているシンジをよそに、アスカは手際よく朝食の用意をしている。

放心したまま、シンジはテーブルにつく。しばらくすると、アスカが朝食をお盆にのせてやってきた。

「はい、シンジ様、朝食です」

そう言って、アスカはお盆をテーブルの上に丁寧に置いた。

お盆の上にはどういう訳か赤飯、タイの尾頭付き、昆布巻きといった祝い事には欠かせない定番な料理が並んでいた。

驚いてシンジはアスカの顔色をうかがう。アスカはとても上機嫌にみえる。

(何か良い事あったんだろうな。けど……)

それは『シンジ様』には直結しないな〜、とか思って、シンジは訊ねてみた。

「へぇ……、アスカ、何か良い事でもあったの?」

「ええ、もうとびきり良い事が」

「ふーん、何?」

アスカはお腹をさすって答える。

「子供が、できたみたいなんです。それもシンジ様の……」

「ふーん……えっ、え?えー!?

シンジは大きな声で驚いて、思わず立ち上がろうとして、

がつっ

と膝をテーブルにぶつける。

「痛っ」

と、シンジは尻餅をついてしまった。

アスカはおかしそうに微笑んで言った。

「シンジ様、私、きっと良い奥さんになりますね……」

「ちょ、ちょっと待ってよアスカ。どうして子供なんて……、しかも今奥さん、って言ったよね?」

シンジはへたり込んだまま、狼狽しきった表情でアスカに訊ねる。

「ええ」

「いつのまに……」

それはこっちの台詞だよ。シンジ君。

「あら?シンジ様は覚えていらっしゃらないのですか?」

「いや、覚えてないってゆーか、思い当たらないとゆーか……」

「ちょうど、三ヶ月前ですよ」

「三ヶ月前……、あ」

シンジは思い当たる事があった。

その時も、ミサトは出張でいなくて、二人で夜遅くまでTVを見て……、

「え、で、でも、子供ってあんなことでできるの?」

「そうですよ。ご存知じゃなかったのですか?」

「初耳だよ……」

シンジは、心ここにあらず、といった感じで答えた。

子供、奥さん、結婚……などといった言葉がシンジの中をぐるぐると回り続けていたのだ。

たださ、シンジ君、君まだ14歳だろ?

アスカはそんなシンジの側に座って、

「あなたの為に、きっと元気な子を生みますわ」

と、真顔で宣言する。

シンジは慌てて声をかける。

「ちょ、ちょっとアスカ」

「はい?」

「あの……まだ、そういうのって……早すぎるんじゃないか、と……」

「愛に年齢は関係ありませんわ」

「いや、そーいう意味じゃなくて、その、『結婚』とか『出産』は」

「昔は12歳で結婚、出産したと申しますし、私達は今14歳、決して早すぎるということは無いと思います」

「で、でもさぁ」

そこで、アスカはとても悲しそうな表情をする

「シンジ様……まさかシンジ様、私の事がお嫌いなんですか?」

シンジは思いっきり動揺して

「い、いや、そんなことはないよ、けど……」

「やっぱり……あの時の言葉は嘘だったのですか?」

「あの時の言葉……」

言われてシンジは、その時の事を回想する。

(確か……、部屋を暗くして『Scream』を見てて……、そしたらいつのまにか……)

なるほど、良くある展開だ。だが、どうやったら『Scream』でそういうムードを作れるんだ?

*注 Screamってのはホラー映画

(そして、終わったときに確か……『アスカ、愛してるよ……』って!)

「あの時シンジ様は確かに『アスカ、愛してるよ』って……」

「嘘だったんですね……シンジ様……」

「い、いや、そんなことない。確かに僕はアスカの事……」

シンジが慌ててそう言うと、アスカは途端に顔を輝かせ、

「本当ですか!?信じてもよろしいのですか?」

「も、もちろん」

「良かった……」

嬉しそうなアスカの手前、シンジはこれ以上何か言う事はできなかった。


その後、

(まいったなぁ……)

シンジは通学中も授業中も気が気でなかった。

無理もあるまい。若干14歳であんなことになればだれだってそうだろう。

(どうすればいいのかな……)

シンジは悩んだ。

(誰かに相談して見るか……でも誰に?)

自分で分からないことは他人に聞いて見る。シンジの処世術である。

しかし、今回はよほど相手を選ばねばいけない。信用に足る人物でないと、漏れた時にことである。

(綾波……は駄目だな。言い易いけど、どこに漏れるかしれたもんじゃない。)

(トウジとケンスケ……無理だな。この二人に話すわけにはいかないよ)

(洞木さん……真剣に考えてはくれるだろうけど、ちゃんとした答えがでるかどうか……)

(やっぱり、明確な答えが欲しい。ってことは、だれか経験者に聞くのがいいよな……)

(ミサトさん……は、論外だな。何言われるかわかったもんじゃないし、それこそネルフ中にしれわたっちゃうよ。)

(リツコさん……も無理だろうな。あの人はそういう事にはあまり興味なさそうだし)

(加持さん……もこればっかりは。モラルには結構うるさい人だし)

(マヤさん……は、駄目だな。洞木さんと同じだよ)

(日向さんか青葉さん……もよした方がいいな。上司への報告義務だなんだって……)

(えっと、普段あまりしゃべらない人で、信頼に足りて、経験者で……!)

シンジの頭の中で、ある人物が思い当たった。

さっきの『上司への報告義務』という言葉がキーとなった。

(あの人なら……、普段全くしゃべらないし、信頼も……多少はできる。経験者……、まぁ子供つくったことあるんだし)

そして、シンジは学校が終わるのを待った。


そして、帰り道。

シンジは「寄る所があるから」と言ってアスカを先に帰らせて、自分は家とは反対方向へと向かう。

(今日は……洞木さんとトウジが週番だし、ケンスケはいないし、誰かに会う可能性もすくないはずだ)

でも、一応念のため、隣町の商店街の電話ボックスへと向かう。

受話器をあげて、ネルフの特殊カードを入れて、直通番号をダイアルする。

呼び出し音が数回鳴った後、がちゃ、と受話器の上がる音と

『……私だ』

と、シンジが待ち望んでいた声がした。

「と、父さん」

そう、シンジが相談相手に選んだのは父、ゲンドウだった。

確かに、信頼にはあたるだろう、無口でもあろう、が、経験者なのか?

『シンジか、なんだ』

いつもながら、威圧感の塊のような声。

「あ、ちょっと、その」

シンジはビビって、言葉がなかなかでてこない。

『私は忙しい。用が無いなら切るぞ』

「ちょっと待って!その……できれば父さんと二人きりで話がしたいんだ。すごく、すごく大事な話だから、その……」

『……』

受話器からは何も聞こえてこない。

「十分、いや5分でもいいから、会って話せないかな。父さんにしかできない、とっても重要な話だから」

そこまで言って、シンジは受話器を伺う。

相変わらず何も聞こえてこない。

(……切られちゃったのかな)

『……30分後、司令室に来い』

ゲンドウはぶっきらぼうに言うとがちゃ、と電話を切る。

シンジもゆっくりと受話器を置く、そしてカードを取って、ガッツポーズをした。

(やった、初めて父さんが話を聞いてくれた……)

と、今隣町にいる自分を確認して、

(30分か……急がないと)

と、電話ボックスをでるなり、シンジは駆け出した。


電話してから28分後、シンジはようやくネルフ本部内の司令室についた。

急いで来たせいか、息が切れ切れだ。

(まだ二分ある、その間に呼吸を整えて、話す事を考えないと……)

だが、二分なんてあっという間に過ぎる。

考えがまとまる前に、時間はやってきた。

(待たせちゃいけない)

そう思って、シンジは扉をノックする。

「……シンジだな、入れ」

と、ゲンドウの声が聞こえた。

シンジはゆっくりと司令室に入っていく。

ゲンドウは例のだだっ広い部屋の中、中心の机に例のポーズで腰掛けていた。

「父さん……」

「5分で、いいな」

ゲンドウはイキナリ用件から入り。シンジに鋭い視線を送る。

その視線は、例によってシンジの体を凍り付かせる。

そんな事を知ってか、知らないでか、ゲンドウは訊ねる。

「用はなんだ」

「え、あ、いや、あの、その……」

いつも以上に言葉が出てこないシンジ。

ゲンドウは不機嫌そうに

「私は忙しいんだ。用があるんだろう、早く言え。でなければ帰れ!」

(逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ)

シンジは意を決して言った。

「あの……アスカが……妊娠したんだって……僕の子供を」

言ってしまってから、シンジは少し後悔した。またいつものように「そんなことか」とか言われると思ったから。

が、予想に反して、ゲンドウは大きい声で

「何ぃ?」

と言って立ち上がろうとして……机の角に膝をぶつける。うーん、親子だ。

尻餅をついてしまった父に、シンジは「大丈夫?」と声をかける。

「私は平気だ……だが、その話、確かなのか?」

心なしか、ゲンドウも動揺しているようにシンジには見えた。

「アスカが、そう言ってた。今朝、お赤飯と鯛と昆布もでてたし、間違いないんじゃないかな」

「心あたりも、あるんだな」

「三ヶ月前に、ちょっと……」

「そうか……」

ゲンドウはそう言ったきり口をつぐむ。

(父さんまで動揺してる……)

と、思った所で、シンジは自分は報告に来たんじゃなくて、どうしたら良いか相談に来た事を思い出した。

ゲンドウは、まだ地べたに尻をついたままである。

シンジが口を開こうとした瞬間、ゲンドウはカッと目を見開いてシンジを見据え、大きい声で、

「でかしたぞ!シンジ!!」

と叫ぶ。あまりのことに今度はシンジが驚いて、尻餅をつく。

「と、父さん?」

「良くやったな、シンジ。そうか……孫ができるのか……」

「あの……」

「安心しろ。出産費、養育費、私がちゃんと用立ててやる。病院も、医者も、すべてネルフの一流のスタッフを準備してやろう

そこまで聞いて、シンジは驚いて、

「父さん……まさか、生ませるの?

「当然だ。私の孫だぞ」

何を当たり前の事を、と言った顔で、ゲンドウは答えた。

シンジは今度こそ慌てて

「ちょ、ちょっと!だって父さん。どう考えたってまだ早すぎるよ!

「早すぎる……?おお、そうだな」

納得したゲンドウにシンジはほっとする、が、

「確かに……できたのだったら、結婚が先か。安心しろ、結婚の費用も私が全て用立ててやろう」

「!?父さん!」

今度はシンジが大声を出す番だ。

「何だ急に……アスカ君が嫌いなのか?」

「そうじゃないけど……、まだ結婚とか、出産て早すぎると……」

「何を言う。昔は12歳で結婚、出産したものだ。お前達は14歳、なんら早すぎる事はない」

アスカと同じ事言わないでよ!

「アスカ君も乗り気なのか、じゃあ良いではないか。何がいけないのだ?」

「いや、だって僕たちまだ未成年だし……!未成年の結婚は法律で禁じられてるでしょ?」

「ああ、そのことか。安心しろ。明日までには民法を改正して14歳で結婚できるようにしてやろう

「父さん!?」

「なんだ、さっきから大きい声ばかりだして」

「法律の問題じゃないよ!一般的に、早すぎるって……」

「そんな事はない。現に私とユイだって、お前ができたときは13歳だった」

「は?ちょ、ちょっとそんな……ありえないよ!今でも民法は18歳まで結婚はできないって……」

「いや、それがありえたのだ。その頃は私もここまで影響力がなかったから、せいぜいユイと私の社会的年齢を8歳ほどあげるのが精いっぱいだったが……」

「ちょ、ちょっとまって、じゃぁ父さんって今……27歳なの?」

「28だ。お前ができてから生まれるまで210日たつだろう?」

「……」

シンジはあきれてか、何も言えなくなった。

そして、相談相手としての条件を本当に完全に満たしている父を、恨めしく思った。

「全て、私に任せておけ、お前はなんら心配する必要もない。ああ、こうしてはおられん。早くみなにしらせてまわらんと……」

言うなりゲンドウは机の上の受話器をとり、ボタンを一回押して

「みなに!?ちょっと!!」

シンジが止めようと声をかける、が、

「おお、冬月。聞いてくれ、孫ができるんだ……そうだ。シンジとアスカ君の……民法?ああ、そこでせねばならんことが……、その通り、よろしく頼む」

そういって、ゲンドウは電話を切って、別の相手に掛ける。

「ねぇ、父さんってば!」

「うん?」

「そんな、電話なんかしないで……」

「ああ、これは政界各者に民法を改正するよう要請のための電話だ。お前達の結婚の知らせは、もうすぐ冬月がネルフ全体に放送する」

「!?ネルフ全体?」

あわてて、シンジは外へ飛び出して、放送室へと向かおうとしたその時、

ぴんぽんぱんぽ〜ん

とのチャイムが鳴って、

『緊急事態宣言、S−A5だ!』

と冬月の声がする。と、共に、おおおおおおお、というどよめきが聞こえてきた。

(S−A5って何だ?)

シンジの知らないコードだ。シンジは慌てて司令室に戻る。

司令室の中では、ゲンドウが電話機に向かって、

「ああ、よろしく頼む」

と言ったところだった。

そして、おお慌てで部屋に戻ってきたシンジを見て、

「どうした、シンジ」

「どうしたもこうしたも……緊急事態宣言S−A5だって」

「おお、もう放送したか、流石冬月だ」

その台詞でぴん、と来たシンジ。

「父さん……まさかS−A5って……」

「ん?そうか、お前は知らなかったな。S−A5というのは、『シンジ君とアスカちゃん、できちゃったから結婚しまーす』のコードだ」

嬉しそうに答えるゲンドウ。対照的にシンジは頭を抱える。

(なんだよそのコード……そんなコードいつのまにつくったんだよ……)

そんなシンジに目もくれず、ゲンドウは再び受話器を手にして、

「私だ。式場の手配を……」

(もう、勝手にしてくれ)

シンジは憔悴仕切った顔で、司令室を出て、家へと戻っていった。


所代わってミサトのマンション

アスカは夕食を準備しながら、シンジが帰ってくるのを待っていた。

おかずはハンバーグ、と朝に比べて控えめだ。というのも、朝言った事が杞憂に終わったからである。

(いや、三ヶ月も来なかったらそう思うわよね〜、けど今日のお昼に来ちゃったもの)

(せいぜいお淑やかにして、シンジに責任とらせようと思ってたんだけどな〜)

(けど、今日一日位、お淑やかに過ごしてあげようかな、罪滅ぼしにも)

そして、シンジが帰ってきた。玄関でアスカは丁寧に三つ指ついて

「おかえりなさいませ」

と出迎える。

シンジはふう、と一息ついて

「ただいま」

と声をかける。

アスカは、シンジがなんとなく元気が無いのを見て、

(今朝のが答えてるのかな……まぁ結構無茶苦茶いったもんね。)

と、思い。

「一つ、ご報告する事があるんですけど」

と声をかける。

「ん、何?」

「あの、その、今朝の事なんですけど……子供、できてなかったみたい」

「へ?」

「いや、その……なんというか……ゴメンナサイ!」

そういって、アスカは頭を下げた。

シンジは顔を引き攣らせて、

「う、うそ……、ちょっと待ってよ……事態は余計に混乱するじゃないか……」

と、つぶやく。無理もない。

その時、リビングの電話がプルルルル、となる。

「あ、わたし取ってくるから」

と、アスカはリビングへと走っていった。

アスカの言葉づかいが元に戻ったのを聞いて、シンジは少し安心すると同時に、

(事態はしゃれにならない方向に向かってきてる、よなぁ)

と頭を抱えるのだった。


アスカは受話器をとり

「ハイ、葛城です」

『あ、アスカ?』

電話の主は洞木ヒカリだった。ヒカリの声は心なしか慌てている。

「どうしたの?ヒカリ」

『どうしたもこうしたも……アスカ、碇君と結婚するんだって?』

「へ?」

『今、連絡網で回ってきたわ。それも……できちゃった婚なんだって?』

「えーっ!?」

アスカはそう言ったきり、凍り付いた。

(な、なんでそうなるの?……まさかシンジ、誰かに言ったわけ?)

そう考えて、アスカは自分が今日いろいろな人に言ってきた事を思い出す。

(えっと、学校のみんなにちゃんと「ネルフの隠し芸大会のお芝居の練習」って言ったし、ネルフの連中には「学芸会の練習」って言って回ったはずだしなぁ……シンジの言う事を信じちゃ駄目とも言ってきたわよね……じゃぁ、どこから?)

「そ、それはお芝居の話じゃなくて?」

アスカはヒカリに確認を入れる。

『何言ってるのよ!私の所だけじゃなくて、お姉ちゃんのとことか、ノゾミのとこにも似たような連絡網が入ってるのよ?』

「え、え?えーっ!?」

(なんでそんなスケールのでかい話になるのよ!……第一、日本の法律では14歳じゃ結婚できる筈ないじゃない!)

そう思って、アスカは、

「何馬鹿いってんのよ。大体日本の法律じゃ、18歳まで結婚できるはずないでしょ?」

『私もそう思ってたんだけど……、さっきニュースで、今日の国会で民法改正して14歳から結婚できるようになったって言ってたし……』

「う、嘘?」

アスカは叫ぶと同時に受話器を落とした。

『もしもし、アスカ?』

と、受話器からヒカリの声が聞こえている、が、アスカの耳には入らなかった。

(な、なんでそんなことになってるの?)

その時、シンジもリビングへとやってきた。

するとリビングでへたり込んでいるアスカの姿が。

シンジは慌てて声を掛ける。

「あ、アスカ?どうしたの?まさか?」

その声ではっと我に帰って、アスカは

(『まさか』……ってことはシンジには心当たりがあるのね)

アスカは、受話器に向かって「その話は又後で!」と断って電話を切る。

が、すぐに再び電話が鳴り出す。

(まず、シンジと話するのが先!)

と、アスカは電話線を引っこ抜いた。

そして、シンジに向き直って、

「シンジ……さっき『まさか』って言ってたわよね……まさか、なんなの?」

と、少し感情のこもってない――というよりも感情を殺してる――声で訊ねた。

シンジは顔を引き攣らせて

「まさかって……まぁ、その、なんていうか……」

「誰かにしゃべったのね?」

イキナリ図星を突かれて、シンジは思わず

「う、うん」

と、うなずく。

(やっぱりか……でも、だれに?思い付く限りの人間に、ちゃんといろいろ言い含めたのに……、それに気になるのは国会で民法が変わった事よね……)

「で、誰に……」

そこまで来て、アスカは自分が言い含め忘れて、そのくらいの事ができてもおかしくない人物を思い出した。

(まさか……)

「シンジ、まさかアンタ……」

「うん、と、父さんに……」

アスカは頭を抱えた。

「どーして……」

「仕方なかったんだ。その、子供とか、結婚とか、よくわからなくて、誰かに相談しようとおもって、それで……」

「碇司令にしたの……」

「う、うん」

「それで?」

シンジは聞かれるまま、今日司令室で起きたことを全てアスカに話した。


「……なるほど」

「なるほどって……どうしよう?」

「どうもこうも……何ができるっていうのよ?」

その時、シンジの携帯が鳴った。

「もしもし?」

『シンジか、今どこだ?』

電話の主はゲンドウだった。

「家にいるけど……なんで?」

『そこにアスカ君はいるかな?』

「うん」

『ちょっと代わってくれ』

「うん……アスカ、父さんが代われって」

「はい、アスカですけど」

『おお、アスカ君か』

「ええ、御用件は何でしょう……」

そこで、アスカは少し間を開けて、こう言った。

「……お義父様」

「『!』」

その言葉は碇達二人を止めた。

先に動き出したのは年配者だった。

『アスカ君……いや、アスカ、もう一度、言ってくれないか』

「はい、お義父様

『おお……』

そこでゲンドウの言葉が途切れる。きっと電話口で泣いているのだろう。

もう一人の碇が動き出したのはその時だった。

「アスカ、お義父様って……」

が、

「シンジは黙って!で、御用件は?」

『おお、すまなかった。実は、式場とドレスのことなんだが……』

「それでしたら……」

この二人の会話は、一時間くらい続いた。


『じゃあな、よろしく頼むよ』

「はい、ではおやすみなさい」

アスカは電話を切る。

途端に、シンジが声を掛ける。

「アスカ!どうしたんだよ、一体!」

「どうしたもこうしたも、とりあえずああするのが一番でしょう?」

「ああするって……ウェディングドレスの話とかしてたじゃないか!」

「そうよ。それが?」

「それがって……その……、いいの?」

あまりはっきりと言うアスカに、シンジはさっきまでの強さがなくなった。

アスカも、急にほほを赤くそめて、

「だって……しょうがないじゃない、それに……」

「それに?」

「どのみちわたし、シンジのお嫁さんになるつもりだったもん。ちょっと早くなっただけよ」

「アスカ……」

「シンジ……」

どちらからともなく、体がふれあって、顔と顔とが近づいて、唇と唇がふれあう。

やがて、どちらからか、その唇が少し開いて、tongueとtongueがふれあって……、

「愛してるよ、アスカ」

「わたしも……シンジ」


「ねぇ、アスカ」

一連の、Lovers' kissを終えてシンジはアスカに声をかけた。

「何?シンジ」

「本当にこんなことで子供できるの?」

「は?」

「いや、だって、アスカ三ヶ月前って……」

「アンタ馬鹿ぁ?キス位で子供できるわけないでしょ?わたしが言ったのはキスの後の……一緒に寝たときのことよ」

「……それ、一ヶ月前だけど……」

「へ?」

言われてアスカは回想する。

(えっと……確か……わたしが、『あの時に見損なった映画の続きを見たい』って言って、前と似たような展開になって、今度は最後まで……前と似たような?映画の続き?……あ!)

そう、三ヶ月前はkissで終わっているのだ。

そして、行為にまでいたったのは一ヶ月前だった。

ただ、どちらも同じ映画、kissから始まっていたので、少し記憶が混乱してたのだ。

いたったのが一ヶ月前で、それからずっとなくて、今日来たのだから、

「……なるほど、じゃぁ計算も合うわ」

「計算って?」

「うん?ああ、こっちのことこっちのこと。それよりもさ、ドレスなんだけど……」

お・わ・り


ご意見・感想・誤字情報などは masayuki.h@worldnet.att.net まで。

<後書き>

ははは、やってしまいました。変な話、名づけて「コ・ド・モ」

いやぁ、初めて最初の部分見て、一番最初に思い付いたのが「アスカ妊娠」だったもので(爆)

そっからは……ゲンドウが出てきたあたりで何もかもが自分の中で何もかもが崩壊したような気が(^^;

まぁ……特に指摘(多そう)、または感想(……あります?)お待ち申し上げまする。


 yukiさんの【オクトパすトーリー】作品、
 『コ・ド・モ 〜 baby 〜』、公開です。
 

 シンジ君は
 やることやっているんですね(^^;
 

 14歳で出来ちゃった婚・・・

 慌てんぼアスカちゃん、
 知識不足気味のシンジくん(^^;
 そして、
 親バカ爆発のゲンドウ(^^;;;;

 3人の暴走が日本の法までもを変えてしまいました・・
 

 ここまで行ったら後戻りは出来ないですよね(^^)

 全てアスカちゃんの無意識の計算が働いていたのかも・・

 

 
 さあ、訪問者の皆さん。
 yukiさんに関そうと指摘(^^;を送りましょう!


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